麗しのマリリン

松浦どれみ

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5月

5−1彼の日記4

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※※五月初旬、彼の日記より抜粋

 ゴールデンウィーク前半を終えて、登校する彼の足取りは軽かった。

 連休の中日など、休んでそのまま後半の連休と繋げてしまいたいものだが、彼にはとっては違った。

 それは連休前の席替えが影響している。

 遠くから耳を澄ませて彼女の声を聞き分け、彼は自分が持っていたくじを見つめた。

 そして、誰にも見られないよう机の下で小さく拳を握った。ここまでくじ運がよかったことには驚いた。

 先日から確実に彼女との距離が縮まってきている。

 ここまで何年も遠回りしてしまったことを考えると、入学後の急展開は彼自身予想外だった。

 しかし、ここで自惚れてはいけない、焦ってもいけない。

 ひとまず夏休みまで、じっくりと彼女との関係を育んでいくんだ。

 彼は珍しく口元を緩ませながら、学校に到着した。

 席を離れ友人たちと談笑している彼女を尻目に自分の席に着く。

 陽の光が、彼女の薄茶色の美しい髪の毛と瞳を、ほんのり赤らんだ頬を、白い肌を照らす。窓から流れる柔らかな風は、彼女の髪をふわりと揺らした。

 名指しで挨拶され、その姿が自分だけに向けられたと彼が自惚れるのも仕方がなかった。以前の彼女を知らないが、少なくとも入学してからは、教室で彼女のあんな笑顔は見たことがなかったから。

 席替えで彼女は彼の前の席に座ることになった。

 それ以来、彼は天気が良い日に、陽の光で輝く彼女の髪の毛を見つめるのが楽しみとなっていた。

 隣の席は彼女の友人で、おそらく彼の視線や感情に気づいているが気づかないふりをしてくれている。

 休み時間には彼女が振り返り本の話をしてくる。

 少しずつ、彼女との距離が縮んでいく感覚が、彼にとっては幸せだった。

 冷めきっていた自分の心が温まり、胸の鼓動を感じるたびに、その熱が全身に伝わっていく感覚。

 自分は生きていても良いのかと、前を向いて良いのかと、彼は自分の人生に希望を見出しかけている。

 彼にとって彼女は、真っ暗になってしまっていた心に宿った、たった一つの光だった。
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