麗しのマリリン

松浦どれみ

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5月

5−2班決め

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 五月某日。席替えから一週間ほど経ったある日。

 週に一度のロングホームルームは、竜崎がプリントを配ることから始まった。

「六月の頭に宿泊研修があります。保護者にはメールで日程などの案内をしますが、プリントも配布するので確認しておくように」

 さらに冊子を配る。表紙には「宿泊研修のしおり」と書かれており、中には詳細な日程やスケジュール、集合場所などが記載されているものだ。

「一泊二日、各クラス六つの班に分かれて過ごし、後日レポートを作成し提出してもらう」

 教室内が若干ざわつく。クラスメイトたちは班決めをどうするのかが気になったのだ。いつもは気にならなかったし興味がなかったが、今回はマリも班決めに興味津々で、目線を泳がせ周りの様子をうかがい、ソワソワとしているのが竜崎からはよく見えていた。

「はーい! 竜崎先生、班はどうやって決めるんですか?」

 ユージが元気良く声を張り、手を上げ質問する。クラスメイトたちも頷きながら彼を見つめいていた。

「ああ、もう決めてあるんだ。ちょうど六つだしな」

 竜崎がユージを見て、一瞬、苦笑いをしてから話を続ける。

「班は各列ごとにする。窓際の列を一班として、廊下側の列が六班な。夜の部屋割りは男女各三部屋に別れないといけないから、一班と二班、三班と四班、五班と六班が一緒ということにする」

 彼はがっくりと肩を落とす。

「ええ~! マリと違う班じゃん俺~」

 口を尖らせ、拗ねてみせる。クラスメイトたちはクスクス笑ったが、竜崎は言葉とは裏腹なユージの鋭い視線に、若干背筋が冷えた。

(こりゃ恨まれてんなあ、俺。ていうかアイツの運が悪すぎだろ)

 ユージの視線に気づかないフリをして、竜崎は生徒たちに呼びかける。

「これから班ごとに集まって班長を決めてからレポートのテーマなどを話し合うこと。質問があれば呼んでくれ」

 そして、教室の端にある椅子に腰掛け、窓際の列の後方に視線を向けた。

 視線の先には口元が緩みきっている新堂と、いつもよりわずかではあるが眉と肩が上がっているマリの姿があった。

(そんでもってそっちは一緒の班って……。席が前後とか何だよ、運命かよ!)

 心の中で悪態をつき、視線を手元の資料に移す。竜崎光貴、彼女いない歴は三年目に突入していた。
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