厄介な年下幼馴染が倍増しました。

三日月

文字の大きさ
上 下
7 / 13

日暮れの田舎道

しおりを挟む
実家の最寄り駅に降りた譲は、夕陽に照らされた道を黙々と目的地に向かって歩き始めた。
自分の周りをクルクル回りながら、『実家に帰んの?』『ユズちゃん、寝癖ついたまんまだぜ?』と話しかけられても無視。
(どこもかしこも知り合いだらけの町で、見えない相手と話してるとこ見られたら一生噂されるっ)

実家の前を通り過ぎても歩き続ける譲に、ソレは何か思い当たったらしい。
なるほどと呟き、自力で進むのをやめて譲の頭上で寝転び肘をわざとつむじに引っ掛けるように置いた。


『はいはい、オレん家に行くわけね?
一線超える前に親への挨拶ってか?
ユズちゃんが寝てる間に、スマホでバンバンネット検索かけて知識つけたから今夜は任せとけっ
ユズちゃんの履歴も重点的にチェックしたから、男の潮吹き体験もバッチリだぜっ』
「それ以上、口を開くなっ
勝手にギガも使うなっ」
『大丈夫、大丈夫。
低速にはなって無いから』
「そういう問題じゃ無いっ」


恐ろしい内容を流石に無視出来ず、譲が足を止めて頭の上のソレを掴もうと手を伸ばしたがやはり空を切る。
逆に背後から尻を揉まれ、譲はありったけの声で怒鳴ろうとしたが。
サーッと自転車に乗った人が追い抜きざま、空中に向かって両手を回す譲に険しい目を向けてきたのでなんとか堪えた。
通り過ぎたのか誰かわかり、譲の顔が曇る。


『ユズちゃん、あれ、魚屋のみっちゃんだぜ。
あの人、ちょーおしゃべりだからヤバいかもよ』
「お前、なんでそんなことも知ってるんだ」
『何言ってんの、ユズちゃん。
ここらで有名じゃん。
世話好き噂好きのみっちゃん、永遠の二十歳とかウケるよなぁ』


ヘラッと笑うソレに、譲の眉間にシワが寄る。
当てずっぽうでみっちゃんの鉄板、永遠の二十歳フレーズまで言えっこない。
ゾッとしたが、やはり無理してでも帰ってきてよかったと気持ちを切り替える。
一刻も早く、アイツに相談しようっ

突然走り出した譲の後を追うソレ。
途中で並走し、((息切れしちゃってカワイイなぁ))と思う存分その横顔を眺めて楽しんでいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

英雄の帰還。その後に

亜桜黄身
BL
声はどこか聞き覚えがあった。記憶にあるのは今よりもっと少年らしい若々しさの残る声だったはずだが。 低くなった声がもう一度俺の名を呼ぶ。 「久し振りだ、ヨハネス。綺麗になったな」 5年振りに再会した従兄弟である男は、そう言って俺を抱き締めた。 ── 相手が大切だから自分抜きで幸せになってほしい受けと受けの居ない世界では生きていけない攻めの受けが攻めから逃げようとする話。 押しが強めで人の心をあまり理解しないタイプの攻めと攻めより精神的に大人なせいでわがままが言えなくなった美人受け。 舞台はファンタジーですが魔王を倒した後の話なので剣や魔法は出てきません。

好きな人に迷惑をかけないために、店で初体験を終えた

和泉奏
BL
これで、きっと全部うまくいくはずなんだ。そうだろ?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

つまりは相思相愛

nano ひにゃ
BL
ご主人様にイかないように命令された僕はおもちゃの刺激にただ耐えるばかり。 限界まで耐えさせられた後、抱かれるのだが、それもまたしつこく、僕はもう僕でいられない。 とことん甘やかしたいご主人様は目的達成のために僕を追い詰めるだけの短い話です。 最初からR表現です、ご注意ください。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...