14 / 32
5月
5−2班決め
しおりを挟む
五月某日。席替えから一週間ほど経ったある日。
週に一度のロングホームルームは、竜崎がプリントを配ることから始まった。
「六月の頭に宿泊研修があります。保護者にはメールで日程などの案内をしますが、プリントも配布するので確認しておくように」
さらに冊子を配る。表紙には「宿泊研修のしおり」と書かれており、中には詳細な日程やスケジュール、集合場所などが記載されているものだ。
「一泊二日、各クラス六つの班に分かれて過ごし、後日レポートを作成し提出してもらう」
教室内が若干ざわつく。クラスメイトたちは班決めをどうするのかが気になったのだ。いつもは気にならなかったし興味がなかったが、今回はマリも班決めに興味津々で、目線を泳がせ周りの様子をうかがい、ソワソワとしているのが竜崎からはよく見えていた。
「はーい! 竜崎先生、班はどうやって決めるんですか?」
ユージが元気良く声を張り、手を上げ質問する。クラスメイトたちも頷きながら彼を見つめいていた。
「ああ、もう決めてあるんだ。ちょうど六つだしな」
竜崎がユージを見て、一瞬、苦笑いをしてから話を続ける。
「班は各列ごとにする。窓際の列を一班として、廊下側の列が六班な。夜の部屋割りは男女各三部屋に別れないといけないから、一班と二班、三班と四班、五班と六班が一緒ということにする」
彼はがっくりと肩を落とす。
「ええ~! マリと違う班じゃん俺~」
口を尖らせ、拗ねてみせる。クラスメイトたちはクスクス笑ったが、竜崎は言葉とは裏腹なユージの鋭い視線に、若干背筋が冷えた。
(こりゃ恨まれてんなあ、俺。ていうかアイツの運が悪すぎだろ)
ユージの視線に気づかないフリをして、竜崎は生徒たちに呼びかける。
「これから班ごとに集まって班長を決めてからレポートのテーマなどを話し合うこと。質問があれば呼んでくれ」
そして、教室の端にある椅子に腰掛け、窓際の列の後方に視線を向けた。
視線の先には口元が緩みきっている新堂と、いつもよりわずかではあるが眉と肩が上がっているマリの姿があった。
(そんでもってそっちは一緒の班って……。席が前後とか何だよ、運命かよ!)
心の中で悪態をつき、視線を手元の資料に移す。竜崎光貴、彼女いない歴は三年目に突入していた。
週に一度のロングホームルームは、竜崎がプリントを配ることから始まった。
「六月の頭に宿泊研修があります。保護者にはメールで日程などの案内をしますが、プリントも配布するので確認しておくように」
さらに冊子を配る。表紙には「宿泊研修のしおり」と書かれており、中には詳細な日程やスケジュール、集合場所などが記載されているものだ。
「一泊二日、各クラス六つの班に分かれて過ごし、後日レポートを作成し提出してもらう」
教室内が若干ざわつく。クラスメイトたちは班決めをどうするのかが気になったのだ。いつもは気にならなかったし興味がなかったが、今回はマリも班決めに興味津々で、目線を泳がせ周りの様子をうかがい、ソワソワとしているのが竜崎からはよく見えていた。
「はーい! 竜崎先生、班はどうやって決めるんですか?」
ユージが元気良く声を張り、手を上げ質問する。クラスメイトたちも頷きながら彼を見つめいていた。
「ああ、もう決めてあるんだ。ちょうど六つだしな」
竜崎がユージを見て、一瞬、苦笑いをしてから話を続ける。
「班は各列ごとにする。窓際の列を一班として、廊下側の列が六班な。夜の部屋割りは男女各三部屋に別れないといけないから、一班と二班、三班と四班、五班と六班が一緒ということにする」
彼はがっくりと肩を落とす。
「ええ~! マリと違う班じゃん俺~」
口を尖らせ、拗ねてみせる。クラスメイトたちはクスクス笑ったが、竜崎は言葉とは裏腹なユージの鋭い視線に、若干背筋が冷えた。
(こりゃ恨まれてんなあ、俺。ていうかアイツの運が悪すぎだろ)
ユージの視線に気づかないフリをして、竜崎は生徒たちに呼びかける。
「これから班ごとに集まって班長を決めてからレポートのテーマなどを話し合うこと。質問があれば呼んでくれ」
そして、教室の端にある椅子に腰掛け、窓際の列の後方に視線を向けた。
視線の先には口元が緩みきっている新堂と、いつもよりわずかではあるが眉と肩が上がっているマリの姿があった。
(そんでもってそっちは一緒の班って……。席が前後とか何だよ、運命かよ!)
心の中で悪態をつき、視線を手元の資料に移す。竜崎光貴、彼女いない歴は三年目に突入していた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~
kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。

切り札の男
古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。
ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。
理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。
そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。
その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。
彼はその挑発に乗ってしまうが……
小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。
四条雪乃は結ばれたい。〜深窓令嬢な学園で一番の美少女生徒会長様は、不良な彼に恋してる。〜
八木崎(やぎさき)
青春
「どうしようもないくらいに、私は貴方に惹かれているんですよ?」
「こんなにも私は貴方の事を愛しているのですから。貴方もきっと、私の事を愛してくれるのでしょう?」
「だからこそ、私は貴方と結ばれるべきなんです」
「貴方にとっても、そして私にとっても、お互いが傍にいてこそ、意味のある人生になりますもの」
「……なら、私がこうして行動するのは、当然の事なんですよね」
「だって、貴方を愛しているのですから」
四条雪乃は大企業のご令嬢であり、学園の生徒会長を務める才色兼備の美少女である。
華麗なる美貌と、卓越した才能を持ち、学園中の生徒達から尊敬され、また憧れの人物でもある。
一方、彼女と同じクラスの山田次郎は、彼女とは正反対の存在であり、不良生徒として周囲から浮いた存在である。
彼は学園の象徴とも言える四条雪乃の事を苦手としており、自分が不良だという自己認識と彼女の高嶺の花な存在感によって、彼女とは距離を置くようにしていた。
しかし、ある事件を切っ掛けに彼と彼女は関わりを深める様になっていく。
だが、彼女が見せる積極性、価値観の違いに次郎は呆れ、困り、怒り、そして苦悩する事になる。
「ねぇ、次郎さん。私は貴方の事、大好きですわ」
「そうか。四条、俺はお前の事が嫌いだよ」
一方的な感情を向けてくる雪乃に対して、次郎は拒絶をしたくても彼女は絶対に諦め様とはしない。
彼女の深過ぎる愛情に困惑しながら、彼は今日も身の振り方に苦悩するのであった。
青が溢れる
松浦どれみ
青春
〜そして初恋になる。教室に登校できなかった二人の成長の物語〜
関連作:長編「麗しのマリリン」こちらもよろしくお願いします!
【あらすじ】
春休み中の事故で高校入学が遅れ、クラスに馴染めずカウンセリングと自習室登校をすることになった青山美蘭(あおやま みらん)は、ある日同じクラスで持病のため保健室登校をしている青柳空(あおやぎ そら)と出会う。
初めはグイグイと距離を詰めてくる空に戸惑っていた美蘭も、毎日昼休みを一緒に過ごすことで次第に心を開いていった。
そして夏休み明け、持病の手術が成功した空に懇願され美蘭はついに教室へ登校する——。
教室内での新たな人間関係や、自分自身が解決できていない問題と向き合い、成長するふたりの青春ラブストーリー。
感想やお気に入り登録お待ちしております!
よろしくお願いします^^

未冠の大器のやり直し
Jaja
青春
中学2年の時に受けた死球のせいで、左手の繊細な感覚がなくなってしまった、主人公。
三振を奪った時のゾクゾクする様な征服感が好きで野球をやっていただけに、未練を残しつつも野球を辞めてダラダラと過ごし30代も後半になった頃に交通事故で死んでしまう。
そして死後の世界で出会ったのは…
これは将来を期待されながらも、怪我で選手生命を絶たれてしまった男のやり直し野球道。
※この作品はカクヨム様にも更新しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる