厄介な年下幼馴染が倍増しました。

三日月

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黄昏の寺 1

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一際目立つ門をくぐりながら、譲はスマホを取り出し呼び出しをかける。
背後からソレに行動を見られているのを感じるが、特に何も言ってこない。
相手にすぐに繋がったので、譲は用件を話そうと口を開いたが遮られた。


「忙しいのに掛けてくんなっ」
「忙しいのはもうわかったからいい。
今、寺に入ったから家の方に回る」
「は?
何言って」


ブチッと切り、通い慣れた憲一の家へ回った。
寺と隣接しているそこは、景観に配慮して歴史ある寺に似せた作りになっているものの中身はリフォーム済みの一般住宅。
家に誰かいるときは鍵を掛けないようにしているため、玄関扉は簡単に開いた。
同時に訪問を知らせる森のくまさんのメロディが流れる。


「美恵子さーん、こんばんは~」
「あらあら、譲君帰ってきたの?
春も夏も帰って来ないって、真美ちゃんが残念がってたから良かったわ」


おっとり口調で憲一の母親、美恵子が廊下の奥の暖簾をくぐり譲に気が付くと笑顔で出迎えた。
実家に寄ることまで考えていなかった譲は、自分の母親、真美の愚痴を笑って誤魔化し憲一と約束があると伝える。
「まぁ、そうなの」と美恵子がおっ取り返している内に、譲の背中にゴツンと衝撃が走った。


「お前、こんなときまでっ」
「こんなときは、こっちのセリフだっ
盆の坊主の忙しさ、舐めんじゃねぇぞ」


アレの仕業かと目を釣り上げた譲は、続けて頭を叩かれ小気味よい音が鳴った。
背後にいたのは、法衣姿の憲一。
走ってきたらしく、息は乱れ、脇腹を抑えている。


「あら、パパは?」
「親父は後から」
「はい、はーい。
あ、譲君もご飯食べる?」


美恵子さんの質問に譲の腹が鳴った。
朝から何も食べずにここに来ていたことを、身体が思い出したらしい。
腹を擦る譲に、「用意するわね」と美恵子は応えて暖簾の向こうに戻っていった。


「で、なんなんだよ?」
「あー、何から話したら良いか⋯変なものに憑かれたらしくって視て欲しいんだよ」
「はぁ?
俺に霊感があるとか何情報だよ」
「え、でも、ここの寺に曰く付きの人形とか結構な数あったよな?
あと、ソレが憲次そっくりなんだよ。
近所の寺じゃどうにも何なくて、なんか話してるとこの町のことも詳しいからさ。
お前ならなんとかしてくれるんじゃないかって」


手を合わせる譲に、憲一は頭をかく。
真剣に悩む幼馴染を前に、冗談じゃないことは伝わってくるしなんとかしてやりたい。
してやりたいが、してやれる技量が自分にはあるとも思えない。
取り敢えず、憲一は譲を中心に周りを見てみるが何も見えないしそれらしい気配も感じなかった。


「なんなんだ、そりゃ。
話すとか出来んの?
今もここに居たり?」
「あぁ、俺の側から離れないから、近くに」


譲は、話を聞こうとしてくれる悪友に安堵すると玄関から顔だけ出して見回した。
が、居ない。
鬱陶しいほどまとわりついていたアレの姿が見当たらない。
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