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29話 護石

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『ハルはログインしました』

 今日はどこに行こうか? それとも他の事とかするのかな?

「さーて、2人はもう来てるかな?」
「やっと来たわね!」
「時間通りだからいいじゃないー」
「ナツキ、アキ」

 2人は直ぐ傍で既に待っていた。2人とも早いなぁ。

「それじゃあ今日も一緒に遊びましょう」
「どんなモンスターと戦うのかなー?」
「走りやすい所がいいなぁ」

 私は2人方を向き、ナツキを咥える。

 カプ ポイ

「分かってるけど出会い頭は怖いわね!?」

 フサ っと頭の上でナツキをキャッチする。

「大丈夫大丈夫。今夜はキノコの踊り食いだったから」
「踊り食い!? 生のままは止めておきなさい!? お腹壊すわよ!?」
「アキもやる?」

 私はじーっとアキを見つめて、どこを咥えるべきかそっと考える。

「私は飛べるからいいわー」

 アキはバササと羽を広げて空を飛び、私の背中に着地する。

「やっぱりここが落ち着くー」
「それは私も思うわ。なんか安心感があるって言うか」
「菌を繁殖させたり巣作りはしないでね?」

 2人の言葉と外見が私を不安にさせる。

「大丈夫よ。アップデートされたらわかんないけど」
「相手の人がいないから仕方ないよねー」
「それもそうか。何処に行く? 次の街に行っちゃう?」
「それもいいかも」
「あ、待ってー。私まだ装備整えてないんだー」
「……」
「……」
「え、何その沈黙」
「装備って何?」
「そんなこと出来るの? 私も出来る? っていうか素晴らしい体を隠さない?」

 聞きなれない言葉に私とナツキはアキをじっと見つめる。

「ちょっと待ってー? 今の装備って何をつけてるのー?」
「私は装備って何か分からないから初期のまま」
「以下同上」
「どんだけ縛りプレイが好きなのよ……」

 アキは少しぐったりした様子を見せるけど、直ぐに起き上がる。

「まぁいいわー。装備っていうか、他のゲームと違って護石ごせきっていうアイテムを持てるのー。で、この護石ってのを持つと、本来出来ないような行動が出来るようになったり、解放されてないスキルが使えるようになったり、ステータスが上がるんだよー」
「それは……」
「本当?」
「本当だよー!? ほら、見て!」

 アキが私たちに見せつけてくる。

・魔力の護石(魔力を少し上昇させる)
・詠唱の護石(詠唱速度を少し上昇させる)
・集中の護石(集中系統の速度を少し上昇させる)



「まだ3つしか装備してないけど、こうやって持つんだよー」
「へー。装備っていっても体につけたりするわけじゃないのね」
「そうだねー。っていうか体のサイズとか全然違うし、種類によっては装備出来ないとかありそうだからねー」
「確かに。言われてみれば」
「それで、この護石はどうやってゲットするの?」

 大事なのはそこだ。もし走る速度が上がったり、色んな場所でも走ることが出来るようになったりする護石があるのなら是非とも装備したい。

「これは今まで倒して来たモンスターの素材を使ったり、鉱石とかを掘ってきたり商人から手に入れたり、NPCから貰ったり色々だよー。むしろこの護石を集めるためにやってる人もいるらしいよー」
「それじゃあ昨日のモコモコとか」
「撃退したゴリラの素材とかも使えるかもしれないってこと?」
「そうだよー。しかも幻想種の装備なんて絶対強いに決まってるよー」
「それってどこで作れるの!?」

 これであのトカゲサルをもっと楽にぶっ飛ばしてやれるはずだ!

「護石屋って言う店がどんなに小さい村にもあるから、そこで加工してもらうんだよー。一応プレイヤーでも作れるみたいだけど、そういうスキル持って無いと出来ないからねー。それに、生産特化になると戦闘はからっきしになるって言われてたから注意してねー」
「なるほどね」
「じゃあ早速行きましょう!」
「分かった!」

 私はすぐさま駆け出す。

「待って待って!? 何処か分かってるのー!?」
「あ! そっか!」

 とりあえず走りたいと思って駆け出してしまった。直ぐに足を止めるけど、足がうずうずして仕方ない。

「場所は直ぐにつくからー。っていうか、ギルドの直ぐ近くにあるから。そこで報告だけしてから行こー」
「あ、そうだったわね。依頼があったの忘れてたわ」
「すぐに行くねー!」

 私は駆け出して、ギルドへの道を急いだ。

******

「それで、ここが護石屋?」

 ギルドで報告を終えた私たちの前には、『護石』と書かれた店があった。

「そうだよー。取りあえず中に行こう?」
「分かった」

 私はのしのしと中に入っていく。

「いらっしゃい」

 店の中はかなり広く壁の棚には色とりどりの石がおいてあった。

 私たちに声をかけてきたのは木だった。見るからに木。何の木かはぱっと見では分からない。ただ、手がついているからちょっと違う気もする。

「木……?」
「おやおや、お前さんたちは初めて見るのかねぇ」
「うん」
「そうかそうか。では教えてあげようかねぇ」
「よろしくお願いします」
「お願いします」
「私は寝てるねー」

 それから私たちは、2つ目の街だと言うのにチュートリアルを受けていた。


 護石……それはアキが説明していたように、ステータスを上昇させたり、スキルを付与する物だった。これを作るにはモンスターから集めた素材を使って、更に『護石屋』の人達が祈りを込めることによって護石として機能を発揮する。というものだらしい。

「お前さんたち中々レアな素材を持ってるねぇ。何が欲しいんだい?」

 木のおばあさん? がそう言うと、私の目の前にパッとメニュー画面が広がった。

 そこには、今まで倒した敵のモンスターの素材を使って作れる護石の一覧が出来ている。何十個にも上る護石の一覧は眺めているだけでも面白い。

「載ってない物でも画面を切り替えて見てねぇ。基本的な物でよければ買うことも出来るからねぇ」
「分かった」

 私は操作をして画面を切り替えると、そこにはさっきの一覧の倍以上の護石が書いてあった。

「こんなに……?」
「あー。一覧の所に来たー?」
「うん。作れる護石ってすごく一杯あるんだね」
「画面は切り替えたー? そっちの方がすごいよー」
「うん。すっごく多い。でも作ることが出来ないみたいなんだけど、どうしてなのかな?」
「あーそれは、モンスターの素材が足りないんだよー」
「あ」

 私はその一覧を見直して見る。破竜の護石と書いてある下には、護石の素材になりそうな名前が赤い文字と白い文字で書いてあった。

 よく見ると、白い文字は足りている素材、赤い文字は足りない素材みたいだ。赤文字の『土竜王の贈り物』とかどこで手に入れるんだろうか。

「結構足りない素材が多いんだねぇ」
「そうだねー。このゲームは基本的にプレイヤー同士で戦う事ってないし、ボスモンスターを何回も狩ったりしてレアドロップを狙うって言う感じの奴だからねー」
「なるほど。護石ってどれがいいとかあるの?」
「それはプレイスタイルによるかなー。ハルなら走る速度上げたり、突進の威力が上がるようにしたらいいんじゃないのかなー?」
「これって、使うのって素材だけ?」
「後はゴールドも使うよー」
「ああ、使い道ってここだったんだ」
「……他にもあったと思うんだけどねー」

 色んな護石があるんだな……。どの護石にしようかな。っていっても私がやりたいことは1つだし。それを強化していく感じでいいかな。

 一人、そんな事を思っていると、悲鳴が聞える。それは、ナツキの叫び声だった。

「私の欲しいのがなーい!!!」
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