神様の料理番

柊 ハルト

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バターの微笑み

07 ー 港街

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 夕飯はアレクセイに約束した通り、鰤を丸ごと使った鰤大根を披露してやった。文字通り、身もアラも使い切ったものだ。アラでもモツでも、下処理をしっかりするのがポイントだ。
 念のために肉料理も作ったのだが、鰤大根は皆に好評で、誠は内心ほっとしていた。
 部屋に戻り、風呂に入った後はアレクセイと夜の教会が待っている。アレクセイにも先に風呂に入ってもらい、身綺麗にした後で一緒に闇に潜った。
 とぷり、と暗闇から教会内部に侵入した。祭壇付近と通路にはポツリポツリと明かりが灯されていて、幻想的な雰囲気を作り出していた。
 誠は自分達の周りに結界を張り、防音対策を練った。

「やっぱスイール村の教会よりは広いんだな」
「この領は栄えているからな」

 二人で通路を並んで歩いていると、少しだけ結婚式の予行演習のような気分になってくる。そんなバカなことを考えていると、アレクセイは名前を呼んでから、自分の腕を少し曲げた。

「…腕を組めって?」
「ああ。君とこうして歩くのが、今から凄く楽しみだ」
「俺も同じこと、考えてたよ」

 誠がそう言うと、二人でくすくすと笑い合った。お互いこの雰囲気に、少し浮かれているのかもしれない。けれど、たまにはこんなバカをしても良いだろう。
 自然と歩みは遅くなり、祭壇の前に着くと、誠はアレクセイに体を押し付けてまだ笑っていた。
 ひとしきり笑うと、アレクセイから少し離れた。

「これから何をするんだ?」
「俺の本業」

 そう言って、バッグから空の皿を取り出して祭壇の上に置いた。そしてその上に次々に、スイーツを乗せていく。

「これが、神様の料理番の仕事。見てて」

 誠が手を合わせると、山になったスイーツは徐々に光の粒子となり、次々に宙へ消えていった。この作業を他人に見せることはない。見れるのは遠野の者だけだ。
 ただただ、アレクセイに自分というものを知って欲しい。誠がこの儀式をアレクセイに見せたのは、それが理由だった。

「…一瞬、君も消えるのかと思った」

 アレクセイは少し手を広げて誠を抱きしめようとする。途中で止まったのは、誠に触れても良いのかと逡巡したからか。
 誠はそんなアレクセイに頬を緩ませながら、自らその腕の中に収まった。

「消えるわけないよ」

 アレクセイの背中に腕を回し、自分の存在を主張する。

「帰ろう」

 誠は顔をあげ、アレクセイに微笑んだ。


 二人でベッドに潜り込む。どこかふわふわとした気分なのは、お互い様なのだろう。体勢を変えても、居心地の良い場所を見つけても、眠気は一向に襲ってはこない。代わりに、アレクセイの腕が誠を襲っていた。

「…擽ったいよ」
「君はまだ寝たくないのかと思ってな」

 アレクセイの声が誠の耳元で響いた。ついでに耳朶にキスを落とされ、声が漏れる。
 それは合図だった。
 唇を深く合わせ、互いの舌を絡め合う。じゅるりと舌と唾液を同時に啜られ、その音は誠の本能に火を点けた。
 アレクセイの指は誠の着ているパーカーのジッパーを下ろし、性急に脱がせていく。そして自分のシャツもキスを続けたまま脱いで、誠の前に素肌を晒していた。
 綺麗に色付いている牡丹の花が視界に映ると、誠はその花の輪郭を辿るようにアレクセイの胸元に指を滑らせた。

「擽ったいな」

 今度はアレクセイが文句を言う番だったが、誠はクスクスと笑いながらそのまま指を腹部に滑らせていく。アレクセイは誠の悪戯な指を捕まえると、口に含んで舌を這わせて遊びだす。薄灯に反射するアレクセイの舌が、何とも艶かしい。誠は自分のものが徐々に隆起していくのを自覚していた。

「アレクセイ…」

 名前を呼んだ声が掠れた。
 アレクセイは、分かっているとでも言うように、誠のスウェットを下着ごと下ろした。

「最後まではしないし、今はできないが…良いか?」
「ん…早く」
「…マコト、煽るな」

 布団を跳ね除け、アレクセイは誠を掻き抱いて深いキスをした。上顎を舐め上げると、今度は誠の喉にキスを落とす。そして首元にも触れると、所有印がある場所を大事そうに撫でた。

「ああ…こんなにもくっきりと出ているんだな」
「魔法だっけ…?」
「そうだ。けれど、俺から干渉はできなくなっている。マコト…もしかして、君の力か?」
「うん。最初何だか分からなかったから除けようと思ったけど、銀狼と繋がってると思ったら、ね。でも、俺からはアレクセイと繋がってるって分かるよ」

 誠はアレクセイに微笑むと、トライバル模様の狼を撫でた。すると狼は薄く光り、本来の役目を取り戻す。その感覚が分かったのか、アレクセイは尾を揺らした。

「…繋がりが、戻った」
「遮断してただけだからな。ん、やっぱ暖かい」

 本来の役目を取り戻し、肌に刻まれている狼も喜んでいるのだろうか。手で覆うと、甲をアレクセイにベロリと舐め上げられた。

「そっちの狼の相手も良いが、こっちの狼の相手もしてくれないか」
「何それ、ヤキモチ?」
「ああ。覚えておけ、マコト。ヴォルクの狼は、ツガイに対しては狭量になる」

 いきなり育ちかけていた起立を握られ、誠は声を上げた。ギラギラと光るアイスブルーは、熱く燃えている。アレクセイの指に脇腹をなぞられ、誠は更に声を上げた。
 体が敏感になっている。触れられるところ全部が、性感帯にでもなったようだ。アレクセイに性器同士を擦り付けられるたびに、段々と息が上がっていった。

「んぁ…」

 自分に覆い被さっている狼を受け入れるように、自然と足が開く。けれどアレクセイは誠の片足を抱えると、太腿にキスをしてから甘噛みをするだけだった。

「俺を受け入れてくれるのは嬉しいのだが、ダメだ、マコト。俺を誘惑するな」

 熱い吐息を吐きながら懇願するアレクセイの方が、よっぽど誠を誘惑している。アレクセイは誠の体を返して俯せにさせると、その上からまた覆い被さった。

「今日は太腿を貸してくれ。一緒に気持ち良くなろう」

 甘く低い声までが、誠を一気に快楽の海へ堕とす。狼ならマウントを取る行為だが、相手がアレクセイだというだけで、誠の本能はその行為を許していた。

「あっ…」

 アレクセイの指が、誠の性器の付け根と後孔の間辺りを押した。
 知らない刺激が誠の中を駆け巡る。思わず耳と尾が出てしまったが、アレクセイに尾の付け根を擽られ、それが快感に変わっていくのは時間の問題だった。
 尾をかき分けるように背骨に沿ってキスを落とされ、後孔の縁をなぞられる。反射的に尾でアレクセイの体を押しのけようとしてしまったが、鍛えられた体はびくともしなかった。

「悪戯好きな尾だな」

 狐耳の内側を舐められ、太腿を揃えるようにアレクセイに足を固定させられると、その太腿の付け根にぬるりとした太いものがゆっくりと差し込まれてきた。どくどくと脈打つそれは、アレクセイの性器だ。それに気付いたのは、先程指で押された部分を段差が通り抜けた時だった。

「んぅ…、あっ…」

 思わず腰が上がる。しかしアレクセイに腰を掴まれているので、自由になれるはずがなかった。
 そこを擦られるスピードが早くなる。耳に背後から熱い息がかかる。誠は揺さぶられながら、撫でられた後孔が疼いているのが自分でも分かってしまっていた。
 お互いの先走りが混ざり、にちゃにちゃという淫靡な音を部屋に響かせている。その音も、二人の官能を高める要因の一つにしかならなかった。
 アレクセイは誠と自分の性器が密着するように手を添えると、もっと大胆に腰を前後に動かしはじめた。
 誠は自分のものだとマーキングするように、アレクセイは先走りを、普段は隠されている部分に塗り込んでいるようだ。
 カリの段差と浮き出た血管で敏感な場所を擦られた誠は、自分のものとは思えない甘く強請るような声を止める術を知らない。身を任せたまま、二人は熱を高め合っていた。
 しばらくして、誠はアレクセイと同時に白濁を吐き出した。
 誠は先にドサリとベッドに沈み込んでしまった。膨れきった熱は弾けたが、埋み火はまだ体内で燻っている。一人では得られない高揚感と快楽、そして、欲望。爛れた行為だと思う反面、もっとこの体を貪って欲しい共思う。それを示すように、尾はアレクセイの腕に巻きついていた。
 アレクセイは山吹色の尾を潰さないよう気を付けながら、背後から誠を抱きしめて体を横向きにする。そしてうなじにキスをしながら、白濁を誠の薄い腹に伸ばして、更にマーキングをしていた。

「まだ、するの?」

 整わない息の中、誠は振り返る。見つめたアイスブルーは、ぎらついた欲望の炎を灯したままだ。アレクセイは誠の体調を考えて終わりにしようと言いたげだったが、その前に誠は自ら抱きつき、続きを求めた。
 二人の熱が再び燃えさかるのに、時間はかかるはずもなかった。
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