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神山✕涼真(エブリスタ版 貴方のそば)
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夜中、職場を出ると目の前に真っ白なポルシェ911が停まっていた。
「乗れ」
涼真はため息をつきながらうすく苦笑いする。
スマホがずっと鳴りっぱなしだったがずっと無視していたら本人が乗り込んできた。こんな目立つ格好で。
「これセンセの車?」
作戦に失敗してから神山修二は勝手に俺を『自分のもの』扱いする。
「レンタカーだ。公用車があるから自分のクルマなんか必要ない」
「国会議員なのにセコイね」
それでも愛人を迎えにくるためにスポーツカーで来るなんて笑える。
「それで?俺を拉致してどこ行くの?」
「気分転換にドライブ。つきあえ」
俺が何も返答をしていないのに先生は思い切りアクセルを踏んだ。
「わっ!ちょっと…危ないって!」
体が強い衝撃でガクンと揺れる。先生の若い頃は高級車嗜好の人間が多かったんだろうな。俺は別にクルマに興味ないんだけど、愛人を迎えにくるために見栄を張る姿はかわいい。
スーツ姿のままだがネクタイは緩めて髪はセットを崩して前髪が顔にかかっている。以前俺がなんとなく「髪は上げてないほうが好き」と言ったのをおぼえているのだろう。そういう俺も「髪は長めのほうがいい」と言ったセンセの好みに合わせて警察官なのに髪は肩までのばしている。
「夕飯は食べた?」
「まさか。今の今まで仕事してたよ」
「この時間に営業している店なんかあるかなあ」
ほかに走っている車のいない官庁街を抜けて先生は首都高に向かっているようだった。こんな時間でも建物には電気が点いている。そこを離れると夜景が広がってきた。
「そうだ。マックよろう。ドライブスルー」
俺が助け舟を出すと先生は「涼真がそれでいいなら」と言ってセンセの好みを聞きながら注文していくと横から一万円札を渡してくる。
「領収書いる?」
「デートは交際費に入らん」
デートという言葉に俺はドキっとしたが動揺をさとられないようにお金を払う。今度はゆっくり発進して予想どおり首都高に入った。
「いいタイミングで俺の口に放り込んでくれ」
「ムズい事いうなあ。まあいいや。あーんして」
俺はナゲットをつまんでセンセの口に近づけるとひな鳥のような動きでかじりついた。
「高級車の中でジャンクフード食べるなんて最高の贅沢だね。いただきまーす」
季節限定販売のハンバーガーを袋から取り出して思い切り頬張る。頬をふくらませてもぐもぐと食べている俺を横目で見ながらセンセは笑顔で運転していた。「いいタイミングで」包み紙を半分くらい折ってまたセンセの口に近づける。
烏龍茶を飲もうとストローを刺そうとしているとセンセはまた強めにアクセルを踏んだ。
「もお、こぼすじゃん」
運転席に向かって文句を言うとセンセは自分の顔を指差していた。
「飲みたかったなら言えばいいのに」
独特のエンジン音にテンションが上がるのかセンセは楽しそうに見える。
俺にはよくわからない。
「バブルを知ってる世代がうらやましいなあ」
「遊んでいた分働いていたってことだぞ」
「俺だって働いてるけど、遊ぶ場所がない」
夜の暗闇に地上の灯りが星に見えて、それがどんどん流れていく。
「乱痴気騒ぎがしたいならさせてやるぞ」
「興味ない。こうやってふたりでいるほうがいいよ」
夜景から視線をはずして流し目で見るがセンセは無表情のまま指をクイクイと動かして催促する。
俺は口角を上げてシートベルトを外して運転しているセンセに近づいて食べ物を要求している唇にキスした。マスタードとケチャップが混ざった味がしておもしろがって貪っていると少しだけスピードが落ちた気がした。
センセは危ないとは言わず、俺の頭を少しなでた。
「席に戻りなさい」
