外れスキル【レバレッジたったの1.0】を進化させ、俺はエルフ聖女と無双する ―冒険者パーティ追放勇者、バージョンアップの成り上がり―

緋色優希

文字の大きさ
80 / 169
第一章 外れスキル【レバレッジたったの1.0】

1-80 聖都の民

しおりを挟む
 そして、やがてうちのキャラバン、センティピートが陸を越えてやってきた。

 この百足、ようやく目的地に着いたか。

 キャラバンや馬車を入れ替えながら、実に長旅だったなあ。

 俺なんか地獄の鍛練付きだったから、この僅か数日の旅が今までの人生全てよりさえも永く感じたのだが。

 おまけに、まるで『盗賊討伐のための巡礼』のような旅だったのだ。

 くっそ、お前らだけ安全地帯で暢気に見物していやがって。

 まあ相手が相手なのだからキャラバンの人達はしょうがないとして、あの鬼教官どもはー。

 だが彼らは悠々とやってきて各自好き放題に言い放った。

「あら、勇者リクル。
 しばらくぶりねえ」

「もう!
 かれこれ三年ぶりくらいに感じたよ。
 昼寝は楽しかったかい?
 我が親愛なる師匠、魔法剣士エラヴィス閣下」

「うふ、こうなってみると魔法剣の鍛錬も有意義だったという事で楽しかったでしょう」

「まあね、おかげさんでなんとかなったよ」

 それはもう、えらい事スパルタで容赦のない修行だったがな。

 この人が稽古をつけてくれるようになったのは、割とここ最近なんだけど、課された鍛錬は一番きつかった。

 この上級冒険者のお姉さんったら駆け出し冒険者相手に欠片も容赦無しなんだもの。

 俺の破格な性能の導師謹製の槍が千回ほど捻じ曲がった気がする。

 そいつの強度や切れ味・刺突力なども今までとは比べ物にならない威力だった。

 おかげでこの新人冒険者の俺がドラゴンの大群とさえあっさりと渡り合えたのだ。

 だが、このエラヴィス師匠なら、あの程度の雑魚竜は一頭残らず一撃で倒したのと違うか。

 この人、魔法で飛び回るような凄い機動力をしているからな。
 確かに自分でおっしゃられるようにマジで天才なのだ。

「うむ。
 リクル、だいぶ力をつけたな。
 これも鍛錬の賜物というものだ」

「わかっているよ。
 俺の力の根源は、神髄はレバレッジ。
 その基本の元になる数字を上げていかないと、いくらブーストしたって限界があるんだから。
 マロウス、いつもありがとう」

「ほっほっほ。
 武器もなんとか使いこなしておるようじゃな」

「あんたは最高の聖女様のブラックスミスさ、導師エルバニッシュ」

 そして、あの野郎と来た日には、にたにたと笑っていやがるだけだ。

 くそう、俺が美味しく育っていくのがそんなに楽しいのかよ、先輩!

 そして姐御は馬車から降りると周りを見渡し、その聖都の惨状に嘆息した。

 石造りの、元は美しかっただろう街のあっちこっちが崩れ、ブレスで容赦なく焼き払われていた。

 ドラゴン二十二体の襲撃を受けたのだから、いくらなんでも無事に済むはずがない。

 ここはまだ全体が丈夫そうな石造りだからいいようなものの、それでも大被害を被っていた。

 きっと復興には各国が援助を惜しまないのだろうな。

 かなり派手にやられていたが、この聖教国全体から見たら、まだ微々たるものなのだろう。

「やれやれ、一体どうなっている。
 この聖都ともあろうものが」

「猊下!」

 呼びかける真摯な声音に振り向けば、なんというか神殿長とでもいうのか、そんな感じの格好をしている人が立っていた。

 もう老人というのに近い年齢で、神官の格好をしており頭には細かい網目のように編まれた半円状の白い帽子を被っている。

 いや、この人は偉い司祭、または大司祭という奴なのか。

 明らかに他の帯同してきた数人の似たような格好をしている人間とは格が違う感じだ。

 威厳を保つかのように金糸銀糸で激しく装飾されている格好もそれを表していた。
 まあ少なくともドラゴンと戦える装備じゃないな。

 なんというか、両手を組合せ祈るかのように体の前で組み合わせて姐御を見つめており、まるで母親に縋る幼子のようにしていた。

 そういや、俺も姐御の前でそういう事をやっていたんだっけなあ。

 だって先輩に殺されかかっていたんだもの。
 全部、あの狂人の落胤王子がいけない。

「おお、マルコス。久しいな」

 よかったね、マルコスさん。
 お墓の下で猊下を迎えるんじゃなくって。

 もう少しで洒落にならなかったところだよ。
 これも信仰の力とやらのお導きなのかねえ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勤続5年。1日15時間勤務。業務内容:戦闘ログ解析の俺。気づけばダンジョン配信界のスターになってました

厳座励主(ごんざれす)
ファンタジー
ダンジョン出現から六年。攻略をライブ配信し投げ銭を稼ぐストリーマーは、いまや新時代のヒーローだ。その舞台裏、ひたすらモンスターの戦闘映像を解析する男が一人。百万件を超える戦闘ログを叩き込んだ頭脳は、彼が偶然カメラを握った瞬間に覚醒する。 敵の挙動を完全に読み切る彼の視点は、まさに戦場の未来を映す神の映像。 配信は熱狂の渦に包まれ、世界のトップストリーマーから専属オファーが殺到する。 常人離れした読みを手にした無名の裏方は、再びダンジョンへ舞い戻る。 誰も死なせないために。 そして、封じた過去の記憶と向き合うために。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~

テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。 しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。 ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。 「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」 彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ―― 目が覚めると未知の洞窟にいた。 貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。 その中から現れたモノは…… 「えっ? 女の子???」 これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...