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イケメン vs. 子狼
1話
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「伴侶に対しては勿論そうなんだけど、そもそもおれたちは仲間意識とか肉親の情がすごく強いんだよ」
休日の朝。
琥牙がお茶碗を置いて複雑そうな表情で私にそう話してくる。
「うん? そうなの。 あ、だめだよこぼしちゃ」
「いきなり生活環境も変えてもらって、よくよく考えたらそれだけでも申し訳ないけど」
「んー。 でもそんな事は今更だし。お野菜もちゃんと食べてね。 おかわりは?」
「だからってこんな大食らいまで……おい、雪牙。 ちょっとは遠慮しろよおまえ」
ここの所、最近の休日の朝の風景。
私と琥牙、雪牙くんの三人は窓辺から差し込んでている朝の柔らかな木漏れ日の中、和やかに食卓を囲んでいた。
「んな事言われても、俺兄ちゃんに会いてえし。 真弥の飯が美味いから、つい」
「琥牙。 怒んないでいいよ。 ご飯はみんなで食べると美味しいもの、ね?」
そう言って笑いかけると雪牙くんもホッとしたようにこちらを見返してくる。
こんな風景は以前の狭い1LDKじゃ有り得なかっただろうし、子供の頃は共働きだった実家と違って広いダイニングテーブルを囲んでの賑やかな食事には憧れもあった。
「もう。 そんな風に甘やかすから……大体真弥って普段ほっとけない位抜けてるのに、その面倒見の良さって最初から不思議なんだよね」
ため息をつきながらそんな愚痴をこぼす琥牙。
ぽんぽんっと大盛りに盛ったご飯をしゃもじで整えながら、うーんと私も首を傾げる。
とはいっても。
彼が今ちょっと不機嫌なのは休みの朝に二人でイチャついてたのを雪牙くんに邪魔されたからじゃないだろうか?
先日、私を手酷く抱いてからの琥牙は彼なりにそれを気にしてるのか。
以来ベッドの中では蕩けそうな程に甘くて優しい。
……そのお陰で週末のたびに乱れ過ぎる自分に、私は逆に困ってもいる訳だけど。
さっきも指でじっくり可愛がられた後で、さあ今からって時に────……
「真弥、買い物! いっつも食わせてもらうだけっつったら男がすたるもんな。 オレも荷物持つの手伝うから」
拭ったはずの肌がまた熱を持ち始め、雪牙くんの大きな声にハッとして我に返る。
「あ、ありが……」
何となく視線を感じてテーブルの方を見ると、琥牙が意味ありげに頬杖をついてこちらを眺めていた。
『なに考えてるの?』
赤くなってるであろう顔の私の頭の中を見透かすみたいな表情で。
「飯終わったら一緒に行こうぜ!」
「うん……助かる、ます」
焦って変な日本語を口走る。
それでも何にしろ、こんな風にくいくいと私のスカートを引っ張って見上げてくる雪牙くんはとっても可愛いし。
だから正直いって雪牙くんの来訪は私的に、決して嫌という訳では無い。
◆
そんなわけでまだ陽が真上に上がりきらない涼しいうちに三人で買い出しに出掛けた。
「まあ、でも。 こうやって一旦懐に入れば身内みたいな感じになるから、おれにとってはありがたいのかなあ」
雪牙くんは家に帰ったらみんなで食べようと買った西瓜をブンブン振り回している。
「なんの話?」
「真弥の護衛役が増えて助かるって事だよ。 またおれがぶっ倒れたりしたら困るし」
「もう琥牙ってば、過保護なんだから」
「真弥、さっきもオレに、車道に出ちゃ危ないよ! なんて言いながら自分が階段から足滑らせてたもんな!」