しばらくして子どものように注意されて、俺は助手席に座り直す。
「少し腕をあげたな。及第点をやる」
ニヤッと笑うセンセに俺は少しだけむっとした。
「ハニトラだけが仕事じゃないもん」
「今ちょっとカワイイと思ったよ。経験積んで腕あげたな」
「センセで失敗してからそんな仕事してない。スキルアップなんかするもんか」
なにこいつ。俺をからかってストレス発散しているだけじゃん。
俺は別に、今さらセンセから何か情報を抜こうとか思ってないのに。
泣きそうになって夜景を見ているふりをしながら必死で涙をこらえているのに、意地悪な男は何食わぬ顔をして運転している。
「…だめだ」
「え?」
「涼真の前でカッコつけてたけど限界だ。泣くのは反則だ」
「…泣いてなんか…」
ないはずだ。
陳腐な物語の展開としたらこの後ホテルに行って…、と勝手に思って身構えたが、車は洒落た洋館の門の前に停まり、カメラに向かって「俺だ」とセンセがひとこと言うと門が自動に開いた。
「ここどこ?」
不安げに尋ねる俺の質問には答えず、車は雑に停車されて中から出てきた執事のような男に預けられた。
「センセ、ここはどこなの?」
手を掴まれて強引に引っぱられていく俺の事なんか 無視してセンセはどんどん建物の中を進んでいく。
どうしてこのとき俺は腕を振り払わなかったんだろう。
重そうなドアを開いてセンセは天蓋付きのベッドに俺を放り投げた。
「金はこういう所に使うもんさ」
ベッドの上で怯えている俺に向かって、ネクタイを緩めながら近づいてくる。
「いやだ…、来ないで」
多分ここはセンセの隠れ家。
なんだろう。急に怖くなってきた。
体がかたかたと震える。自分を守るように両腕で体を抱きしめていると、センセはその腕を強い力で剥がしてベッドに俺を押し倒した。
「何をそんなに怯えてる?」
「…わかんな…先生が…怖い……」
先生の指が俺のネクタイをはずし、ジャケット、シャツとゆっくり脱がしていくのを俺は抵抗しないでされるままになっていた。そしてさっきの仕返しのように長い時間腔内を舌で犯された。
先生の舌はそのまま俺の胸へ滑っていき、胸の突起を執拗に攻めてくる。
「…ふ…っ……」
その頃には抵抗する力も怖かった気持ちもどこかへ消えていた。
「涼真、今の仕事辞めて俺の所へ来い」
下着ごとズボンを脱がせて俺の鈴口を口に含みながらセンセが話す。
「い…やだ…」
「どうして?そんなに警察官になるのが夢だった?」
膝立ちになったセンセが俺の腰を掴んで引き寄せる。
「…センセに仕返しするには…国家権力が必要でしょ?」
もう俺の負けは確定しているのに精一杯意地をはって笑顔を浮かべてみた。
「なるほど」
センセは俺の足を大きく広げて何故か指を入れてきた。
「は…っ…」
「かわいそうだから指だけにしておいてやろうと思ったけど、ずいぶん物足りなそうな顔するんだな」
「…意地悪……」
俺の瞳に涙がにじんでいく。
「意地悪?俺が?じゃ、どうしてほしいんだ?」
俺のひたいにセンセの前髪がさらさらとくすぐる。近くにあるその顔を見れなくて目を閉じた。
「どうしてほしい?」
低い声でセンセはもう一度俺に聞いた。
「…入れて」
あとはセンセの性欲処理の人形扱いだった。
いや、そう思わなければ自分のプライドが保てなかっただけ。ターゲットだったはずの先生に逆に籠絡されて快楽で支配されていることを認めるのが少しだけ悔しかった。
「ぁ…センセ……」
入ってくる先生自身が気持ちいい。激しく突かれてもう悲鳴のような嬌声しか出なかった。
「…や…いや…、あぁ……」
「嫌か?」
「やさしくしてくれなきゃ…やだあ……」
「キツイ?」
俺の顔を覗き込むように先生の体がぐっと折り曲がって近づくとさらに深い所まで刺激されて俺は声をあげる。
「ん…あ……ぁ……あん…」
お酒を飲んだわけでもないのに頭がぼんやりする。お洒落な部屋だなと思いながらベッドに沈んだ。
先生とは終わったような続いているような、曖昧な関係になっている。
