77 / 169
第一章 外れスキル【レバレッジたったの1.0】
1-77 バルバディア聖教国の『勇者歓迎式』
しおりを挟む
「やっと聖教国まで到着したのか~。
つ、辛かった」
「へえ、あの程度でかい?」
「うるさいな、先輩。あんたが一番俺を殺しにかかってきていたんだろうが。
みんなも見て見ぬ振りをしているし~」
「だって、今の君がどれだけ固いのか確認しておかないと、この先にどれだけ美味しくなったのかわからないじゃないか」
「やかましいっ」
「リクル、何事も鍛錬だぞ」
「マロウス!」
もうバルバディア聖教国は目前と言ってよかったのだが、俺はもうボロボロだった。
こいつらも道中暇だとみえて、全員で俺の鍛錬にかかってきやがった。
こちとら、ただの新人冒険者なのだが。
その中でも嬉しそうに、俺の限界を見極めようとしていた先輩。
王の落胤だろうがなんだろうが構わない。
こいつはいつか必ず俺の手で殺す。
なんだかもう、最初の頃に比べて立場が反対になってしまってきている。
それさえも、もしかしたらこいつの策略なのか。
認めるのは癪なのだが、こいつって頭がいい。
まあ落胤とはいえ、国王の実の息子で本人も実力で伯爵までなりあがった貴族なのだからな。
他所の国では、落胤という事で甘やかされて親の七光りで公爵あたりに収まるような奴もいるとは聞くが、こいつはそんな殊勝な玉じゃない。
そして俺が奴に対して、その憎悪を膨れ上がらせればするほど、奴は変態的に嬉しそうにしている。
おそらく股間を大きく膨らませながら。
駄目だ、やっぱりこの人ってキモイわ。
「うむ。【レバレッジまだまだこれから10.0】か。
ようやく一つ上がったな。
あれだけ扱いてやったものを。
お前、のんびり屋さんだね」
「姐御、お陰様で【バージョン上昇補正×4】が付きましたよ!
もっともバージョンが二桁までいったんで、またバージョンが上がりにくくなってますがね!」
「そうか、鍛錬はもっと厳しくしなくてはいかんのかな」
「鬼か~。このサド聖女!」
「忘れたか、あのブライアンの事を。
上級チームに入ったなら、まあこんなものよ」
くそう、この完全に覚悟を決めてしまっている聖女に何を言っても無駄だったか。
あの拳骨の鬼であるブライアンが今は天使のように思えてくるぜ。
ああ、もう彼は死んでしまったから本当に天使様になってしまったのかもしれないな。
でも、もういいや。
俺はなんとか生き残ったんだし、目的地まではもう後少しだ。
ここまで来るのにどれだけ盗賊と戦わされてきたものか。
王都からここまでの間に湧いて出た分は【全部俺一人で】な!
「この丘を越えたら、バルバディア聖教国が見えるんですよね!」
「ああ、そのはずだが、ちょっと待て。
何か騒がしい気配がしないか」
「ああ、そう言えば」
他の全員も顔を顰めている。
なんか不穏な気配がするな。
遠くから響く破壊音のような物も聞こえるような気がする。
ここのところ、上級冒険者五人がかりでフルボッコにされる鍛錬というか特訓の成果で、そういう物も彼ら並みに感じられるようになっていた。
そうしないと死んでしまうくらい、新人の俺には厳しい訓練だった。
まるで、俺をビシビシ鍛えてから美味しく喰おうとしている先輩に、うちのパーティ全員が加担するかのような様相だったのだから。
「全員、センティピード各員に伝達。
丘の前で止まり、防御態勢を取れ」
そして、巨大キャラバンのセンティピードを目的地目前で停止させた。
俺達のパーティだけは最速で前進し、そっと丘の向こうを伺うと、そこには何か大きな鳥のような物がたくさん飛んでいた。
だが、そいつは明らかに火を噴いている。あれは。
「ほう。ドラゴンじゃな」
「しかも一匹ではないぞ」
「ひゃああ、実に壮観ねえ」
「なるほど、鍛錬の相手にはピッタリの相手だな」
おい、そこの涼しい顔をしているビーストベアー。
あんたが体力鍛錬で一番俺を扱いていたよな。
その『相手』になるというのは、まさかこの俺ではないんだろうなあ。
そして、先輩などはこうだ。
「へえ、美味しそうじゃないか。
いや大猟だなあ」
もうヤダ、こいつの相手は。
ドラゴンさん、出来たらこいつを仕留めてくれ。
まあダンジョンの踏破者を相手にするのは、ドラゴン達にだって荷が重いのかもしれんけどなあ。
「えーと、念のために訊いておきたいのですが」
「うむ、聞くまでもないぞ。
リクルよ、お前が一番槍だ」
「確かに俺は槍を持っていますけど、二番槍はあるんでしょうね」
「はて、お前以外に得物として槍を持っておる者がおるのかのう」
「す、すぐに作って、バニッシュ導師!
