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30話 宝箱

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「ナツキ? どうしたの?」
「どうしたもこうしたもないわよ! 私はシールド強化が欲しいのに、全然それ用の護石がないのよ!」
「へーそうなの?」

 私はアキに視線を向ける。

「あー。最初の内はそうかもねー。ストーリーもまだ序盤だろうし、レアリティの高い奴とかはそうなっちゃうのかもねー」
「何でよ何でよ! 私はシールドを強化したいのに!」
「どうどう、ナツキ、落ち着いて」
「いーやーだー! 私は皆を守りたいんだから! だから強化したいのー!」

 そんな風に言われたら、私も探さないとっていう気分になるじゃない。

「ナツキ……ねぇおばあさん。シールドを強化するような護石って売ってたりしてないのー?」
「そうだねぇ。ここでは売ってないねぇ」
「それじゃあ、何処に行ったらあるとかも分からない?」
「シールド系かい? ここから一番近いと次の街の海の方にあったはずだよ」
「ほんと!? ナツキ! 海行こう海!」
「海……? 私水着ない……」
「リアルじゃなくって! シールドの護石ごせきは海にあるんだって!」
「本当に!?」
「と言っても結構レアだけどねぇ。それでも、宝箱に稀に入ってることがあるよ」

 やった。これでナツキが探してる護石が見つかるかもしれない。ん? 宝箱?

「おばあさん。宝箱ってなあに?」
「おや? 知らないのかい? 宝箱は宝箱だよ。フィールドの道中やダンジョンに時々落ちていることがある物でね。中には護石だったり、レアアイテムだったりが入ってるんだよ。それを見つける為の探知スキルとか魔法もあるんだ。あ、でもお前さんの嗅覚でも見つける事が出来るかもねぇ」
「え? 私の嗅覚で?」
「結構古びた匂いがするからねぇ。気を付けて探してみな」
「分かった! 2人とも。直ぐに探しに行く?」
「行く!」
「待って待って、ハルの護石はいいのー?」

 そうだった。私も自分の分の護石を考えないと。

「んー。どんなのがいいかはこの一覧って見ながら走れないかな?」

 木のおばあさんが答えてくれる。

「メニューから護石一覧で見れるからね。といっても、新しく入手した素材で作れる護石の情報は、一度護石屋に持ってこないと分からないからね。新しい素材が手に入ったら来るといいよ」
「分かった!」
「それと、これから海に行くんだろう?」
「うん。その予定だけど……」
「ならこれを買っておくといいよ」

 そう言って彼女が出したのが、『海中の護石』というものだった。

「これは……?」
「これが無いと海の中で呼吸が出来ないだろう?」
「そうなの!?」
「そうだよ。陸上の生き物が海とかに行く場合はこういう護石をつけて行かないといけないからね」
「分かった! 2人とも、買った?」
「買った」
「買ったよー」

 流石2人だ。早い。

 私も自分の分を購入して、装備する。

「それじゃあ行っていい?」
「急ぐわよ!」
「大丈夫ー!」
「おばあちゃん! ありがとー!」
「どういたしまして、気を付けてね」
「うーん!」

 私は護石屋を飛び出し、次の街へ急ぐ。



 道中は色々なドウブツやサカナなんかも見つけた。あれもプレイヤーなのかな。

 岩山は気が付いたら荒野になっていた。

「この道であってるの?」
「ぎゃばばぶべ!?」

 ぱん!

「あ」

 いつものごとく私の速度でモンスターを弾き飛ばす。今のは結構大きかったからトロールとかかな? あんまりゲームをやらないからわかんないけど。

「他のプレイヤーに当たらないように気をつけなさいよー」
「大丈夫だって」
「護石のボードを見てるじゃない。そっちに集中してると……」

 私は護石の説明文を読んでいると、ふと前方に違和感を感じる。

「うわ!」
「おわあ!」

 私は危うくチーターに体当たりをするところだった。

「ごめんなさい!」
「気をつけろよー!」
「はーい!」

 私はそれだけ残すとチーターを置いて駆け抜ける。

「だから言ったじゃない」
「うーん。でも私だって護石の奴は見たいよ」

 走りながら前方に注意をしながらッて言うのは中々難しい。

 問題に答えを出してくれたのはアキだった。

「なら私が右とか言うからそれで走ればいいよー」
「いいの?」
「うん。あたしはほとんど見終わったからねー」
「ありがとー! じゃあよろしくー」

 私は護石の種類とか、こんなのが欲しいなって思う物に目をつけていく。

「右ー」
「ん」
「左ー」
「ん」
「左ー」
「ん」
「……三回回ってギョギョギョって言って」
「ん……ん? アキ?」

 今変なこと言わなかった?

「何でもないよー」
「もしかして暇?」
「そりゃあね。敵がポップしてもハルが倒してくれるしー」

 そう言ってるアキは退屈そうだ。話し相手になってあげたいけど……。そう思っていたら、丁度いいタイミングでナツキが声を上げる。

「終わったわ! 私の完璧な護石計画が完成したわ」
「お、ナツキ、丁度いい所に」
「ん? どうしたの?」
「なんかアキが暇そうだから話して上げててー。私も護石は見ておきたいから」
「そういうこと。いいわよ。私がドンと聞いて上げるわ」
「よろしくー」

 私はナツキに任せて見る。

「あたしはそんなつもりじゃ無かったんだけど……」
「それで、アキ! 何について話す!? エリンギの素晴らしさかしら? それともエリンギの生態? エリンギの美味しい食べ方まであるわよ!」
「エリンギしか話題はないのかなー!?」
「当然でしょう! 私の目的はキノコ、その前段階としてエリンギの素晴らしさを世界中に広めることよ!」
「そ、そうなんだー。頑張ってねー」
「任せなさい! 私なら……」

(うん。大丈夫そうだな)

 そう思った私は走りながら護石に集中する。場所によっては教科書を読みながら走るし、これで全然いい。


 5分後。

「それでねー。家で育ててるキノコが……」
「ナツキって家でキノコ栽培してるのー? すごいねー」
「でしょう? わた」

 ドン!

「ふごっ!!!???」

 私は護石ボードを見ていた為、何かにぶつかってしまった。

「きゃ! ハル! 大丈夫!?」
「あ、ごめんなさいハル! 私、全然前を見ていなくって……」
「だ、大丈夫だよ……。慣れてるから」

 1週間に1回は電柱にぶつかるし。というかアキのしゃべり方が委員長みたいでびっくりした。

「『癒せヒール』」
「ハルごめんね。私のせいよね。ごめんなさい」
「もう、アキらしくないよ? 痛くないから気にしないで。それよりも何にぶつかったのかな?」
「ハル……」
「アキ、ハルが良いって言ってるの。気を使わなくてもハルは気にしないわよ」
「その……ありがとうー」
「いいんだよ。アキには助けて貰ってるからね。それよりもこれって……」

 元に戻ったアキを見届けて、私は視線を前に戻す。

 私がぶつかった物を見ると、それは古びた宝箱の様な……。宝箱!?

「これって宝箱なんじゃない!?」
「え? そんな偶然ってあるのー!?」
「あるんじゃない!? っていうかここ何処?」

 私は周囲を見回すと、そこは荒野の中にポツンと存在する洞穴で、私は何も気が付かずにその中に走りこんできてしまっていた。

「どこって荒野の中の宝箱よ! 早速開けましょう!」
「そうだね! 場所なんてどこでもいいや! いい護石が入っているといいな!」
「楽しみー!」
「何が入ってるのかな!?」

 私がその宝箱を開けると中には……。
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