【R18】『千代子と司 ~スパダリヤクザは幼馴染みの甘い優しさに恋い焦がれる~』

緑野かえる

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単話『これからも、ずっと』

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 夜の内に松戸から私用のスマートフォンへ送られてきた内容を出勤の為の車内で確認していた司。その充実さと言うか……松戸は千代子と会ったのは数える程しかないが彼女の好きそうな物をよく分かっていた。それとは別に大人同士のクリスマスなら、とハイクラスのレストランも押さえてある。

 二人にとって特別な日、それをしっかりと想定していた。

 そう言ったところがちゃんと分かるのも本家今川組の舎弟だったからこその部分もあるが、傍目からは遊んでいるように見えても日々積み重ねられている社会経験の良い部分も悪い部分も全て吸収する松戸の性質が見える。

 そしてそれを松戸なりに解釈出来るまでフォローするのが芝山。
 常に全体を見ている芝山の才能もとても高い。


 出社をすれば今日の大まかなスケジュールに付け加えて芝山が日程調整の最終案をそっと出してくれる。

「若、無理があるようでしたら言って下さい」
「ああ、いつも有難う」

 松戸も自分の執務室で朝のミーティングをしている最中でまだ司の方の部屋には顔を出していなかったがこの二人がいてくれた、いてくれるお陰で今の自分があると司は改めて思う。
 会議もあればデスク業務も勿論……その間に挟まれる取引先との付き合い。横の繋がりがむやみやたらに広がりすぎないようにコントロールしてくれていたのも芝山だった。

「芝山、暮れや年明けくらいはゆっくりして欲しいんだが」
「ええ。それは……たまには家で松とサシで飲もうかと」
「そうか」

 それなら二人に、と司は二人が好んでいる酒の種類も把握しているので差し入れを、と考える。
 近づく年の瀬、何か取りこぼしてしまわないようにと思う程に予定が立て込んでいたがフォローされる事の多い立場に甘んじてしまわないよう私用のスマートフォンの方に千代子の両親への手土産と一筆、そして松戸と芝山への差し入れの購入予定を打ちこむ。

「若、千代子さんはお元気ですか」

 芝山の伺いに司は頷く。

「ただ、そうだな……そろそろ“筋を通さなくてはならない事”が見えて来た、とでも言おうか」

 司の言葉の意味をすぐに理解した芝山は少し言葉を選ぶように間を置いてから「お二人ならばきっと乗り越えられますよ」と言い切ってくれる。
 生い立ちと現在、そして未来の事……司には陽のあたる道を歩んでほしいとの願いがどうか実るようにと、司の義父からも「頼んだぞ」と託されていた芝山。

 幼馴染である小倉千代子と言う大切な一人の女性の為に奔走する今川司と言う一人の男の姿。考え方の鋭さなどから冷淡な男、と称される事も少なくなかったが本当はとても熱く、情のある人物だった。

 だから大丈夫、きっと大丈夫ですよ、と芝山は思う。

 芯の通った強い男の姿に男だって惚れる。
 それに値するのが今川司だった。

「さて、仕事を片付けなければな」
「はい」

 ・・・

 千代子にクリスマスマーケットに行ける日の候補を幾つか出した司は夜、天気予報を見ながら二人でどの日にするかを決める。
 そんな何気ない時間もとても楽しかったが二人で夜のデートなど、まだ想像の範囲ではあったが楽しいに決まっていると司は確信する。

「結構混んでるみたいなんですけどたまにはそう言うのも良いかなって」
「そうだね。私も初めて行くけどちよちゃんも?」
「ええ……駅ナカとかの小さい感じのなら寄った事あるんですけど公園とか大規模なところは初めてです」

 夜のデート、そしてディナー。

「食事する場所は私が決めても良い?」
「え、あ……はい、お任せします」

 司が選んでくれるならどこでも、な千代子ではあったが流石にいつもより気合をいれたお洒落はした方が良さそう、と思う。人混みを歩くからヒールは……前に靴擦れを起こしてそのあと司にケアして貰ってそのまま足を掴まれて、の記憶が呼び起されてしまい履きなれた方にしよう、とパンプスだけはもう先に決めてしまう。

「ちよちゃん?」
「ひゃ、っはい!!」

 どうしたの?と言う司にいつぞやの夜の事を思い出してしまっていたなど言える筈も無く。
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