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第一章 外れスキル【レバレッジたったの1.0】
1-77 バルバディア聖教国の『勇者歓迎式』
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「やっと聖教国まで到着したのか~。
つ、辛かった」
「へえ、あの程度でかい?」
「うるさいな、先輩。あんたが一番俺を殺しにかかってきていたんだろうが。
みんなも見て見ぬ振りをしているし~」
「だって、今の君がどれだけ固いのか確認しておかないと、この先にどれだけ美味しくなったのかわからないじゃないか」
「やかましいっ」
「リクル、何事も鍛錬だぞ」
「マロウス!」
もうバルバディア聖教国は目前と言ってよかったのだが、俺はもうボロボロだった。
こいつらも道中暇だとみえて、全員で俺の鍛錬にかかってきやがった。
こちとら、ただの新人冒険者なのだが。
その中でも嬉しそうに、俺の限界を見極めようとしていた先輩。
王の落胤だろうがなんだろうが構わない。
こいつはいつか必ず俺の手で殺す。
なんだかもう、最初の頃に比べて立場が反対になってしまってきている。
それさえも、もしかしたらこいつの策略なのか。
認めるのは癪なのだが、こいつって頭がいい。
まあ落胤とはいえ、国王の実の息子で本人も実力で伯爵までなりあがった貴族なのだからな。
他所の国では、落胤という事で甘やかされて親の七光りで公爵あたりに収まるような奴もいるとは聞くが、こいつはそんな殊勝な玉じゃない。
そして俺が奴に対して、その憎悪を膨れ上がらせればするほど、奴は変態的に嬉しそうにしている。
おそらく股間を大きく膨らませながら。
駄目だ、やっぱりこの人ってキモイわ。
「うむ。【レバレッジまだまだこれから10.0】か。
ようやく一つ上がったな。
あれだけ扱いてやったものを。
お前、のんびり屋さんだね」
「姐御、お陰様で【バージョン上昇補正×4】が付きましたよ!
もっともバージョンが二桁までいったんで、またバージョンが上がりにくくなってますがね!」
「そうか、鍛錬はもっと厳しくしなくてはいかんのかな」
「鬼か~。このサド聖女!」
「忘れたか、あのブライアンの事を。
上級チームに入ったなら、まあこんなものよ」
くそう、この完全に覚悟を決めてしまっている聖女に何を言っても無駄だったか。
あの拳骨の鬼であるブライアンが今は天使のように思えてくるぜ。
ああ、もう彼は死んでしまったから本当に天使様になってしまったのかもしれないな。
でも、もういいや。
俺はなんとか生き残ったんだし、目的地まではもう後少しだ。
ここまで来るのにどれだけ盗賊と戦わされてきたものか。
王都からここまでの間に湧いて出た分は【全部俺一人で】な!
「この丘を越えたら、バルバディア聖教国が見えるんですよね!」
「ああ、そのはずだが、ちょっと待て。
何か騒がしい気配がしないか」
「ああ、そう言えば」
他の全員も顔を顰めている。
なんか不穏な気配がするな。
遠くから響く破壊音のような物も聞こえるような気がする。
ここのところ、上級冒険者五人がかりでフルボッコにされる鍛錬というか特訓の成果で、そういう物も彼ら並みに感じられるようになっていた。
そうしないと死んでしまうくらい、新人の俺には厳しい訓練だった。
まるで、俺をビシビシ鍛えてから美味しく喰おうとしている先輩に、うちのパーティ全員が加担するかのような様相だったのだから。
「全員、センティピード各員に伝達。
丘の前で止まり、防御態勢を取れ」
そして、巨大キャラバンのセンティピードを目的地目前で停止させた。
俺達のパーティだけは最速で前進し、そっと丘の向こうを伺うと、そこには何か大きな鳥のような物がたくさん飛んでいた。
だが、そいつは明らかに火を噴いている。あれは。
「ほう。ドラゴンじゃな」
「しかも一匹ではないぞ」
「ひゃああ、実に壮観ねえ」
「なるほど、鍛錬の相手にはピッタリの相手だな」
おい、そこの涼しい顔をしているビーストベアー。
あんたが体力鍛錬で一番俺を扱いていたよな。
その『相手』になるというのは、まさかこの俺ではないんだろうなあ。
そして、先輩などはこうだ。
「へえ、美味しそうじゃないか。
いや大猟だなあ」
もうヤダ、こいつの相手は。
ドラゴンさん、出来たらこいつを仕留めてくれ。
まあダンジョンの踏破者を相手にするのは、ドラゴン達にだって荷が重いのかもしれんけどなあ。
「えーと、念のために訊いておきたいのですが」
「うむ、聞くまでもないぞ。
リクルよ、お前が一番槍だ」
「確かに俺は槍を持っていますけど、二番槍はあるんでしょうね」
「はて、お前以外に得物として槍を持っておる者がおるのかのう」
「す、すぐに作って、バニッシュ導師!
エルバニッシュならできますって」
「あんたが行かなきゃ鍛錬にならないでしょうに。
ちょういどいいから、あんた一人でドラゴンを狩って勇者リクルの名を轟かせなさい。
魔法剣の修行の成果が見たいわ」
「エラヴィス~」
「行かないなら君の方を喰っちゃおうかな。
せっかく、この俺がドラゴンなんていい物を譲ってやると、気前のいい事を言っているのにさあ」
「そんな先輩からの、ありがたい贈り物はいらないのですがね!」
だが、キャラバンの人達の「つべこべ言わずにとっとと行って来いよ、勇者リクル」みたいな視線が痛い。
ちっくしょう、あの人達だって俺が毎日半死半生の目に遭わされていたのは見ていたでしょうに~。
まあ確かにあれがいると、キャラバンは聖都に入れないで、ここにずっと足止めだからな。
「くっそう、やってやっらあ~。
あんたら全員覚えておけよ。
ようく目を見開いて拝みやがれ。
この勇者リクル、一世一代の万歳突撃を見せてやらあ!」
つ、辛かった」
「へえ、あの程度でかい?」
「うるさいな、先輩。あんたが一番俺を殺しにかかってきていたんだろうが。
みんなも見て見ぬ振りをしているし~」
「だって、今の君がどれだけ固いのか確認しておかないと、この先にどれだけ美味しくなったのかわからないじゃないか」
「やかましいっ」
「リクル、何事も鍛錬だぞ」
「マロウス!」
もうバルバディア聖教国は目前と言ってよかったのだが、俺はもうボロボロだった。
こいつらも道中暇だとみえて、全員で俺の鍛錬にかかってきやがった。
こちとら、ただの新人冒険者なのだが。
その中でも嬉しそうに、俺の限界を見極めようとしていた先輩。
王の落胤だろうがなんだろうが構わない。
こいつはいつか必ず俺の手で殺す。
なんだかもう、最初の頃に比べて立場が反対になってしまってきている。
それさえも、もしかしたらこいつの策略なのか。
認めるのは癪なのだが、こいつって頭がいい。
まあ落胤とはいえ、国王の実の息子で本人も実力で伯爵までなりあがった貴族なのだからな。
他所の国では、落胤という事で甘やかされて親の七光りで公爵あたりに収まるような奴もいるとは聞くが、こいつはそんな殊勝な玉じゃない。
そして俺が奴に対して、その憎悪を膨れ上がらせればするほど、奴は変態的に嬉しそうにしている。
おそらく股間を大きく膨らませながら。
駄目だ、やっぱりこの人ってキモイわ。
「うむ。【レバレッジまだまだこれから10.0】か。
ようやく一つ上がったな。
あれだけ扱いてやったものを。
お前、のんびり屋さんだね」
「姐御、お陰様で【バージョン上昇補正×4】が付きましたよ!