運良く米袋を持った琥牙が階段のすぐ下にいてお米をエアバッグ代わりにして助けてくれた。
「……すみません」
確かに、それは。
でも元々私はそうではあるんだけど、言い訳をするとそれにはそれなりの理由がある。
その時。
「……真弥?」
前方から男性の声に呼ばれてふと顔を上げた。
身長186センチ。
ひと目でわかる、いかにもスポーツマンらしい体格。
男らしくキリッとした顔の造作に反して瞳だけは優しげ。
道を歩いたら年頃の女性がちらほら振り向く位にはオトコマエではある。
「浩、二。 なんでここに?」
「真弥こそいきなり引越しなんて。 オレに話も無く」
つい彼から目を逸らす。
雪牙くんがキョロキョロと私とその男性を推し量るように見比べて、次に自分の兄に視線を移す。
直後、通せんぼをするみたいに私の前にばっと立ちはだかった。
「んだよ、お前」
「えっ……あっ。 雪牙くん」
『こうやって一旦懐に入れば身内みたいな感じになるから』
先ほど琥牙がそう言ってたのを思い出した。
完全に相手を敵認定して威嚇してる様子の雪牙くん。
一方こんな時に一番危険であろう琥牙は……表情を変えずに無言である。
しかしおそらくこの状況はあまり良くないんだろう。
そんな光景に眉を上げるイケメン。
「は、なに? このちびっ子たち」
「チビじゃねえよ」
そんな彼に首を傾げる。
少なくとも雪牙くんが小さいのは事実よね。
「雪牙くん待って」
「雪牙」
噛み付きそうな勢いで『敵』に向かって行こうとした雪牙くんを私たちが同時に止めた。
その相手が子供に対してよくそうするように優しげに目を細めて腰をかがめる。
「真弥の知り合い? 元気だなあ」
「呼び捨てにすんじゃねえよ!」
「それはおまえもだろう? 止めといた方がいいよ。 怪我するから」
のんびりとした口調でたしなめる琥牙に、雪牙くんが有り得ないという表情で自らを親指で指す。
「………オレが?」
でも、客観的にみたら誰でもそうだと思うんだけど。
身長差とか、50センチ近くありそう。
そんな雪牙くんに琥牙が申し訳なさそうに目の前の男性をちらと見てから肩をすくめた。
「ううん。 もちろん向こうが」
休日の朝。
琥牙がお茶碗を置いて複雑そうな表情で私にそう話してくる。
「うん? そうなの。 あ、だめだよこぼしちゃ」
「いきなり生活環境も変えてもらって、よくよく考えたらそれだけでも申し訳ないけど」
「んー。 でもそんな事は今更だし。お野菜もちゃんと食べてね。 おかわりは?」
「だからってこんな大食らいまで……おい、雪牙。 ちょっとは遠慮しろよおまえ」
ここの所、最近の休日の朝の風景。
私と琥牙、雪牙くんの三人は窓辺から差し込んでている朝の柔らかな木漏れ日の中、和やかに食卓を囲んでいた。
「んな事言われても、俺兄ちゃんに会いてえし。 真弥の飯が美味いから、つい」
「琥牙。 怒んないでいいよ。 ご飯はみんなで食べると美味しいもの、ね?」
そう言って笑いかけると雪牙くんもホッとしたようにこちらを見返してくる。
こんな風景は以前の狭い1LDKじゃ有り得なかっただろうし、子供の頃は共働きだった実家と違って広いダイニングテーブルを囲んでの賑やかな食事には憧れもあった。
「もう。 そんな風に甘やかすから……大体真弥って普段ほっとけない位抜けてるのに、その面倒見の良さって最初から不思議なんだよね」
ため息をつきながらそんな愚痴をこぼす琥牙。
ぽんぽんっと大盛りに盛ったご飯をしゃもじで整えながら、うーんと私も首を傾げる。
とはいっても。
彼が今ちょっと不機嫌なのは休みの朝に二人でイチャついてたのを雪牙くんに邪魔されたからじゃないだろうか?
