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第一章 外れスキル【レバレッジたったの1.0】
1-81 塔のある風景
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「ははあ、我らが聖女セラシア様。
よくぞ来ていただきました。
今、この件について祈りの塔を始めとする各地で一心に祈っておったばかりでございます」
よく見たら、同じような神官服を着た人達が両膝を着いていて、その数はどんどん増えてきていた。
こ、こいつら全員、あの危険なドラゴンとの戦闘の近くにいたのだな。
でなければ、こんなに早くはやってこれないだろう。
俺や先輩じゃあるまいに。
全員が神官服を着た者たちのようで、その中に一般人はいないようだったが。
さすがに姐御は呆れて、やや眉を吊り上げて彼らに言い放った。
「この痴れ者共が。
こういう時は安全なシェルターに避難せよと、私は教えなんだか!」
「で、ですが猊下。
私どもが祈らずに、一体どこの誰が民のために祈れましょう。
ましてやここには、あの」
ああ、そういや封印された邪神様がいらっしゃるものなあ。
そんな物が、どさくさに紛れて解き放たれるようになったら、世界中が大騒ぎになるようなえらい事だわ。
これはもう押し問答していたって埒が明きそうもない。
今も続々と集まってきている連中は、どうせどいつもこいつも同じような事を言うのに決まっている。
これがバルバディア聖教国っていう奴なのか。
「はいはい、もう姐御の負け。
ここにいるのは皆こういう人達なんだろうから、何を言ってもやる事は変わらないだろうよ。
あんたらの俺に対する仕打ちと一緒でな~。
それより、一体どうなっているのか聞いてくれよ。
あれだけのドラゴンがいたっていう事は、つまり」
それには姐御も渋い顔をした。
それは、とりもなおさず、おそらくはこの聖都にドラゴンの卵を大量に持ち込んできた連中がいるという事なのだ。
あるいは他の手段にてドラゴンを導きいれたか。
その方がもっとマズイがな。
「なんで、こんなにドラゴンがまとめていやがるんだよ。
こいつらはどこから来たんだ」
「だそうだ、マルコス」
「は、はあ。
あのセラシア姫、その方は?
先程ドラゴンと、たった御一人で戦い、見事に打ち破られたのは見ておりましたが」
いや、どこで見ていたんだ。
さっさと逃げろよ、危ないだろうが。
よかったな、巻き添えを食らわせないで済んで。
こいつらって要注意な連中だな。
姐御が怒った訳がよくわかった。
「ああ、こいつは今うちのパーティにいる若いのだ。
勇者リクルという。
まあたっぷりと鍛えておいたので、あの程度の蜥蜴の群れにそうそう後れを取る事はない。
まあうちの切り札と言えない事もない男だ。
話は聞かせてもらうぞ」
「おおお、『新しき勇者様』の誕生ですか、それは心強い。
あの異変についても是非【今代の勇者様】にも聞いていただかねば!」
「おい、姐御。
そこの不吉の使者は、一体何を言っているんだ?」
「ああ、我が叔母バルバディアの時にも、前回私が邪神を封じた時にも、我らが育てた勇者がパーティにおってなあ。
単にそれだけの話だ」
ちょっと待たんか、そこの千年おばん。
「待て、そんな話を俺は聞いていないぞ」
「懐かしいシチュエーションよのう。
歴代の勇者も皆そういう台詞を吐きよったものだが」
「ええっ」
も、もしかして、このおばさんって実はそこの先輩よりもヤバイ人だったのと違うんか~⁉
そして十分ほど歩いて我々は大神殿らしき場所へと到着した。
ここへ来るだろうと言う事はわかっていた。
何故なら、そこには高い塔があって、さっきの場所からもよく見えていたからだ。
こんな物をどうやって作ったものやら。
くそ、登ってみたい。
高いところは景色がいいから結構好きなのだ。
あそこからなら、きっとこの大聖都の雄大な景趣が一望できるに違いない。
俺の、その偉大な建造物に向けらえた羨望の眼を監視していた姐御が、このように釘を差してきた。
「リクル。塔に登るなら後にしろ。
マルコスの話が先だぞ」
「ほっほ、歴代勇者もあそこに上るのが好きだったと聞くがのう」
「リクルって、ああいうの好きそうよね」
「まあ景色は悪くはないし、上り下りは鍛錬にはもってこいなのかもしれん」
マロウスが不吉な事を言い出したので、俺は現実に返った。
「え。そうか、上まで辿り着くには、階段で登らないといけないんだね!」
「当り前だ。
なんだったら晩飯までに十往復くらいどうだ?」
「マロウス~、初めて登るんだから少しくらい景色を堪能させてくれよ。
今日はドラゴンの大群を倒したんだから、鍛錬はもういいだろ!」
だが俺達の先を歩くマルコスは楽し気に笑っていた。
「ははは、相も変わらず、姫様が率いるパーティは頼もしいのですな。
以前に邪神を再封印なされた時は、私が生まれる遥か前の事でございましたが」
なるほどなあ。
そういう話を聞くと、セラシアが英雄姫と呼ばれている意味がよくわかる。
彼女は神話の時代というか、伝説の中の英雄クラスの存在なのだ。
そもそも、血縁がこの聖都を開いた人間なのだし。
ああ、本人じゃなくて彼女バルバディアが邪神を封じた後に出来た街なのか。
よくぞ来ていただきました。
今、この件について祈りの塔を始めとする各地で一心に祈っておったばかりでございます」
よく見たら、同じような神官服を着た人達が両膝を着いていて、その数はどんどん増えてきていた。
こ、こいつら全員、あの危険なドラゴンとの戦闘の近くにいたのだな。
でなければ、こんなに早くはやってこれないだろう。
俺や先輩じゃあるまいに。
全員が神官服を着た者たちのようで、その中に一般人はいないようだったが。
さすがに姐御は呆れて、やや眉を吊り上げて彼らに言い放った。
「この痴れ者共が。
こういう時は安全なシェルターに避難せよと、私は教えなんだか!」
「で、ですが猊下。
私どもが祈らずに、一体どこの誰が民のために祈れましょう。
ましてやここには、あの」
ああ、そういや封印された邪神様がいらっしゃるものなあ。
そんな物が、どさくさに紛れて解き放たれるようになったら、世界中が大騒ぎになるようなえらい事だわ。
これはもう押し問答していたって埒が明きそうもない。
今も続々と集まってきている連中は、どうせどいつもこいつも同じような事を言うのに決まっている。
これがバルバディア聖教国っていう奴なのか。
「はいはい、もう姐御の負け。
ここにいるのは皆こういう人達なんだろうから、何を言ってもやる事は変わらないだろうよ。
あんたらの俺に対する仕打ちと一緒でな~。
それより、一体どうなっているのか聞いてくれよ。
あれだけのドラゴンがいたっていう事は、つまり」
それには姐御も渋い顔をした。
それは、とりもなおさず、おそらくはこの聖都にドラゴンの卵を大量に持ち込んできた連中がいるという事なのだ。
あるいは他の手段にてドラゴンを導きいれたか。
その方がもっとマズイがな。
「なんで、こんなにドラゴンがまとめていやがるんだよ。
こいつらはどこから来たんだ」
「だそうだ、マルコス」
「は、はあ。
あのセラシア姫、その方は?
先程ドラゴンと、たった御一人で戦い、見事に打ち破られたのは見ておりましたが」
いや、どこで見ていたんだ。
さっさと逃げろよ、危ないだろうが。
よかったな、巻き添えを食らわせないで済んで。
こいつらって要注意な連中だな。
姐御が怒った訳がよくわかった。
「ああ、こいつは今うちのパーティにいる若いのだ。
勇者リクルという。
まあたっぷりと鍛えておいたので、あの程度の蜥蜴の群れにそうそう後れを取る事はない。
まあうちの切り札と言えない事もない男だ。
話は聞かせてもらうぞ」
「おおお、『新しき勇者様』の誕生ですか、それは心強い。
あの異変についても是非【今代の勇者様】にも聞いていただかねば!」
「おい、姐御。
そこの不吉の使者は、一体何を言っているんだ?」
「ああ、我が叔母バルバディアの時にも、前回私が邪神を封じた時にも、我らが育てた勇者がパーティにおってなあ。
単にそれだけの話だ」
ちょっと待たんか、そこの千年おばん。
「待て、そんな話を俺は聞いていないぞ」
「懐かしいシチュエーションよのう。
歴代の勇者も皆そういう台詞を吐きよったものだが」
「ええっ」
も、もしかして、このおばさんって実はそこの先輩よりもヤバイ人だったのと違うんか~⁉
そして十分ほど歩いて我々は大神殿らしき場所へと到着した。
ここへ来るだろうと言う事はわかっていた。
何故なら、そこには高い塔があって、さっきの場所からもよく見えていたからだ。
こんな物をどうやって作ったものやら。
くそ、登ってみたい。
高いところは景色がいいから結構好きなのだ。
あそこからなら、きっとこの大聖都の雄大な景趣が一望できるに違いない。
俺の、その偉大な建造物に向けらえた羨望の眼を監視していた姐御が、このように釘を差してきた。
「リクル。塔に登るなら後にしろ。
マルコスの話が先だぞ」
「ほっほ、歴代勇者もあそこに上るのが好きだったと聞くがのう」
「リクルって、ああいうの好きそうよね」
「まあ景色は悪くはないし、上り下りは鍛錬にはもってこいなのかもしれん」
マロウスが不吉な事を言い出したので、俺は現実に返った。
「え。そうか、上まで辿り着くには、階段で登らないといけないんだね!」
「当り前だ。
なんだったら晩飯までに十往復くらいどうだ?」
「マロウス~、初めて登るんだから少しくらい景色を堪能させてくれよ。
今日はドラゴンの大群を倒したんだから、鍛錬はもういいだろ!」
だが俺達の先を歩くマルコスは楽し気に笑っていた。
「ははは、相も変わらず、姫様が率いるパーティは頼もしいのですな。
以前に邪神を再封印なされた時は、私が生まれる遥か前の事でございましたが」
なるほどなあ。
そういう話を聞くと、セラシアが英雄姫と呼ばれている意味がよくわかる。
彼女は神話の時代というか、伝説の中の英雄クラスの存在なのだ。
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