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13話 成長してる?
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私たちは最初の街、ベルニアスに戻っている最中だった。
「ねぇ、気になったことがあるんだけど」
「何?」
ナツキが私の上から話しかけてくる。
「貴方。成長してない?」
「ほんと!?」
「ちょっと! 速度をあげないでよ!」
「大丈夫! ちょっと川に見に行くだけだから!」
「そんなことしなくても成長してるって! 草の高さとかどう考えても低くなったように見えるでしょ!?」
「言われてみると……」
今までのこの草原の草は私の目線と同じくらいか、ほんの少し低い位だった。
それが今や私の視線はかなり遠くまで見渡せるようになっているのだ!
「ちょっと川に向かうね!」
「だから必要ないってええええええええ!!!」
「早く、早く」
「少しくらい落ち着きなさいよおおおお!!!」
それから少し走り、川のせせらぎが聞えてくる。
「あった!」
川に駆け寄り、私は自身の姿を見る。
「ふわああああああああああ。牙が少し生えてる……!」
「そんなに牙が欲しかったの?」
「うん! 私はイノシシが好きなの! うり坊も好きなんだけど、それでも立派な逞しいイノシシがいい!」
私は成長していたらしい。体は未だにうり坊らしい横線が入っているけど、体が少し成長し、牙も生えたことでいい感じのイノシシに近づいたのではないだろうか! そうに違いない!
「いいと思うわ」
「ナツキも見てみなよ。笠とかとか少し大きくなってるよ」
「本当!?」
私の上でナツキがもぞもぞを動いているのが分かる。だけど、その速度はかなりゆっくりで私の頭の前の方に来た。
「頭下げるね」
私は頭を下げて、彼女が川に映った自分の姿を確認しやすいようにする。
「ほんとだ! すごい! すごいすごい! 美しい艶も出来ているし、これが私が求めていた究極のキノコよ! あ」
「あ」
ポチャン
ナツキが自身の体をもっとよく見ようと体をのり出した拍子に川に落ちてしまう。
「……」
私はジーっと水面を見つめ続ける。
「キノコって浮かないっけ?」
「浮かないわよ! 早く助けて!」
私は鼻を彼女の方に差し出し、彼女が私の鼻に捕まる。
「大丈夫?」
「キノコで動けないから死ぬかと思った……」
「このゲームでも溺れて死ぬってあるの?」
「ないと思うけど、怖くて入れないわ」
「だよね」
私たちはそんな会話をしつつ、最初の街、ベルニアスに戻った。
依頼を報告し、ギルドを出る。良かった。これで初心者用のクエストはちゃんと終わったから、これで他の東西南北全ての街に行けるようになった。
でも、流石にそろそろナツキに言わなければならない。
「ふぅ~面白かった」
「いいわよね。次は何処に行く? 他のマップ? それともこのレベルなら次の街にいけるかしら?」
「あ、ごめん。私はそろそろ落ちなきゃいけないの」
「あ……そうよね。ごめんなさい」
ナツキは露骨に落ち込んだ感じになる。どうしてだろう。だって、
「明日はやらないの? 折角だから一緒にやろうよ」
「! いいの?」
「当然でしょ? あのトカゲサルを一緒にぶっ飛ばそうって決めたのもう忘れたの?」
「ううん。そんなことない。忘れてない!」
「じゃあ大丈夫だね。フレンド機能とかってあるのかな?」
「あるよ! 早速送るね!」
「うん」
『ナツキからフレンドコードが送られてきました。ナツキにフレンドコードを送り返しますか?』
「はいっと」
『ナツキとフレンドになりました』
「おーこうなるんだね」
ナツキの頭の上にある名前が緑色になった。
「……」
「ナツキ? どうしたの?」
いつもなら結構騒がしくなるんだけど、何だか少し大人しい。
「な、何でもないわよ! ……明日は?」
「なに?」
「明日は何時からやるの?」
「えーっと、明日は部活があるけど、急いで終わらせるから、多分9時くらいには出来ると思うよ!」
「9時ね……ふふ。分かったわ」
「うん。それじゃあまた明日ね」
「ええ、また明日」
私はログアウトをする。
「ふぅ……。楽しかったな。明日もまたナツキと一緒にいっぱい冒険しなくちゃ」
「ねぇ、気になったことがあるんだけど」
「何?」
ナツキが私の上から話しかけてくる。
「貴方。成長してない?」
「ほんと!?」
「ちょっと! 速度をあげないでよ!」
「大丈夫! ちょっと川に見に行くだけだから!」
「そんなことしなくても成長してるって! 草の高さとかどう考えても低くなったように見えるでしょ!?」
「言われてみると……」
今までのこの草原の草は私の目線と同じくらいか、ほんの少し低い位だった。
それが今や私の視線はかなり遠くまで見渡せるようになっているのだ!
「ちょっと川に向かうね!」
「だから必要ないってええええええええ!!!」
「早く、早く」
「少しくらい落ち着きなさいよおおおお!!!」
それから少し走り、川のせせらぎが聞えてくる。
「あった!」
川に駆け寄り、私は自身の姿を見る。
「ふわああああああああああ。牙が少し生えてる……!」
「そんなに牙が欲しかったの?」
「うん! 私はイノシシが好きなの! うり坊も好きなんだけど、それでも立派な逞しいイノシシがいい!」
私は成長していたらしい。体は未だにうり坊らしい横線が入っているけど、体が少し成長し、牙も生えたことでいい感じのイノシシに近づいたのではないだろうか! そうに違いない!
「いいと思うわ」
「ナツキも見てみなよ。笠とかとか少し大きくなってるよ」
「本当!?」
私の上でナツキがもぞもぞを動いているのが分かる。だけど、その速度はかなりゆっくりで私の頭の前の方に来た。
「頭下げるね」
私は頭を下げて、彼女が川に映った自分の姿を確認しやすいようにする。
「ほんとだ! すごい! すごいすごい! 美しい艶も出来ているし、これが私が求めていた究極のキノコよ! あ」
「あ」
ポチャン
ナツキが自身の体をもっとよく見ようと体をのり出した拍子に川に落ちてしまう。
「……」
私はジーっと水面を見つめ続ける。
「キノコって浮かないっけ?」
「浮かないわよ! 早く助けて!」
私は鼻を彼女の方に差し出し、彼女が私の鼻に捕まる。
「大丈夫?」
「キノコで動けないから死ぬかと思った……」
「このゲームでも溺れて死ぬってあるの?」
「ないと思うけど、怖くて入れないわ」
「だよね」
私たちはそんな会話をしつつ、最初の街、ベルニアスに戻った。
依頼を報告し、ギルドを出る。良かった。これで初心者用のクエストはちゃんと終わったから、これで他の東西南北全ての街に行けるようになった。
でも、流石にそろそろナツキに言わなければならない。
「ふぅ~面白かった」
「いいわよね。次は何処に行く? 他のマップ? それともこのレベルなら次の街にいけるかしら?」
「あ、ごめん。私はそろそろ落ちなきゃいけないの」
「あ……そうよね。ごめんなさい」
ナツキは露骨に落ち込んだ感じになる。どうしてだろう。だって、
「明日はやらないの? 折角だから一緒にやろうよ」
「! いいの?」
「当然でしょ? あのトカゲサルを一緒にぶっ飛ばそうって決めたのもう忘れたの?」
「ううん。そんなことない。忘れてない!」
「じゃあ大丈夫だね。フレンド機能とかってあるのかな?」
「あるよ! 早速送るね!」
「うん」
『ナツキからフレンドコードが送られてきました。ナツキにフレンドコードを送り返しますか?』
「はいっと」
『ナツキとフレンドになりました』
「おーこうなるんだね」
ナツキの頭の上にある名前が緑色になった。
「……」
「ナツキ? どうしたの?」
いつもなら結構騒がしくなるんだけど、何だか少し大人しい。
「な、何でもないわよ! ……明日は?」
「なに?」
「明日は何時からやるの?」
「えーっと、明日は部活があるけど、急いで終わらせるから、多分9時くらいには出来ると思うよ!」
「9時ね……ふふ。分かったわ」
「うん。それじゃあまた明日ね」
「ええ、また明日」
私はログアウトをする。
「ふぅ……。楽しかったな。明日もまたナツキと一緒にいっぱい冒険しなくちゃ」
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