エルバニッシュならできますって」
「あんたが行かなきゃ鍛錬にならないでしょうに。
ちょういどいいから、あんた一人でドラゴンを狩って勇者リクルの名を轟かせなさい。
魔法剣の修行の成果が見たいわ」
「エラヴィス~」
「行かないなら君の方を喰っちゃおうかな。
せっかく、この俺がドラゴンなんていい物を譲ってやると、気前のいい事を言っているのにさあ」
「そんな先輩からの、ありがたい贈り物はいらないのですがね!」
だが、キャラバンの人達の「つべこべ言わずにとっとと行って来いよ、勇者リクル」みたいな視線が痛い。
ちっくしょう、あの人達だって俺が毎日半死半生の目に遭わされていたのは見ていたでしょうに~。
まあ確かにあれがいると、キャラバンは聖都に入れないで、ここにずっと足止めだからな。
「くっそう、やってやっらあ~。
あんたら全員覚えておけよ。
ようく目を見開いて拝みやがれ。
この勇者リクル、一世一代の万歳突撃を見せてやらあ!」
つ、辛かった」
「へえ、あの程度でかい?」
「うるさいな、先輩。あんたが一番俺を殺しにかかってきていたんだろうが。
みんなも見て見ぬ振りをしているし~」
「だって、今の君がどれだけ固いのか確認しておかないと、この先にどれだけ美味しくなったのかわからないじゃないか」
「やかましいっ」
「リクル、何事も鍛錬だぞ」
「マロウス!」
もうバルバディア聖教国は目前と言ってよかったのだが、俺はもうボロボロだった。
こいつらも道中暇だとみえて、全員で俺の鍛錬にかかってきやがった。
こちとら、ただの新人冒険者なのだが。
その中でも嬉しそうに、俺の限界を見極めようとしていた先輩。
王の落胤だろうがなんだろうが構わない。
こいつはいつか必ず俺の手で殺す。
なんだかもう、最初の頃に比べて立場が反対になってしまってきている。
それさえも、もしかしたらこいつの策略なのか。
認めるのは癪なのだが、こいつって頭がいい。
まあ落胤とはいえ、国王の実の息子で本人も実力で伯爵までなりあがった貴族なのだからな。
他所の国では、落胤という事で甘やかされて親の七光りで公爵あたりに収まるような奴もいるとは聞くが、こいつはそんな殊勝な玉じゃない。
そして俺が奴に対して、その憎悪を膨れ上がらせればするほど、奴は変態的に嬉しそうにしている。
おそらく股間を大きく膨らませながら。
駄目だ、やっぱりこの人ってキモイわ。
「うむ。【レバレッジまだまだこれから10.0】か。
ようやく一つ上がったな。
あれだけ扱いてやったものを。
お前、のんびり屋さんだね」
「姐御、お陰様で【バージョン上昇補正×4】が付きましたよ!
もっともバージョンが二桁までいったんで、またバージョンが上がりにくくなってますがね!」
「そうか、鍛錬はもっと厳しくしなくてはいかんのかな」
「鬼か~。このサド聖女!」
「忘れたか、あのブライアンの事を。
上級チームに入ったなら、まあこんなものよ」
くそう、この完全に覚悟を決めてしまっている聖女に何を言っても無駄だったか。
あの拳骨の鬼であるブライアンが今は天使のように思えてくるぜ。
ああ、もう彼は死んでしまったから本当に天使様になってしまったのかもしれないな。
でも、もういいや。
俺はなんとか生き残ったんだし、目的地まではもう後少しだ。
ここまで来るのにどれだけ盗賊と戦わされてきたものか。
王都からここまでの間に湧いて出た分は【全部俺一人で】な!