それもいいんじゃないか。白黒はっきりするのは法律だけでいい。
あいにく人間の感情は、曖昧だ。
「乗れ」
涼真はため息をつきながらうすく苦笑いする。
スマホがずっと鳴りっぱなしだったがずっと無視していたら本人が乗り込んできた。こんな目立つ格好で。
「これセンセの車?」
作戦に失敗してから神山修二は勝手に俺を『自分のもの』扱いする。
「レンタカーだ。公用車があるから自分のクルマなんか必要ない」
「国会議員なのにセコイね」
それでも愛人を迎えにくるためにスポーツカーで来るなんて笑える。
「それで?俺を拉致してどこ行くの?」
「気分転換にドライブ。つきあえ」
俺が何も返答をしていないのに先生は思い切りアクセルを踏んだ。
「わっ!ちょっと…危ないって!」
体が強い衝撃でガクンと揺れる。先生の若い頃は高級車嗜好の人間が多かったんだろうな。俺は別にクルマに興味ないんだけど、愛人を迎えにくるために見栄を張る姿はかわいい。
スーツ姿のままだがネクタイは緩めて髪はセットを崩して前髪が顔にかかっている。以前俺がなんとなく「髪は上げてないほうが好き」と言ったのをおぼえているのだろう。そういう俺も「髪は長めのほうがいい」と言ったセンセの好みに合わせて警察官なのに髪は肩までのばしている。
「夕飯は食べた?」
「まさか。今の今まで仕事してたよ」
「この時間に営業している店なんかあるかなあ」
ほかに走っている車のいない官庁街を抜けて先生は首都高に向かっているようだった。こんな時間でも建物には電気が点いている。そこを離れると夜景が広がってきた。
「そうだ。マックよろう。ドライブスルー」
俺が助け舟を出すと先生は「涼真がそれでいいなら」と言ってセンセの好みを聞きながら注文していくと横から一万円札を渡してくる。
「領収書いる?」
「デートは交際費に入らん」
デートという言葉に俺はドキっとしたが動揺をさとられないようにお金を払う。今度はゆっくり発進して予想どおり首都高に入った。
「いいタイミングで俺の口に放り込んでくれ」
「ムズい事いうなあ。まあいいや。あーんして」
俺はナゲットをつまんでセンセの口に近づけるとひな鳥のような動きでかじりついた。
「高級車の中でジャンクフード食べるなんて最高の贅沢だね。いただきまーす」
季節限定販売のハンバーガーを袋から取り出して思い切り頬張る。頬をふくらませてもぐもぐと食べている俺を横目で見ながらセンセは笑顔で運転していた。「いいタイミングで」包み紙を半分くらい折ってまたセンセの口に近づける。
烏龍茶を飲もうとストローを刺そうとしているとセンセはまた強めにアクセルを踏んだ。
「もお、こぼすじゃん」
運転席に向かって文句を言うとセンセは自分の顔を指差していた。
「飲みたかったなら言えばいいのに」
独特のエンジン音にテンションが上がるのかセンセは楽しそうに見える。
俺にはよくわからない。
「バブルを知ってる世代がうらやましいなあ」
「遊んでいた分働いていたってことだぞ」
「俺だって働いてるけど、遊ぶ場所がない」
夜の暗闇に地上の灯りが星に見えて、それがどんどん流れていく。
「乱痴気騒ぎがしたいならさせてやるぞ」
「興味ない。こうやってふたりでいるほうがいいよ」
夜景から視線をはずして流し目で見るがセンセは無表情のまま指をクイクイと動かして催促する。
俺は口角を上げてシートベルトを外して運転しているセンセに近づいて食べ物を要求している唇にキスした。マスタードとケチャップが混ざった味がしておもしろがって貪っていると少しだけスピードが落ちた気がした。
センセは危ないとは言わず、俺の頭を少しなでた。
「席に戻りなさい」
しばらくして子どものように注意されて、俺は助手席に座り直す。
「少し腕をあげたな。及第点をやる」
ニヤッと笑うセンセに俺は少しだけむっとした。
「ハニトラだけが仕事じゃないもん」
「今ちょっとカワイイと思ったよ。経験積んで腕あげたな」
