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本編 (2024 11/13、改稿しました)
4.幸せなこと
しおりを挟む自分の小さなアパートに戻ってからもすっかり眠りこけてしまっていた千代子。
司が呼んでくれたタクシーに詰め込められアパートまで戻って来て、そのまま自分の部屋のベッドに寝転がって……少し早めの朝を迎えたもののまだ頭がはっきりとしない。
飲ませてしまったのは私だから、とただただ謝るばかりの司と自分も知らず知らずにアルコールの許容量を超えていた事を謝って。何が何だか分からないまま、ぐちゃぐちゃとして別れてしまった記憶だけが残っていた。
「ごはん……」
司は冷蔵庫にしまってくれただろうか。
千代子は持って行った炊いた米が出しっぱなしになっていないか、思い返す。司の事なのでちゃんと冷蔵庫にしまったに違いない。今日の千代子は休みの日だったのでのろのろとベッドから起きるとシャワーを浴びようと洗面所に向かい、昨晩のままだったワンピースを脱ぐ。
(あのときの司さん……)
どこか焦っていたような、まあそれは当たり前か、と千代子は何があったのかよく分からないまま頭から熱いシャワーを被ってもやもやと残っている体のだるさを洗い流す。
それでもなんとなく引きずっていたお酒の余韻にしばらく髪を拭きながらぼーっとしていれば時間は昼に近づいて行く。
このまま朝食と昼食を兼ねて、と考えていれば昨日、仕事用に使っているメモ帳に司が食べたいと言っていたパンケーキミックスの粉を用意するよう記入しておいたのを千代子は思い出し、いつも使っているトートバッグを引き寄せる。
司は今、どうしているだろう。
自分が想像していたよりも大きな会社の経営者だと言うのは分かったが、どんな事をしているんだろうか。未だ醒めぬ頭の千代子はそれでも早く炊飯器が届くと良いな、そうすればもっと料理のレパートリーも増えるし、などと考えていた。
一方、定刻通りに出社をしてきた当の司の機嫌は良くなかった。
そんな機微を感じ取る芝山。昨日は早めに仕事を切り上げてマンションに帰り、きっと彼が今、珍しく熱を入れている幼馴染とゆっくりしていた筈だった。松戸の「喧嘩でもしたンすか?」のいつも通りの気軽な問いは司の目を怖くさせるが松戸は司が本気で怒っている訳ではないのは分かっているので何も気にしていない。
喧嘩どころではなかった。
ついに手を、出してしまった。
千代子は気が付いていなかった、そうであったと願いたい。
ちゅ、と吸われるように食まれた中指の僅かな先の感触。シャンプー直後の湿気た甘い花の匂いも、ふにゃっと笑った表情も、今でもまざまざと思い出せる。
千代子の体は温かくて、柔らかくて、小さくて……少しでも乱暴に扱ったら壊れてしまいそうだった。
「兄貴、その目でヒトゴロシ出来そうッスよ」
今はもうそう言う時代ではないけれど。
「法が許す範囲での社会的な死なら幾らでもくれてやる」
「こっわ……で?ご依頼の幼馴染ちゃんの元の職場についてなんですけど、どうします?興味無くしちゃったなら保留にしときますけど」
松戸の人材派遣会社へ登録させた事によって前職の調べは容易についた。
一応形式上、と入力させた職務経歴に記載されていた会社名。松戸の「ホント世の中“悪い奴”ばっかり」と真面目なのか不真面目なのか、何気ないその言葉がまるで自分を指しているようで溜め息を吐く司に「若、今日も昼に上がられては」と様子を見かねた芝山は進言する。
昨日は嬉しそうに帰って行ったのに、この落差。
何かしらの事はあったのだろうが司が語ろうとしない限りはどうしようもなく。下世話な話を松戸に任せた芝山は今日の予定はずらせる物だと司に伝える。
「そうやって若の表情を良い方にも悪い方にも変えてくれる女性なら、俺は安心ですよ」
芝山の言葉に驚いた様子で司は下げていた顔を上げる。
司の整った顔も表情がなければ意思のない人形のようだった。すらりとした立ち姿に己の内側を見せない冷めた顔は何を考えているか分からない雰囲気を常に発している。そのお陰なのか、他の組織の者たちも彼に下手な真似をする者は少なく、司の機嫌を損ねれば“一応”合法的な粛清が待っているだけなのも周知されていた。