先日、私を手酷く抱いてからの琥牙は彼なりにそれを気にしてるのか。
以来ベッドの中では蕩けそうな程に甘くて優しい。
……そのお陰で週末のたびに乱れ過ぎる自分に、私は逆に困ってもいる訳だけど。
さっきも指でじっくり可愛がられた後で、さあ今からって時に────……
「真弥、買い物! いっつも食わせてもらうだけっつったら男がすたるもんな。 オレも荷物持つの手伝うから」
拭ったはずの肌がまた熱を持ち始め、雪牙くんの大きな声にハッとして我に返る。
「あ、ありが……」
何となく視線を感じてテーブルの方を見ると、琥牙が意味ありげに頬杖をついてこちらを眺めていた。
『なに考えてるの?』
赤くなってるであろう顔の私の頭の中を見透かすみたいな表情で。
「飯終わったら一緒に行こうぜ!」
「うん……助かる、ます」
焦って変な日本語を口走る。
それでも何にしろ、こんな風にくいくいと私のスカートを引っ張って見上げてくる雪牙くんはとっても可愛いし。
だから正直いって雪牙くんの来訪は私的に、決して嫌という訳では無い。
◆
そんなわけでまだ陽が真上に上がりきらない涼しいうちに三人で買い出しに出掛けた。
「まあ、でも。 こうやって一旦懐に入れば身内みたいな感じになるから、おれにとってはありがたいのかなあ」
雪牙くんは家に帰ったらみんなで食べようと買った西瓜をブンブン振り回している。
「なんの話?」
「真弥の護衛役が増えて助かるって事だよ。 またおれがぶっ倒れたりしたら困るし」
「もう琥牙ってば、過保護なんだから」
「真弥、さっきもオレに、車道に出ちゃ危ないよ! なんて言いながら自分が階段から足滑らせてたもんな!」
運良く米袋を持った琥牙が階段のすぐ下にいてお米をエアバッグ代わりにして助けてくれた。
「……すみません」
確かに、それは。
でも元々私はそうではあるんだけど、言い訳をするとそれにはそれなりの理由がある。
その時。
「……真弥?」
前方から男性の声に呼ばれてふと顔を上げた。
身長186センチ。
ひと目でわかる、いかにもスポーツマンらしい体格。
男らしくキリッとした顔の造作に反して瞳だけは優しげ。
道を歩いたら年頃の女性がちらほら振り向く位にはオトコマエではある。
「浩、二。 なんでここに?」
「真弥こそいきなり引越しなんて。 オレに話も無く」
つい彼から目を逸らす。
雪牙くんがキョロキョロと私とその男性を推し量るように見比べて、次に自分の兄に視線を移す。
直後、通せんぼをするみたいに私の前にばっと立ちはだかった。
「んだよ、お前」
「えっ……あっ。 雪牙くん」
『こうやって一旦懐に入れば身内みたいな感じになるから』
先ほど琥牙がそう言ってたのを思い出した。
完全に相手を敵認定して威嚇してる様子の雪牙くん。
一方こんな時に一番危険であろう琥牙は……表情を変えずに無言である。
しかしおそらくこの状況はあまり良くないんだろう。
そんな光景に眉を上げるイケメン。
「は、なに? このちびっ子たち」
「チビじゃねえよ」
そんな彼に首を傾げる。
少なくとも雪牙くんが小さいのは事実よね。
「雪牙くん待って」
「雪牙」
噛み付きそうな勢いで『敵』に向かって行こうとした雪牙くんを私たちが同時に止めた。
その相手が子供に対してよくそうするように優しげに目を細めて腰をかがめる。
「真弥の知り合い? 元気だなあ」
「呼び捨てにすんじゃねえよ!」
「それはおまえもだろう? 止めといた方がいいよ。 怪我するから」
のんびりとした口調でたしなめる琥牙に、雪牙くんが有り得ないという表情で自らを親指で指す。
「………オレが?」
でも、客観的にみたら誰でもそうだと思うんだけど。
身長差とか、50センチ近くありそう。
そんな雪牙くんに琥牙が申し訳なさそうに目の前の男性をちらと見てから肩をすくめた。
「ううん。 もちろん向こうが」
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