「センセで失敗してからそんな仕事してない。スキルアップなんかするもんか」
なにこいつ。俺をからかってストレス発散しているだけじゃん。
俺は別に、今さらセンセから何か情報を抜こうとか思ってないのに。
泣きそうになって夜景を見ているふりをしながら必死で涙をこらえているのに、意地悪な男は何食わぬ顔をして運転している。
「…だめだ」
「え?」
「涼真の前でカッコつけてたけど限界だ。泣くのは反則だ」
「…泣いてなんか…」
ないはずだ。
陳腐な物語の展開としたらこの後ホテルに行って…、と勝手に思って身構えたが、車は洒落た洋館の門の前に停まり、カメラに向かって「俺だ」とセンセがひとこと言うと門が自動に開いた。
「ここどこ?」
不安げに尋ねる俺の質問には答えず、車は雑に停車されて中から出てきた執事のような男に預けられた。
「センセ、ここはどこなの?」
手を掴まれて強引に引っぱられていく俺の事なんか 無視してセンセはどんどん建物の中を進んでいく。
どうしてこのとき俺は腕を振り払わなかったんだろう。
重そうなドアを開いてセンセは天蓋付きのベッドに俺を放り投げた。
「金はこういう所に使うもんさ」
ベッドの上で怯えている俺に向かって、ネクタイを緩めながら近づいてくる。
「いやだ…、来ないで」
多分ここはセンセの隠れ家。
なんだろう。急に怖くなってきた。
体がかたかたと震える。自分を守るように両腕で体を抱きしめていると、センセはその腕を強い力で剥がしてベッドに俺を押し倒した。
「何をそんなに怯えてる?」
「…わかんな…先生が…怖い……」
先生の指が俺のネクタイをはずし、ジャケット、シャツとゆっくり脱がしていくのを俺は抵抗しないでされるままになっていた。そしてさっきの仕返しのように長い時間腔内を舌で犯された。
先生の舌はそのまま俺の胸へ滑っていき、胸の突起を執拗に攻めてくる。
「…ふ…っ……」
その頃には抵抗する力も怖かった気持ちもどこかへ消えていた。
「涼真、今の仕事辞めて俺の所へ来い」
下着ごとズボンを脱がせて俺の鈴口を口に含みながらセンセが話す。
「い…やだ…」
「どうして?そんなに警察官になるのが夢だった?」
膝立ちになったセンセが俺の腰を掴んで引き寄せる。
「…センセに仕返しするには…国家権力が必要でしょ?」
もう俺の負けは確定しているのに精一杯意地をはって笑顔を浮かべてみた。
「なるほど」
センセは俺の足を大きく広げて何故か指を入れてきた。
「は…っ…」
「かわいそうだから指だけにしておいてやろうと思ったけど、ずいぶん物足りなそうな顔するんだな」
「…意地悪……」
俺の瞳に涙がにじんでいく。
「意地悪?俺が?じゃ、どうしてほしいんだ?」
俺のひたいにセンセの前髪がさらさらとくすぐる。近くにあるその顔を見れなくて目を閉じた。
「どうしてほしい?」
低い声でセンセはもう一度俺に聞いた。
「…入れて」
あとはセンセの性欲処理の人形扱いだった。
いや、そう思わなければ自分のプライドが保てなかっただけ。ターゲットだったはずの先生に逆に籠絡されて快楽で支配されていることを認めるのが少しだけ悔しかった。
「ぁ…センセ……」
入ってくる先生自身が気持ちいい。激しく突かれてもう悲鳴のような嬌声しか出なかった。
「…や…いや…、あぁ……」
「嫌か?」
「やさしくしてくれなきゃ…やだあ……」
「キツイ?」
俺の顔を覗き込むように先生の体がぐっと折り曲がって近づくとさらに深い所まで刺激されて俺は声をあげる。
「ん…あ……ぁ……あん…」
お酒を飲んだわけでもないのに頭がぼんやりする。お洒落な部屋だなと思いながらベッドに沈んだ。
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あいにく人間の感情は、曖昧だ。
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