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38 愛人を見つける方法
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帝都に滞在して二十八日目。
アカリエル公爵家としては、二日後には帝都を去ることになっていた。
この日、ダルディエ公爵夫妻をアカリエル邸に招待し、ルークと私も交え、昼食と会話を楽しんだ。ダルディエ公爵夫妻は、本当にいい人達で、一緒に話すのが楽しい。
昼食後、ルークとダルディエ公爵は、少し仕事の話をするからと席を立ち、私とフローリアは女性同士の話に花を咲かせていた。
ダルディエ公爵夫妻には、すでに子供が複数人いるという。今回の社交シーズンでは会うのは難しいけれど、子供たちもいずれ紹介してくれることになった。
ルークとこのまま順調にいけば、愛人がいようと、私とルークの間にも子供が生まれるかもしれない。そうなったらいいな、と思いながら話を聞く。
ただ、その前にどうにかして愛人と会いたかったのだが、そろそろ期限切れというか、時間がない。もう今回は諦めるしかないだろうか、と思っていると、フローリアが口を開いた。
「アリス様、何か悩み事があるのではないかしら」
二人で話をしていたのに、私の思考が飛んでしまっていた。
「あ、い、いいえ、そういうわけではないのですが……」
「よかったら、わたくしに話をしてくださらない? わたくしに解決できるか分からないけれど、話を聞いて差し上げることはできますわ」
「フローリア様……」
どうしよう。正直、少し話を聞いてほしい。普段は愛人の悩みなど表に出さないよう気を付けているが、最近手詰まりで、気持ちが追い詰められているのかもしれない。
ただ、夫の愛人の話なんて、本当はするべきでないことは分かっている。だから、他人事のように話をして、話を聞いてもらうことにした。あわよくば、アドバイスももらえたら嬉しい。
「わ、わたくしの友達の話なのですが……」
フローリアが頷く。
「その、友達の夫には愛人がいるのですが、それが誰なのか分からないと友達は悩んでいました。夫に愛人がいるのは、結婚前から分かっているので、仕方ないと思っているそうです。ただ、友達は妻として、今後愛人と争ったりすることのないよう、今のうちに一度愛人と穏便に話をしたいと思っています。ですが、その愛人を見つける方法がわからなくて、どうすればいいか……フローリア様!?」
考えながら話をして、ふとフローリアを見ると、なぜかフローリアが涙を流していて、ギョッとする。
「ど、どうされました!?」
「ジ、ジルに愛人がいるの?」
ジルとはダルディエ公爵のことである。
「ジルはずっと、それをわたくしに隠して?」
「え、……え?」
あれ、なぜダルディエ公爵の話になったんだろう。はらはらと涙を流すフローリアに、焦りばかりが募る。
「いいえ、ダルディエ公爵には、愛人はいないと思いますわ! 愛人がいるのは、わたくしの友達の話で」
「ですから、わたくしのことでしょう? や、約束したのに、ずっとわたくしだけって、ジルは言っていたのに……」
友達の話が、なぜフローリアということに、と思って、はっとした。そういえば、先日、私の始めての友達がフローリアだという話を、フローリアとしたのだった。そして現在、私の友達は、フローリアのみ。
「ご、誤解ですわ! 友達ではないのです!」
「わ、わたくしは友達ではないの?」
「いえいえいえ、フローリア様はわたくしの友達ですが、違うのです!」
焦ってしまい、変な風に言ってしまった。こんな素敵な優しいフローリアを、泣かせてしまうなんて、私は最低だ。
「友達の話と言いましたが、本当は違うのです! と、友達ではなくて、わたくしの……」
フローリアを泣かせてしまったことに動揺して、すでに私の感情がおかしくなっていた。じわじわと、目頭が熱くなる。
「本当は、わたくしの旦那様の話なのです……! ごめんなさい、フローリア様を泣かせるつもりではなくて……!」
すでに涙腺は崩壊し、その後も泣きながらフローリアに説明する。しかし、支離滅裂な説明をしたに違いない。ダルディエ公爵とルークが部屋にやってきた頃、私もフローリアも号泣しているという、カオスなことになっていた。
アカリエル公爵家としては、二日後には帝都を去ることになっていた。
この日、ダルディエ公爵夫妻をアカリエル邸に招待し、ルークと私も交え、昼食と会話を楽しんだ。ダルディエ公爵夫妻は、本当にいい人達で、一緒に話すのが楽しい。
昼食後、ルークとダルディエ公爵は、少し仕事の話をするからと席を立ち、私とフローリアは女性同士の話に花を咲かせていた。
ダルディエ公爵夫妻には、すでに子供が複数人いるという。今回の社交シーズンでは会うのは難しいけれど、子供たちもいずれ紹介してくれることになった。
ルークとこのまま順調にいけば、愛人がいようと、私とルークの間にも子供が生まれるかもしれない。そうなったらいいな、と思いながら話を聞く。
ただ、その前にどうにかして愛人と会いたかったのだが、そろそろ期限切れというか、時間がない。もう今回は諦めるしかないだろうか、と思っていると、フローリアが口を開いた。
「アリス様、何か悩み事があるのではないかしら」
二人で話をしていたのに、私の思考が飛んでしまっていた。
「あ、い、いいえ、そういうわけではないのですが……」
「よかったら、わたくしに話をしてくださらない? わたくしに解決できるか分からないけれど、話を聞いて差し上げることはできますわ」
「フローリア様……」
どうしよう。正直、少し話を聞いてほしい。普段は愛人の悩みなど表に出さないよう気を付けているが、最近手詰まりで、気持ちが追い詰められているのかもしれない。
ただ、夫の愛人の話なんて、本当はするべきでないことは分かっている。だから、他人事のように話をして、話を聞いてもらうことにした。あわよくば、アドバイスももらえたら嬉しい。
「わ、わたくしの友達の話なのですが……」
フローリアが頷く。
「その、友達の夫には愛人がいるのですが、それが誰なのか分からないと友達は悩んでいました。夫に愛人がいるのは、結婚前から分かっているので、仕方ないと思っているそうです。ただ、友達は妻として、今後愛人と争ったりすることのないよう、今のうちに一度愛人と穏便に話をしたいと思っています。ですが、その愛人を見つける方法がわからなくて、どうすればいいか……フローリア様!?」
考えながら話をして、ふとフローリアを見ると、なぜかフローリアが涙を流していて、ギョッとする。
「ど、どうされました!?」
「ジ、ジルに愛人がいるの?」
ジルとはダルディエ公爵のことである。
「ジルはずっと、それをわたくしに隠して?」
「え、……え?」
あれ、なぜダルディエ公爵の話になったんだろう。はらはらと涙を流すフローリアに、焦りばかりが募る。
「いいえ、ダルディエ公爵には、愛人はいないと思いますわ! 愛人がいるのは、わたくしの友達の話で」
「ですから、わたくしのことでしょう? や、約束したのに、ずっとわたくしだけって、ジルは言っていたのに……」
友達の話が、なぜフローリアということに、と思って、はっとした。そういえば、先日、私の始めての友達がフローリアだという話を、フローリアとしたのだった。そして現在、私の友達は、フローリアのみ。
「ご、誤解ですわ! 友達ではないのです!」
「わ、わたくしは友達ではないの?」
「いえいえいえ、フローリア様はわたくしの友達ですが、違うのです!」
焦ってしまい、変な風に言ってしまった。こんな素敵な優しいフローリアを、泣かせてしまうなんて、私は最低だ。
「友達の話と言いましたが、本当は違うのです! と、友達ではなくて、わたくしの……」
フローリアを泣かせてしまったことに動揺して、すでに私の感情がおかしくなっていた。じわじわと、目頭が熱くなる。
「本当は、わたくしの旦那様の話なのです……! ごめんなさい、フローリア様を泣かせるつもりではなくて……!」
すでに涙腺は崩壊し、その後も泣きながらフローリアに説明する。しかし、支離滅裂な説明をしたに違いない。ダルディエ公爵とルークが部屋にやってきた頃、私もフローリアも号泣しているという、カオスなことになっていた。
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