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33 臆病者
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「アリサ。俺を売るのか……。
いやいやいや、ちょっと待て。ここにルナセイラ第二王子殿下がいらっしゃるということは……。
アリサ! お前は王太子殿下から第二王子殿下に鞍替えしたのか?」
「は? 本当に判断力も語彙力もないクズバカールですわね。それが不敬罪に取られる恐れがあるとどうして考えが及ばないのでしょうか?」
不敬罪と言われたズバニールは目を見開いて固まり眼球だけ動かしてルナセイラの様子を見た。
そこには満面の笑顔を見せるルナセイラがいた。
「ひっ!!」
満面の笑顔なのに恐ろしさを感じ取ったズバニールはパレシャの後ろのノアルの後ろに隠れた。
「本当に君の兄なのかい? あまりにもひどすぎるような気がするが?」
ズバニールの行動に眉を寄せたルナセイラは遠慮ない質問をアリサにぶつける。
「まごうことなく双子ですの。信じられないかもしれませんけど。
ですが、ルナセイラ王子殿下の表情を正しく理解していたようで、少しホッとしましたわ」
「なるほど。社交界で必要な最低限の防衛本能は持ち合わせているようだね」
「女性を盾にしましたよ」
クソ真面目なテッドがノアルの後ろを睨んだ。
「ち、違う! テッドの手下の騎士の実力を見てやったんだ。ルナセイラ王子殿下の視線に負けないとはなかなか見どころがあるようだ」
ズバニールは震える手でノアルの背中をポンポンと叩く。
「手下……」
「ひっ!」
ズバニールは今度はテッドの睨みでノアルの後ろで顔まで隠した。
ノアルがテッドに向かい首を振り、嘆息したテッドが視線を落として落ち着こうとした。
「テッド様。語彙力の乏しいズバニールが不快なお気持ちにさせてしまい申し訳ございません」
「アリサ嬢が気にすることではないです。俺も大人気なかった。すみません」
「ならお互いに気にしないってことで。全てはズバニールの臆病と不勉強が原因だということにしよう」
「ふふふ。はい」
「はは。わかりました」
ルナセイラの仲介で穏便に済んだ。三人の声は聞こえないが先程の険のある笑顔でないと見たズバニールはノアルの後ろから半身だけ出した。
「私はそろそろ婚約者との時間にしたいのだがいいかな?」
愛おしさを隠そうともしない視線でアリサに尋ねた優しさが籠められた声は先程よりは大きく近くの者たちには充分に聞こえた。
「もちろ……」
「やはりルナセイラ第二王子殿下と恋仲じゃないかっ! 更にはすでに婚約だと! 俺は何も聞いていないぞ!」
アリサが承諾の意を伝えようとしたところにズバニールが被せる。
「婚約をする食事会への招待状がお父様のお名前でお部屋に届けられていたはずですが?」
「ぐっ!」
ズバニールは自分宛ての手紙など普段から一瞥もしない。
「直接声をかければいいではないかっ!」
「お母様が何度かお声掛けいたしましたが忙しいとおっしゃって立ち止まりもなさらなかったではありませんか?
わたくしやメイドや執事に対しては声をかけようとしただけで手を払う仕草で追い返しておりましたし」
「ぐぐぐぐぐ……」
ルナセイラは拳を口に当て笑いを隠そうとしておりテッドはズバニールの普段の様子を聞いて眉を寄せる。
「とういうわけで、滞り無く婚約は成立しておりますので、ズバニールが心配する必要はございません」
「兄に向かってなんだその態度は!!」
ズバニールは決め台詞がごとく指をズバーンとアリサに向けた。
パシン!