もっともバージョンが二桁までいったんで、またバージョンが上がりにくくなってますがね!」
「そうか、鍛錬はもっと厳しくしなくてはいかんのかな」
「鬼か~。このサド聖女!」
「忘れたか、あのブライアンの事を。
上級チームに入ったなら、まあこんなものよ」
くそう、この完全に覚悟を決めてしまっている聖女に何を言っても無駄だったか。
あの拳骨の鬼であるブライアンが今は天使のように思えてくるぜ。
ああ、もう彼は死んでしまったから本当に天使様になってしまったのかもしれないな。
でも、もういいや。
俺はなんとか生き残ったんだし、目的地まではもう後少しだ。
ここまで来るのにどれだけ盗賊と戦わされてきたものか。
王都からここまでの間に湧いて出た分は【全部俺一人で】な!
「この丘を越えたら、バルバディア聖教国が見えるんですよね!」
「ああ、そのはずだが、ちょっと待て。
何か騒がしい気配がしないか」
「ああ、そう言えば」
他の全員も顔を顰めている。
なんか不穏な気配がするな。
遠くから響く破壊音のような物も聞こえるような気がする。
ここのところ、上級冒険者五人がかりでフルボッコにされる鍛錬というか特訓の成果で、そういう物も彼ら並みに感じられるようになっていた。
そうしないと死んでしまうくらい、新人の俺には厳しい訓練だった。
まるで、俺をビシビシ鍛えてから美味しく喰おうとしている先輩に、うちのパーティ全員が加担するかのような様相だったのだから。
「全員、センティピード各員に伝達。
丘の前で止まり、防御態勢を取れ」
そして、巨大キャラバンのセンティピードを目的地目前で停止させた。
俺達のパーティだけは最速で前進し、そっと丘の向こうを伺うと、そこには何か大きな鳥のような物がたくさん飛んでいた。
だが、そいつは明らかに火を噴いている。あれは。
「ほう。ドラゴンじゃな」
「しかも一匹ではないぞ」
「ひゃああ、実に壮観ねえ」
「なるほど、鍛錬の相手にはピッタリの相手だな」
おい、そこの涼しい顔をしているビーストベアー。
あんたが体力鍛錬で一番俺を扱いていたよな。
その『相手』になるというのは、まさかこの俺ではないんだろうなあ。
そして、先輩などはこうだ。
「へえ、美味しそうじゃないか。
いや大猟だなあ」
もうヤダ、こいつの相手は。
ドラゴンさん、出来たらこいつを仕留めてくれ。
まあダンジョンの踏破者を相手にするのは、ドラゴン達にだって荷が重いのかもしれんけどなあ。
「えーと、念のために訊いておきたいのですが」
「うむ、聞くまでもないぞ。
リクルよ、お前が一番槍だ」
「確かに俺は槍を持っていますけど、二番槍はあるんでしょうね」
「はて、お前以外に得物として槍を持っておる者がおるのかのう」
「す、すぐに作って、バニッシュ導師!
エルバニッシュならできますって」
「あんたが行かなきゃ鍛錬にならないでしょうに。
ちょういどいいから、あんた一人でドラゴンを狩って勇者リクルの名を轟かせなさい。
魔法剣の修行の成果が見たいわ」
「エラヴィス~」
「行かないなら君の方を喰っちゃおうかな。
せっかく、この俺がドラゴンなんていい物を譲ってやると、気前のいい事を言っているのにさあ」
「そんな先輩からの、ありがたい贈り物はいらないのですがね!」
だが、キャラバンの人達の「つべこべ言わずにとっとと行って来いよ、勇者リクル」みたいな視線が痛い。
ちっくしょう、あの人達だって俺が毎日半死半生の目に遭わされていたのは見ていたでしょうに~。
まあ確かにあれがいると、キャラバンは聖都に入れないで、ここにずっと足止めだからな。
「くっそう、やってやっらあ~。
あんたら全員覚えておけよ。
ようく目を見開いて拝みやがれ。
この勇者リクル、一世一代の万歳突撃を見せてやらあ!」
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