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第一章 外れスキル【レバレッジたったの1.0】
1-15 【レバレッジなんとか3.0】
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俺達は彼らと地上へ戻った。
彼らは自分達が倒した七十体のオークの魔石も俺達に提供してくれた。
そして怪我人二人は上級冒険者のメンバーが担いでくれたのだ。
まだ若そうな女性でも楽々人間一人を肩に担いでいる。
これが上級冒険者の力なのだ。
彼らは四人パーティで、マネージャーがエルフのセラシア、サブマネージャーはドワーフのバニッシュ、そして熊っぽい感じの獣人ビーストベアーのマロウス、人族の魔法剣士らしい若い女性のエラヴィスの四名のパーティだ。
さっき魔法で怪我人の治療をしてくれていたのはエラヴィスだ。
魔法剣士だとは思わなかった。
回復魔法を使っていたので、てっきり神官系の人間なのかと思ったのだ。
やはり魔法系の力を持った人間は凄い能力の持ち主だ。
入り口でオークの魔石は換金してやって、貰った銀貨六百三十五枚は全部、あいつらにくれてやった。
「え、君も怪我をしているのに、こんなにもらえない。
それにオークは殆ど君が倒したのに」
「いいから持っていけよ。
見た感じでは、まだ治療に随分と金がかかりそうだ。
おまけに装備も破損しまくっているだろう。
しばらく仕事もできそうにないから四人分の生活費もいるぞ。
それだけあっても足りるのかどうか怪しいもんだぜ。
俺の方はほんの掠り傷だし、回復魔法をかけてもらったから、もう治ったよ。
俺はまたオークでも狩ればいいさ」
まったく、碌に金もないくせいに俺もよくやるよ。
「あ、ありがとう」
「ああ、お前らはあまり無茶をするなよ。
ダンジョンは甘くない。
無理をすると、また今日みたいな事になる。
俺は少し名の知れた上級者パーティにいたが、それでも経営は甘くなかったんだからな。
とりあえず無事な二人でスライムでも狩れよ。
あれはなかなかコスパがいいぞ」
二人は何度も頭を下げて金を受け取ってくれ、仲間の元へ去っていった。
怪我人の二人は今ギルドの治療を受けている。
ギルドだって無料ではないが、街の医者よりは遥かに安いし回復魔法持ちの職員も揃えている。
それでもあの金では、一人が三か月入院するだけで殆ど残らない程度の金でしかない。
俺の実家の半年分の生活費だが、治療費はそれだけ高い。
そして協会なら、もし足りなくても借金という形で治療費を持ってもくれるはずだ。
借金を返し切れずに、返済のため無理して鬼籍に入ってしまう奴もいるのだが、まあそこは互助会という事で仕方があるまい。
俺達新人は互助会の会費も免除されている。
協会に会費を払うのは、余裕の出て来た中級冒険者になってからなのだ。
ああ、早く会費を払える身の上になってみたいぜ。
ふとみれば、セラシアが後ろから俺を見ているのに気が付く。
「どうしました?」
「いや、少年。
なかなか男前に頑張るじゃないかと思ってな」
「ああ、今の俺なら本当にあれくらいならすぐ稼げますから。
今日だって一人なら逃げきれていました。
いやあ、オークがあんなに湧いてくるものだったとは知らなかったなあ。
まだまだ知らない事が多いです。
勉強しないと生き残れない」
「怪我の治りが早いのだな。
回復魔法はかけたのだが、もう殆ど痕も残っていないね。
信じられないくらいの回復能力だ」
「ああ、俺って傷の治りが早いんですよ」
怪我の場合は「回復力が」三倍なのだった。
傷の回復時間がとかじゃない。
これが実は凄い事で、免疫を強くするような薬草を使って回復力にちょっとイロをつけてやるだけでも、物凄く治りが早いように感じるのだ。
それでも、せいぜい回復力が1・5倍といったあたりじゃないのだろうか。
回復力三倍は本当に凄い数字なのだ。
このまま行くと、もっとバージョンが進めば凄まじい回復力やトカゲの尻尾のような再生力が手に入るかもしれないな。
「そうか、頑張れ。
【レバレッジなんとか3.0】君」
彼女は去り際に俺の肩にその嫋やかな手を置き、そう耳元で息を吹きかけるように艶めかしく囁いていった。
驚愕する俺に悪戯な笑みとウインクを一つ残して。
「やれやれ、エルフっていうのは不思議な人達なんだなあ。
普通は人のスキルなんて見えやしないものなんだが。
まあスキルなんて各協会が宣伝のために公開しちまっているくらいだから、どうでもいいんだけどな」
今日は疲れたし、少し早いがもう宿に泊まる事にした。
昨日よりはもっとマシな普通の宿に。
そういや自分が先に倒していたオークの、銀貨二十枚分の魔石を換金してくるのを忘れた。
まだ金は残っていたからいいけど。
さすがに、あの金をサラシで巻いておかないと、おちおちと安心して寝てもいられないような木賃宿はもう御免だな。
今日は本当に疲れたので、心のバランスを取るために、銀貨一枚と大銅貨五枚の少しいい食事を奮発してから、【レバレッジなんとか3.0】のスキルについて視ていた。
基本機能にまた新しい物があった。
【レバレッジ対象拡大】
こいつは自分だけでなく、他人の能力も派生スキルによってアップできるようになったようだ。
対象は選べるらしい。
そりゃそうだよな。
敵も味方もお構いなしだったら、むしろ無い方がマシな機能になってしまう。
どうせなら、あのオークの大群に囲まれていた時にこの力があればなあ。
だがそれは今の俺にとっては皮肉な能力だった。
現状ではソロ冒険者の俺には不要な物だったのだから。
「ま、こいつがあれば有用だろうから、そのうちにどこかのパーティが受け入れてくれるかもな」
とりあえず、あの外れスキルの噂が薄まって、俺自身が十分に強い力を発揮できるようになったらという仮定での話なのだが。
これでも三人力ってところだろうから、十分心強いけどな。
元々、スパルタに鍛えられていただけあって、俺は自力が高いのだ。
スキルのバージョンが上がれば、かなりやれると思う。
あんな無限のオーク地獄なんかじゃなければな。
そして肝心の派生スキルの方なのだが、当然のように特殊技能スキルを選択した。
今日はあれのお蔭で命拾いをしたのだし。
まだ何があるかわかったものじゃない。
ありきたりな攻撃能力なんかなら後でもいい。
そして手に入れたものは【マグナム・ルーレット】という派生スキルだった。
こいつは、どうやら追加ブーストの能力のようだった。
能力を二倍(マグナム)から六倍まで上げてくれるようだ。
今なら最大で十八倍まで上がる勘定になる。
一回使うと十分で効果が切れる。
これは強引に本来のレバレッジを捻じ曲げて使用するので体に負担をかけるため、クールタイムが存在し、それは倍数により様々だ。
二倍ならば五分、三倍ならば十分、四倍ならば二十分、五倍なら三十分、六倍ならば一時間は使えない。
嬉しい事に、あの厄介なサイコロと違ってクールタイム以外のペナルティはないようだ。
おまけに特殊スキルを使っている時でも、それと平行して使用が可能だ。
そして他の人間に対しては同時に何人でも使える。
強いメンバーと一緒に戦うのなら、こいつでかなりいけそうな気がするな。
今もこのマグナム・ルーレットが自己回復能力をブーストしてくれたので、俺が本日負った怪我は疲労も含めて跡形もなくなってしまった。
彼らは自分達が倒した七十体のオークの魔石も俺達に提供してくれた。
そして怪我人二人は上級冒険者のメンバーが担いでくれたのだ。
まだ若そうな女性でも楽々人間一人を肩に担いでいる。
これが上級冒険者の力なのだ。
彼らは四人パーティで、マネージャーがエルフのセラシア、サブマネージャーはドワーフのバニッシュ、そして熊っぽい感じの獣人ビーストベアーのマロウス、人族の魔法剣士らしい若い女性のエラヴィスの四名のパーティだ。
さっき魔法で怪我人の治療をしてくれていたのはエラヴィスだ。
魔法剣士だとは思わなかった。
回復魔法を使っていたので、てっきり神官系の人間なのかと思ったのだ。
やはり魔法系の力を持った人間は凄い能力の持ち主だ。
入り口でオークの魔石は換金してやって、貰った銀貨六百三十五枚は全部、あいつらにくれてやった。
「え、君も怪我をしているのに、こんなにもらえない。
それにオークは殆ど君が倒したのに」
「いいから持っていけよ。
見た感じでは、まだ治療に随分と金がかかりそうだ。
おまけに装備も破損しまくっているだろう。
しばらく仕事もできそうにないから四人分の生活費もいるぞ。
それだけあっても足りるのかどうか怪しいもんだぜ。
俺の方はほんの掠り傷だし、回復魔法をかけてもらったから、もう治ったよ。
俺はまたオークでも狩ればいいさ」
まったく、碌に金もないくせいに俺もよくやるよ。
「あ、ありがとう」
「ああ、お前らはあまり無茶をするなよ。
ダンジョンは甘くない。
無理をすると、また今日みたいな事になる。
俺は少し名の知れた上級者パーティにいたが、それでも経営は甘くなかったんだからな。
とりあえず無事な二人でスライムでも狩れよ。
あれはなかなかコスパがいいぞ」
二人は何度も頭を下げて金を受け取ってくれ、仲間の元へ去っていった。
怪我人の二人は今ギルドの治療を受けている。
ギルドだって無料ではないが、街の医者よりは遥かに安いし回復魔法持ちの職員も揃えている。
それでもあの金では、一人が三か月入院するだけで殆ど残らない程度の金でしかない。
俺の実家の半年分の生活費だが、治療費はそれだけ高い。
そして協会なら、もし足りなくても借金という形で治療費を持ってもくれるはずだ。
借金を返し切れずに、返済のため無理して鬼籍に入ってしまう奴もいるのだが、まあそこは互助会という事で仕方があるまい。
俺達新人は互助会の会費も免除されている。
協会に会費を払うのは、余裕の出て来た中級冒険者になってからなのだ。
ああ、早く会費を払える身の上になってみたいぜ。
ふとみれば、セラシアが後ろから俺を見ているのに気が付く。
「どうしました?」
「いや、少年。
なかなか男前に頑張るじゃないかと思ってな」
「ああ、今の俺なら本当にあれくらいならすぐ稼げますから。
今日だって一人なら逃げきれていました。
いやあ、オークがあんなに湧いてくるものだったとは知らなかったなあ。
まだまだ知らない事が多いです。
勉強しないと生き残れない」
「怪我の治りが早いのだな。
回復魔法はかけたのだが、もう殆ど痕も残っていないね。
信じられないくらいの回復能力だ」
「ああ、俺って傷の治りが早いんですよ」
怪我の場合は「回復力が」三倍なのだった。
傷の回復時間がとかじゃない。
これが実は凄い事で、免疫を強くするような薬草を使って回復力にちょっとイロをつけてやるだけでも、物凄く治りが早いように感じるのだ。
それでも、せいぜい回復力が1・5倍といったあたりじゃないのだろうか。
回復力三倍は本当に凄い数字なのだ。
このまま行くと、もっとバージョンが進めば凄まじい回復力やトカゲの尻尾のような再生力が手に入るかもしれないな。
「そうか、頑張れ。
【レバレッジなんとか3.0】君」
彼女は去り際に俺の肩にその嫋やかな手を置き、そう耳元で息を吹きかけるように艶めかしく囁いていった。
驚愕する俺に悪戯な笑みとウインクを一つ残して。
「やれやれ、エルフっていうのは不思議な人達なんだなあ。
普通は人のスキルなんて見えやしないものなんだが。
まあスキルなんて各協会が宣伝のために公開しちまっているくらいだから、どうでもいいんだけどな」
今日は疲れたし、少し早いがもう宿に泊まる事にした。
昨日よりはもっとマシな普通の宿に。
そういや自分が先に倒していたオークの、銀貨二十枚分の魔石を換金してくるのを忘れた。
まだ金は残っていたからいいけど。
さすがに、あの金をサラシで巻いておかないと、おちおちと安心して寝てもいられないような木賃宿はもう御免だな。
今日は本当に疲れたので、心のバランスを取るために、銀貨一枚と大銅貨五枚の少しいい食事を奮発してから、【レバレッジなんとか3.0】のスキルについて視ていた。
基本機能にまた新しい物があった。
【レバレッジ対象拡大】
こいつは自分だけでなく、他人の能力も派生スキルによってアップできるようになったようだ。
対象は選べるらしい。
そりゃそうだよな。
敵も味方もお構いなしだったら、むしろ無い方がマシな機能になってしまう。
どうせなら、あのオークの大群に囲まれていた時にこの力があればなあ。
だがそれは今の俺にとっては皮肉な能力だった。
現状ではソロ冒険者の俺には不要な物だったのだから。
「ま、こいつがあれば有用だろうから、そのうちにどこかのパーティが受け入れてくれるかもな」
とりあえず、あの外れスキルの噂が薄まって、俺自身が十分に強い力を発揮できるようになったらという仮定での話なのだが。
これでも三人力ってところだろうから、十分心強いけどな。
元々、スパルタに鍛えられていただけあって、俺は自力が高いのだ。
スキルのバージョンが上がれば、かなりやれると思う。
あんな無限のオーク地獄なんかじゃなければな。
そして肝心の派生スキルの方なのだが、当然のように特殊技能スキルを選択した。
今日はあれのお蔭で命拾いをしたのだし。
まだ何があるかわかったものじゃない。
ありきたりな攻撃能力なんかなら後でもいい。
そして手に入れたものは【マグナム・ルーレット】という派生スキルだった。
こいつは、どうやら追加ブーストの能力のようだった。
能力を二倍(マグナム)から六倍まで上げてくれるようだ。
今なら最大で十八倍まで上がる勘定になる。
一回使うと十分で効果が切れる。
これは強引に本来のレバレッジを捻じ曲げて使用するので体に負担をかけるため、クールタイムが存在し、それは倍数により様々だ。
二倍ならば五分、三倍ならば十分、四倍ならば二十分、五倍なら三十分、六倍ならば一時間は使えない。
嬉しい事に、あの厄介なサイコロと違ってクールタイム以外のペナルティはないようだ。
おまけに特殊スキルを使っている時でも、それと平行して使用が可能だ。
そして他の人間に対しては同時に何人でも使える。
強いメンバーと一緒に戦うのなら、こいつでかなりいけそうな気がするな。
今もこのマグナム・ルーレットが自己回復能力をブーストしてくれたので、俺が本日負った怪我は疲労も含めて跡形もなくなってしまった。
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