「いでっ!」
その手をノアルに叩き落とされた。
「貴様! 何をする!?」
「ズバニール。それは妹とはいえ淑女へ向けての態度ではないぞ。騎士の心得を持つノアルに指導してもらえて少しは紳士になれたかもしれないな」
隙かさずルナセイラがノアルのフォローをしたためズバニールはそれ以上はノアルに文句は言えない。
「それと、私とアリサは恋仲でも婚約者でもない。いうなれば義兄妹だ」
「は?」
「なにそれ?」
ズバニールとパレシャが呆けるのを無視してルナセイラはアリサに本物の笑顔を見せた。
「アリサ。あのような誤解を生むようだ。私のことは義兄と呼ぶように」
「わかりましたわ。お義兄様」
「お……おい。アリサ。俺たちは二人兄弟だぞ。それを義兄とはどういうことだ……?」
ズバニールは思わずおしりを抑えながら聞いた。
「ぶはっ!!」
隣りにいたノアルは耐えられずに吹き出しそれをきっかけに多くの笑いが溢れている。
ズバニールとパレシャだけが理解できずにキョロキョロと所在無げにしていた。
いやいやいや、ちょっと待て。ここにルナセイラ第二王子殿下がいらっしゃるということは……。
アリサ! お前は王太子殿下から第二王子殿下に鞍替えしたのか?」
「は? 本当に判断力も語彙力もないクズバカールですわね。それが不敬罪に取られる恐れがあるとどうして考えが及ばないのでしょうか?」
不敬罪と言われたズバニールは目を見開いて固まり眼球だけ動かしてルナセイラの様子を見た。
そこには満面の笑顔を見せるルナセイラがいた。
「ひっ!!」
満面の笑顔なのに恐ろしさを感じ取ったズバニールはパレシャの後ろのノアルの後ろに隠れた。
「本当に君の兄なのかい? あまりにもひどすぎるような気がするが?」
ズバニールの行動に眉を寄せたルナセイラは遠慮ない質問をアリサにぶつける。
「まごうことなく双子ですの。信じられないかもしれませんけど。
ですが、ルナセイラ王子殿下の表情を正しく理解していたようで、少しホッとしましたわ」
「なるほど。社交界で必要な最低限の防衛本能は持ち合わせているようだね」
「女性を盾にしましたよ」
クソ真面目なテッドがノアルの後ろを睨んだ。
「ち、違う! テッドの手下の騎士の実力を見てやったんだ。ルナセイラ王子殿下の視線に負けないとはなかなか見どころがあるようだ」
ズバニールは震える手でノアルの背中をポンポンと叩く。
「手下……」
「ひっ!」
ズバニールは今度はテッドの睨みでノアルの後ろで顔まで隠した。
ノアルがテッドに向かい首を振り、嘆息したテッドが視線を落として落ち着こうとした。
「テッド様。語彙力の乏しいズバニールが不快なお気持ちにさせてしまい申し訳ございません」
「アリサ嬢が気にすることではないです。俺も大人気なかった。すみません」
「ならお互いに気にしないってことで。全てはズバニールの臆病と不勉強が原因だということにしよう」
「ふふふ。はい」
「はは。わかりました」
ルナセイラの仲介で穏便に済んだ。三人の声は聞こえないが先程の険のある笑顔でないと見たズバニールはノアルの後ろから半身だけ出した。
「私はそろそろ婚約者との時間にしたいのだがいいかな?」
愛おしさを隠そうともしない視線でアリサに尋ねた優しさが籠められた声は先程よりは大きく近くの者たちには充分に聞こえた。
「もちろ……」
「やはりルナセイラ第二王子殿下と恋仲じゃないかっ! 更にはすでに婚約だと! 俺は何も聞いていないぞ!」
アリサが承諾の意を伝えようとしたところにズバニールが被せる。
「婚約をする食事会への招待状がお父様のお名前でお部屋に届けられていたはずですが?」
「ぐっ!」
ズバニールは自分宛ての手紙など普段から一瞥もしない。
「直接声をかければいいではないかっ!」
「お母様が何度かお声掛けいたしましたが忙しいとおっしゃって立ち止まりもなさらなかったではありませんか?
わたくしやメイドや執事に対しては声をかけようとしただけで手を払う仕草で追い返しておりましたし」
「ぐぐぐぐぐ……」
ルナセイラは拳を口に当て笑いを隠そうとしておりテッドはズバニールの普段の様子を聞いて眉を寄せる。
「とういうわけで、滞り無く婚約は成立しておりますので、ズバニールが心配する必要はございません」
「兄に向かってなんだその態度は!!」
ズバニールは決め台詞がごとく指をズバーンとアリサに向けた。
パシン!
「いでっ!」
その手をノアルに叩き落とされた。
「貴様! 何をする!?」
「ズバニール。それは妹とはいえ淑女へ向けての態度ではないぞ。騎士の心得を持つノアルに指導してもらえて少しは紳士になれたかもしれないな」
隙かさずルナセイラがノアルのフォローをしたためズバニールはそれ以上はノアルに文句は言えない。
「それと、私とアリサは恋仲でも婚約者でもない。いうなれば義兄妹だ」
「は?」
「なにそれ?」
ズバニールとパレシャが呆けるのを無視してルナセイラはアリサに本物の笑顔を見せた。
「アリサ。あのような誤解を生むようだ。私のことは義兄と呼ぶように」
「わかりましたわ。お義兄様」
「お……おい。アリサ。俺たちは二人兄弟だぞ。それを義兄とはどういうことだ……?」
ズバニールは思わずおしりを抑えながら聞いた。
「ぶはっ!!」
隣りにいたノアルは耐えられずに吹き出しそれをきっかけに多くの笑いが溢れている。
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