司は一人、社会の表と裏の境界を歩いていた。しかし、自分や松戸くらいにしか見せない笑顔を向ける事が出来る、感情のままに喜怒哀楽をさらけ出せる小倉千代子と言う女性の存在はきっと彼にとって良い方向に歩みを向かわせる事が出来るのではないだろうか。年長者として、部下として、芝山は考える。
彼の義理の父である本家今川組組長が座を手放し、司がそれを継ぎ――組織を解体し、若くして隠遁生活を送ろうと粛々と日々を消化するだけの毎日を送っていた司。偶然とは言え、幼馴染に近い親しみやすさを持ち合わせた昔の司を知る女性と出会えたのは確かな好機だった。
最近の司はこの場でケータリングを頼む事も、仕事としての会食以外で外食をする事も無く真っ直ぐ家に帰り、彼女が作り置いた手料理を毎晩、堪能しているそうだ。そのどれもが美味しいのだと言う。
ベタ惚れ、とはこの事を言うのだろうな、と芝山はさりげなく司の手元にあった書類を片付けて預かってしまった。
「若、御嬢さんはお元気で?」
「ああ……仕事にも慣れて来た。埃一つ無いよ」
それなら良かった、と芝山は安心する。
このまま縁を結んでくれて構わないが司にそう言った気はあるのだろうか。今はまだ、再会の喜びに浸っていてもいつまでも年頃の女性を一方的に拘束しておけるわけがなかった。
・・・
身支度をし、散歩がてら司に頼まれていたパンケーキミックスの粉を買いに……最近、週三回は必ず行き来する整備されたばかりの歩道を千代子は次なるスーパーに向かうべく歩いている。行先はいつもの自分が使っている方のお得なスーパー。先にパンケーキの粉と、ちょっとだけ自分へのご褒美にカットフルーツが詰められたパックを高級志向のスーパーで購入し、いつものトートバッグを肩に提げ、手には保冷バッグを持って戻って来た所だった。
ちょうど通っている司の住んでいる高層マンションの前に差し掛かる。
「あっ」
ちょっとそこまでお買い物、のスタイルで歩いていた千代子の少し先で黒塗りから降車する司がいた。どうやら千代子に気付いていなかったのか司はドライバーからビジネスバッグを受け取るとマンションのエントランスに向かって歩き出してしまった。
「司さんっ」
千代子にしては珍しい大きめな声。
すぐに気が付いた司の肩が揺れたようだったが小走りで近寄る千代子は「昨日は本当にごめんなさい」と謝る。すっかりアルコールが抜けた千代子とは違って、司の顔色は悪かった。朝からずっと、千代子の事を考えていた司の瞳が彼女の立ち振る舞いを見て昨晩、自分がしてしまった事について本当に気が付いていないと知る。
それどころか、申し訳なさそうにアルコールに弱くなっている自分の体調の変化に気が付けなかった事を改めて詫びている。
互いに謝罪の堂々巡りになりつつも司はつい、千代子に問いかけてしまった。
「ちよちゃん、お買い物?」
「はい。あ、司さんお昼ご飯は……」
「まだ、だけど」
つい素直に答えてしまった司は失敗した、と思ってしまう。優しい千代子の「昨日のごはん、ありますか?」と聞いてくる声はどこか心配そうな、様子を伺う少し下からの見上げるような視線に目が反らせない。
「もしよかったら、お昼の支度を」
終わったらすぐに帰りますから、と言う千代子を強く拒めなかった。
また明日、彼女は仕事として来ると言うのに。
昨夜の炊かれた米の心配と……丸い瞳で探るように見つめられてしまっては司も折れるしかなかった。
キッチンを千代子に任せ、部屋に帰って来た司は「ちょっと浴びてくるね」とバスルームに行ってしまった。残された千代子はやっぱり体調が悪いんだ、と見上げた時に感じ取った司の顔色と気配にメニューを考える。今や勝手知ったる冷蔵庫を開けて昨日、自分が炊いて持ってきたご飯が詰まった保存容器を取り出して片手鍋を用意する。
特に要望は無いようだったがシャワーを浴びて軽く食事を摂ったら少し横になるかな、と消化に優しい粥を作り始めた。
どこに何が入っているか、野菜室にはどんな野菜が残っているか。この部屋の主である司よりも把握している千代子。使いかけのそれらを出し、丁寧に細かく刻んで行く。これなら硬い根菜もすぐに柔らかく、胃腸への負担も少なく水分も摂れて一石二鳥だった。
どうしようもなく疲れた日のこの野菜粥が美味しいのは千代子もよく知っている。何も作る気が起きなくても無心になって野菜を刻み、いつもより控えめな調味料で味付けをすればほんのりと野菜の甘みが感じられる優しい味の粥。きっと司も気に入ってくれるに違いない、と今までこの野菜粥を誰かの為に作ったことはなかった千代子だったが司の為に丁寧に、丁寧にと手を動かす。
暫くすれば濡れた髪もろくに乾かさずに細身のシルエットの黒いスウェットで現れた司の姿にキッチンに立っていた千代子はまたしても目を丸くさせる。基本、すっきりとしたスーツ姿の司しか見た事が無かった。緩くてもワイシャツとスラックスで、確かにプライベートな下着や肌着などは司が自ら洗濯をしていたが千代子もそのスウェットなら畳んだ事がある。
パウダールームには千代子に洗っておいて欲しいカゴ、と言う物が設置されていたので仕事で訪れた際にその都度、洗濯乾燥機にかけていた。スーツやワイシャツはクリーニングだった為にタオル類や簡単に羽織れるローブが大半の中、確かにスウェットはあったが本人が着ているのを見るのは初めてだった。
濡れた髪も、オールバックではない完全に下りている髪も素敵だな、とそのまま少し見とれてしまった千代子は「水を出して貰っても」と遠慮がちに言う司にあわてて冷蔵庫を開ける。常に数本が冷やされているペットボトル内、口が開けてある物を取り出すと「そのままでいいよ」と言われたのでカウンター越しに手渡す。
「ちよちゃん、それは……」
「あ、はい。あの、野菜のお粥なんですけど……少し余っていた野菜があったので、それで」
よく気が付き、どんな食材も一つひとつ、大切にしている千代子に司は自然と「ありがとう」と言葉にしていた。
千代子自身はオフの日だと言うのに「仕事ですから」と遠慮しないで欲しい事を伝えてくれて。でもこれがもし、自分たちが恋人同士の関係だったら……千代子はどんな言葉を返してくれるのだろう。
司は考えてしまう。
そしてまた、深い後悔に苛まれる。
エスコートをするでもなく、酔って眠ってしまった女性の体に断わりも無く勝手に触れてしまった男の自分が情けなく思う。
(昨日は本当にどうかしていた。私もウワバミだと呼ばれもしているが酒に弱くなってきたのだろうか)
考えても、過ぎたること。
こんなに酷く後悔をするなら千代子に心の内を打ち明け、その上で彼女が拒否をするか、それとも受け入れてくれるのか、はっきりさせた方が良い。
うやむやなまま、自分勝手な熱だけが日を重ねるごとに滾り、むなしくなるばかりだった。
自分が、ヤクザの息子である事は承知している筈。
しかしながら今、そちら側でどのような立場であるかまでは知らない――伯父の築いた功績で組は武闘派などではなく穏健派であり、会社経営だけをしている事に間違いはないが千代子を危険に曝す可能性はそれでも高い。
今は出入りをしている家政婦としての面しかないが、それ以上の関係性を外部に知られでもして要らぬ争いに巻き込んでしまったら。
(それは、怖いことだ)
司は濡れている髪を少し拭いながら千代子の手元を見る。
「どれくらいにしましょう」
「七分目くらいかな」
「あ、髪はちゃんと乾かしてからですよ」
緩く頷いてまたパウダールームに戻り、言われた通りに髪を乾かす司は自分の顔色……と言うかなるべく平静を装っていた筈の表情がやはりいつもより良くない事に深い溜め息を吐く。
しっかりと髪を乾かしてダイニングテーブルの席についた司は千代子が用意してくれた出来立ての粥をそっと掬う。
真横にあるキッチンでは他の器にもう一食分の粥を移して冷ましながら鍋を洗い始める千代子の姿。下を向いて静かに作業をしている彼女の立ち姿にはやはり美しさすらあった。
洗い物をしながら少し顔を上げて「お夕飯の分も用意してありますから」との優しい声と視線が司に向けられる。
「あ、そっか……」
ふと、洗った鍋の水気を切って拭きはじめる千代子が何か思い出したかのように小さく呟く。視線が向けられたのはいつも作り置きの料理が詰められた保存容器を並べ置いてくれている冷蔵庫。
しかし今日の司の体調はあまり良くない。食欲も無いようで、昨日作ってしまったまだ手付かずの料理たちをどうすべきか司の目からも千代子が少し考えているように見えた。
「ちよちゃん、よかったら半分食べてくれる?」
普段から食材を無駄にしない千代子の考えを汲んでやるように司が声を掛けると「良いんですか?」と返って来る。中途半端に手を付けて、残りを全て処分してしまう事の方が千代子は悲しむに決まっている。
それなら最初から千代子の食事として渡してしまえばいい。
タイミングが良いのか悪いのか、今日の千代子は買い物帰りらしく保冷バッグを提げていた。
「それなら司さんの分は温めるだけになるようにお皿に盛りつけておきますね。また明日の分は消化の良い食べやすい物を……」
「ああ、ありがとう」
どこまでも、気が利く。
冷蔵庫からおかずの入った保存容器を取り出した千代子は「もし具合が悪かったらすぐに連絡してください。多分、司さんの会社の方々より私の方が家が近い筈なので」と……それは建前なのか、それとも彼女の本音なのか。
菜箸を手に棚から出した皿にセンス良く料理が盛りつけられて行く。これくらいなら食べられますか、と問う事も欠かさない千代子の優しい気遣いが司の口元をつい、緩ませてしまった。
「ちよちゃんと暮らせたら、な」
「えっ……?」
「あ、いや……今、私は」
自分は今、何を言った。
すぐに千代子の方を見れば目を丸くさせて絶句している。やってしまった、と途端に押し寄せる大きな後悔。
最近、どうかしているのだ。
本当に自分でも制御が出来ない。
衝動に任せて口走った事に責任が持てない。
「ご、めん……」
謝ることすら危ういなんて。
何か言いたくても言えないでいる千代子の口もとを直視できず、司はまだ残っている粥の器に視線を下げてしまう。
(こんなの、どうかしている)
千代子を前にした自分はいつものソトヅラの良い冷めた面を呆気なく剥され、心は熱くなって揺れ悶え、言動の選択をいくつも間違えていた。
「いえ……そう言ってもらえるなんて、嬉しいです」
恥ずかしそうに言う千代子の声が、温かなお粥のお陰なのかほんのりと血色が戻ってきている司の耳に届く。
「誰かに頼って貰えるのって、幸せなことですから」
彼女の持つ、優しい理念。
時にそれは自身の負担にもなってしまうが千代子は下を向いてしまった司の手元にある粥の器を見つめながら言葉を続ける。
「私、いつの間にか疲れてるのに夜も全然眠れなくなっていて、眠れないと本当に駄目ですね。朝までずっと自分の事を責めて、誰にも褒めて……認めて貰った事なんてなかったな、って無駄に考えちゃって。全部、嫌になっちゃって……もう全部投げ出してしまおうと思って、会社も辞めちゃって」
少し、涙の混じる声に司も顔を上げて千代子の方を向く。
「かなり自棄になってたかも、って冷静に考えられるようになった頃に司さんとまた会えて。司さんは子供の頃と全然変わってなくて、やさしくて。お仕事まで頂いてしまって、それで」
また、千代子の瞳からぼろぼろと大粒の涙がこぼれてしまう。
拭わず、流れるままの雫がなめらかな頬を伝う。
「おいしい、とか、ありがとう、とか……それだけでも、うれしくて、また頑張れるかな、って。それに最近はちゃんと、眠れるように……なったんです」
泣いているのに、千代子は眉尻を下げて恥ずかしそうにしている。涙が止まらないのに、その手は菜箸を手放していない。
きっとそれが今、彼女が持っている、持てるだけの強さ。本当はもっと強い意思を持った女性なのだと知っている司だからこそ、今の千代子の精一杯を感じ取る。
司は二人だけの、二脚しか椅子のないダイニングテーブルの席から立っていた。
そしてそのままキッチンに回り、堪えきれなくなって下を向いて泣いている千代子の体を引き寄せるように正面からそっと抱き締める。
いよいよ本格的に泣き出してしまう体が熱く、それなのに肩は震えていた。それを落ち着かせようと、どうかこの涙を最後にしてあげたい、と司は僅かにあった躊躇いを捨ててその背中に手を当てる。
「ちよちゃん……」
危ないから菜箸置いて、と取り上げれば今度は自分の着ていたスウェットが強く握り締められた。身長差のある千代子と司。彼の大きな手のひらは千代子が負った心の痛みを手当てするように優しく、涙が引くまでとんとん、と落ち着かせるように添えられていた。
・・・
暫く経てばぐずぐず、と聞こえてくる。
涙はとりあえずおさまったようだがティッシュボックスまでは司も手が届かない。
「顔、洗っておいで」
ん、と短く頷く頭が揺れる。
泣きはらしているだろうから、あまり見ないようにしてやった司は千代子をパウダールームに促し、戻って来るのを待つ。
(私たちは両想いだったと考えて良かったのだろうか)
ああ、また感情が先走って、と司は一人反省会をし始めてしまうが千代子はスウェットをすがるようにずっと掴んでいた。一回りサイズの違う手はずっと……。
「タオル、お借りします……」
わりと早くリビングに戻って来た千代子はいつも自らが洗濯をしているフェイスタオルを一枚携え、それで顔半分を覆うようにして……まだ若干、涙が止まっていなかったようだったが話が出来るくらいには落ち着いた様子。
ダイニングテーブルではなく、ソファーの方に座るように司が声を掛ければ千代子は素直に腰を下ろす。
「確認するけど、本当に……私と一緒に暮らしてくれる?大切な、色々な段階をかなりすっ飛ばしている気もするんだけど、ちよちゃんはそれでも大丈夫かな」
「だいじょうぶ……です」
ソファーの前、千代子に対して少し距離をおいて背の高い体を屈めた司は彼女からの許しを得る。嬉しさがこみ上げてくるが千代子は少し汗をかいているようでこのままだと風邪を引かせてしまう、と司は思う。明日も千代子は仕事としてこの部屋に来るだろうが……いや、もうこんな事態になってしまったからには必要ないのではないのか。色々な考えが司の頭を巡る。
一応、彼女の大元の雇用主である松戸にはなんと弁解したら良いのか、勤めさせたのはたったひと月だ。
他にも考えなくてはならない事や伝えなくてはならない事が山積みでも、彼女が自分を受け入れてくれるのならもう、今はそれだけで良いのかもしれない。
千代子の負っている傷や痛みを癒すのにはまだ時間が必要だった。
そして長い間離れ離れになっていた時間はもう埋める事がかなわなくても……これからゆっくり、時間を掛けて二人で考えながら過ごしていけばきっと。
「つかさ、さん」
「うん?」
「おかゆ……」
この子は全く、と司は笑ってしまいたくなるが流石に怒るだろうから言葉にはしない。
「ちよちゃんが顔を洗いに行ってる間に食べきったよ」
「それ、飲んじゃった……の、では」
確かに、よく噛みもせず飲み込んでしまったけれど。
「落ち着いた?」
タオルから覗く目元や頬は未だ赤い。
本当に体を冷やしてしまう、と今日の所はひと先ず千代子を自宅に帰……す前に、出しっぱなしになっている作りおきの料理を持って帰るように、千代子の好きなようにまとめさせる。
それに彼女はまだ昼ご飯をとっていない筈。
急かしはせずにとりあえず今日は家に戻って、と二人ともが急な展開を落ち着かせるようにおかずを詰め直したり、食器を片付けたり。
「こんな恰好だから下まで送ってあげられなくてごめんね」
「いえ、大丈夫です」
そして「また明日」と、互いに挨拶を交わす。
・・・
「で、その幼馴染ちゃんは兄貴の彼女になった、と。しかもいきなり同棲。超大胆なオトコ、流石俺たちの兄貴……」
「そうともなれば姐さんになるんだろうか」
翌日のオフィスには感慨深そうな松戸と芝山の声があった。
司も二人だけにはすぐに打ち明けた。
もしも千代子に何かあった時に頼れるのはこの二人以外に居なかったから。
「兄貴専属のカセーフさんのオシゴトどうします?もしウチの会社の範囲でやりたい仕事とかあれば登録そのままにしとけますけど。在宅系も今は色々あるし、家事をそのままお願いしちゃうなら細かくなっちゃってアレだけど前職が事務だから一件ごとの出来高制の……」
よく口の回る松戸からの提案を聞いている司は溜まっていた書類の処理などをいつものように淡々と進める。と言うか、いつもより手が早い。
二日、三日でこの変わりよう。
まだまだ若いな、と歳上の芝山は思う。
喜び勇んでマンションに帰って行ったと思えば翌日は機嫌が悪く、今日に至っては出勤の途中で一階のエントランスフロアにあるコーヒーショップに寄ったらしく、流行りの洒落たコーヒーの差し入れがあった。
芝山が本家部屋付きの筆頭になったばかりの頃まで時はさかのぼる。
司がまだ高校三年生に進級したばかり、今川一族の本家に養子として迎えられた時。本家組長である今川進と親子盃を交わしていた、本来ならば上級幹部の芝山。ただ彼は面倒見が良く、非常にプライベートな組長宅での丁稚たちや出入りが許された若い衆の管理と屋敷の警備関係を一任されていた。
それからずっと、芝山は親代わりにはなれずとも司を歳の離れた弟のように可愛がっていた。本家組長が彼を養子に取る前から大学に進学させる手筈を整えていたのも知っており、それも納得の申し分のない頭の良さも見てきている。
司自身は自分がどういった気性を持ち合わせているのか後になって気が付いたのだろうが芝山は生活を共にしながら見守っていた。穏やかそうに見えるが元からの気質に混じる危険を孕んだ野心の片鱗も当時からあったのを見ている。
否が応でも司に流れているのは今川の血の強い闘争本能。
今はそれを自分で厳しくコントロールしているようで滅多に残酷な顔は見せず、そして本人もそんな自らの荒い部分を酷く嫌っているのを芝山は知っていた。
普段は自制心が強い司の心を動かしてくれる小倉千代子と言う女性。本当にどんな人物なのか気になりはするのだが。
「若、めでたい時に申し訳ないんですが一件気になる事が」
よくしゃべる松戸の言葉は軽く聞き流していたが芝山の少し落とした声のトーンに反応した司は書類を確認していた手を止める。
「松、例の監視カメラの映像を」
「あーアレっすか」
ちょっと待ってください、と松戸は自らのスマートフォンの画面を司に見せるよう差し出す。そこには一本の動画。写っている場所は人目に付きにくいフロアの隅の一画、それを見た司も眉を潜める。
「このビル内、どこにも死角など無えってのに」
「全フロア、ビルそのものが兄貴の庭なのに“三浦さん”はセキュリティルームが一つだとでも思ってンすかね」
「それでこの監視カメラの映像、か」
「ええ、なーんか“俺的に色々”と気になって芝山さんと相談してあの日の映像を追ったら退室直後にどっかに必至こいて電話掛けてて。相手は分からないッスけど……三浦さんより立場が上ともなれば相手は限られてきますね」
もっとも、兄貴をだまし討ちしようなんざ百年早いけどね、と松戸は言う。
・・・
千代子の気持ちを確認できた日から十日ほど経った後の夜八時。司は帰宅するための送迎車内で千代子からのメッセージを確認していた。
司の自宅には使っていないゲストルームがあったので千代子のプライベートな部屋はそこにしよう、と言う話をあれから交わしていた。そして今日、注文しておいたベッドが松戸の所の部下たちの手によって持ち込まれ、組み立てられた。
ベッドは彼女の体のサイズではこれくらいだろうか、とセミダブルに留めておいたが本当は自分と同じクイーンサイズでも良かった位だ。一応、少しは司なりに冷静に考え、千代子は絶対に拒否するだろうと考え出された結果によって先手とばかりに硬さの好みを聞いて注文をしていた。案の定、千代子からのメッセージには『こんなに大きなベッド、私が使って良いんですか?』とある。
今、千代子は松戸の会社に登録をしたままで家政婦業は止めていた。
それは引っ越しの荷造りをさせる為だったのだが司の部屋の掃除と食事の用意は相変わらず、千代子の申し出により手が空いた時に行われていた
手放すと言った家具や家電は松戸の知り合いだと言う東南アジア方面への中古品の輸出を商っている古物商に買い取らせて生活資金に変えさせた。そもそも搬出作業は千代子一人では出来ないし、司が表立つ事も出来なかったので信頼と実績のある松戸の伝手で理由は伏せられたまま、千代子のアパートからの諸々の搬出は深夜に静かに行われていた。
「おかえりなさい」
玄関から近いゲストルーム。帰宅をした司とまだ帰らずに作業をしていたらしい千代子と交わす「ただいま」の気恥ずかしさ、瑞々しさ。
「司さんに言える筋合いではなかったです……私も本、読んじゃって……」
「どうする?このまま泊まって行く?」
司も恋人として気軽な冗談を言ったつもりが――どうしてこうなったのだろうか。
彼の前には風呂上りの千代子がいて、自分と同じ匂いを纏っている。それはそうだ。
千代子用のシャンプーやボディーソープはまだ無く、司の物を使うしかない。ベッドだって、そのものはあっても枕や掛布団はまだ揃っていない。
まさか千代子に余っている毛布一枚を渡してソファーに寝かすなど……そんな事なら自分がベッドを明け渡して毛布一枚を持ってソファーで寝る覚悟をしていた、のだが。
「司さん、一緒に寝ませんか?」
「え、ちよちゃん?ちょっと待って、私にも色々と心の準備が」
――ふ、と目が覚めた。
高速道路での渋滞で立ち往生してしまっていた帰りの車内。
気が緩んでいた隙に見たあまりにもリアルな夢。
疲れているのか、それとも自分が千代子に抱く純粋な愛情による欲が今の夢を見させたのか。
いつもより時間が掛かっての帰宅だった司は千代子の私物が少しだけ置かれているゲストルーム――千代子の私室となった場所を少しだけ覗いてしまう。これからここに彼女が住む。住んでくれる。
年齢も年齢ではあったが一般的な恋人たちの付き合いとは少し違う流れをとってしまった。手を繋ぐ事も、キスをすることも、その先もまだ何もしていない。
それにあの時の、彼女の唇に触れたことはカウントしたくなかった。千代子の同意なく、今なら軽いスキンシップくらいなら許してくれるかもしれないがあれは衝動を抑えられなかった自分が悪い、と司は顔を渋くさせる。
実際にメッセージにあった『こんなに大きな』との千代子のベッドだが、本当にそのサイズで良かったのだろうか。もうワンサイズ上げても、それを楽に収容できる部屋の広さ。何か在宅で仕事がしたいならデスクやビジネスチェアも用意できる。
部屋の入り口に立つ司は抱き締めた千代子の体の大きさを思い出していた。
何もかも一回り、小さいのだ。
それでも日本人女性の平均的な身長だと言う不思議。彼女より身長が二十センチ以上高いと言えど今まで会社経営者としての立場上、仕事の流れで出会った女性たちに感じた印象とはまるで違う千代子に抱くその小ささ。愛しさゆえに錯覚でもしているのだろうか。
(俗に言う食べてしまいたいくらい、の比喩……駄目だ。ちよちゃんのこととなると私は抑えがきかない)
千代子の部屋のドアを閉じ、廊下を抜けてリビングダイニングへ。さらにその奥の書斎兼寝室に入った司はスーツのジャケットをハンガーに掛け、ネクタイを引き抜いて首元のボタンを二つほど外す。
使ったハンカチなどを持って一度玄関近くのパウダールームに戻り、千代子に洗っておいて欲しい物を入れておくカゴに洗い物を置く。そして手を洗い、冷蔵庫があるキッチンカウンターの奥へ。
司の一連の流れはここ一カ月で確立された。
今日は千代子が来ていた日なので作り置いてくれている料理が楽しみな日でもある。今日はどんな物があるのか――千代子がこうして用意してくれているお陰で夕飯を抜く事が無くなった。
軽い晩酌だけで済ませて眠ってしまう日はもうない。何かの拍子に「普段はどんなお酒を飲むんですか?」と聞いてくれた千代子はメモを取って、次の来訪時には調べたらしく……それらに合いそうなつまみが一品、食事とは別に用意されていた。
千代子も工夫する事が苦ではないらしい。
無心になって調理し、それを食べて、自分の心の傷を癒して。それでもまだきっと彼女は癒えていない。だからこそその傷を、痛みを、自分に分けてくれたらいいのに、と司は思っていた。
「ん……?」
いつも二食分が詰められて並んでいる筈の容器が一つしか無い。代わりに皿があり、そのまま温められる軽い食事が用意されていた。
千代子はきっと明日も来てくれる。
(楽しみだな……)
ふ、と一人表情を柔らかくさせた司は早速その皿を手にすると千代子の優しさが詰まっている冷蔵庫の扉をそっと閉じた。
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メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
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楽しんでいただけたら嬉しく思います。
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