「この丘を越えたら、バルバディア聖教国が見えるんですよね!」
「ああ、そのはずだが、ちょっと待て。
何か騒がしい気配がしないか」
「ああ、そう言えば」
他の全員も顔を顰めている。
なんか不穏な気配がするな。
遠くから響く破壊音のような物も聞こえるような気がする。
ここのところ、上級冒険者五人がかりでフルボッコにされる鍛錬というか特訓の成果で、そういう物も彼ら並みに感じられるようになっていた。
そうしないと死んでしまうくらい、新人の俺には厳しい訓練だった。
まるで、俺をビシビシ鍛えてから美味しく喰おうとしている先輩に、うちのパーティ全員が加担するかのような様相だったのだから。
「全員、センティピード各員に伝達。
丘の前で止まり、防御態勢を取れ」
そして、巨大キャラバンのセンティピードを目的地目前で停止させた。
俺達のパーティだけは最速で前進し、そっと丘の向こうを伺うと、そこには何か大きな鳥のような物がたくさん飛んでいた。
だが、そいつは明らかに火を噴いている。あれは。
「ほう。ドラゴンじゃな」
「しかも一匹ではないぞ」
「ひゃああ、実に壮観ねえ」
「なるほど、鍛錬の相手にはピッタリの相手だな」
おい、そこの涼しい顔をしているビーストベアー。
あんたが体力鍛錬で一番俺を扱いていたよな。
その『相手』になるというのは、まさかこの俺ではないんだろうなあ。
そして、先輩などはこうだ。
「へえ、美味しそうじゃないか。
いや大猟だなあ」
もうヤダ、こいつの相手は。
ドラゴンさん、出来たらこいつを仕留めてくれ。
まあダンジョンの踏破者を相手にするのは、ドラゴン達にだって荷が重いのかもしれんけどなあ。
「えーと、念のために訊いておきたいのですが」
「うむ、聞くまでもないぞ。
リクルよ、お前が一番槍だ」
「確かに俺は槍を持っていますけど、二番槍はあるんでしょうね」
「はて、お前以外に得物として槍を持っておる者がおるのかのう」
「す、すぐに作って、バニッシュ導師!
エルバニッシュならできますって」
「あんたが行かなきゃ鍛錬にならないでしょうに。
ちょういどいいから、あんた一人でドラゴンを狩って勇者リクルの名を轟かせなさい。
魔法剣の修行の成果が見たいわ」
「エラヴィス~」
「行かないなら君の方を喰っちゃおうかな。
せっかく、この俺がドラゴンなんていい物を譲ってやると、気前のいい事を言っているのにさあ」
「そんな先輩からの、ありがたい贈り物はいらないのですがね!」
だが、キャラバンの人達の「つべこべ言わずにとっとと行って来いよ、勇者リクル」みたいな視線が痛い。
ちっくしょう、あの人達だって俺が毎日半死半生の目に遭わされていたのは見ていたでしょうに~。
まあ確かにあれがいると、キャラバンは聖都に入れないで、ここにずっと足止めだからな。
「くっそう、やってやっらあ~。
あんたら全員覚えておけよ。
ようく目を見開いて拝みやがれ。
この勇者リクル、一世一代の万歳突撃を見せてやらあ!」
0
あなたにおすすめの小説
勤続5年。1日15時間勤務。業務内容:戦闘ログ解析の俺。気づけばダンジョン配信界のスターになってました
厳座励主(ごんざれす)
ファンタジー
ダンジョン出現から六年。攻略をライブ配信し投げ銭を稼ぐストリーマーは、いまや新時代のヒーローだ。その舞台裏、ひたすらモンスターの戦闘映像を解析する男が一人。百万件を超える戦闘ログを叩き込んだ頭脳は、彼が偶然カメラを握った瞬間に覚醒する。
敵の挙動を完全に読み切る彼の視点は、まさに戦場の未来を映す神の映像。
配信は熱狂の渦に包まれ、世界のトップストリーマーから専属オファーが殺到する。
常人離れした読みを手にした無名の裏方は、再びダンジョンへ舞い戻る。
誰も死なせないために。
そして、封じた過去の記憶と向き合うために。
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~
テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。
しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。
ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。
「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」
彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ――
目が覚めると未知の洞窟にいた。
貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。
その中から現れたモノは……
「えっ? 女の子???」
これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!
おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。
ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。
過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。
ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。
世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。
やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。
至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる