31 / 138
第31話 ルイーザの反撃
しおりを挟む(貴女はやり過ぎたのですわ。わたくし達まで蹴落とそうとするからには、それ相当のお覚悟があるとみてよろしいのでしょうね……?)
どこの世界に、毒の花が咲き誇るのを許容する国があるというのだ。
王子達にまで毒牙にかけた女を、野放しにするはずがない。目をつけられないと思っていたのなら、この国の上層部を舐めているとしか思えない。
「これはわたくしとクレイブ様の問題ですわ。他人が口を挟まないでくださいませ」
「そんな……他人だなんて、ひどい……クレイブさまはサリーナにとって、大切なお友達なのにっ」
ひどい、ひどいわとクネクネと体を揺らし、心外なことを言われたと涙を浮かべて抗議してくる。彼の腕にぎゅっと抱きつき、自分とクレイブの間には特別な関係があると強調しながら……。
「わたくしは婚約者としての役割を、忠実に果たしているだけでしてよ。暴走を止めるのも大事なお役目ですもの」
「え、嘘ぉ? 違うでしょぉ!? この場合、暴走しているのはあなたの方じゃない!」
「……わたくしはクレイブ様とお話ししているのです。貴女に発言を許可した覚えはありませんわ。お黙りくださいませ……と、申し上げましたが聞こえませんでしたか?」
「きゃ、ルイーザさま、怖ぁ~い……」
わざとらしく怖がって、益々クレイブの腕に引っ付くサリーナ。
一々余計な口を挟み、体を使って挑発してくる女にはイライラさせられるが、これ以上構っていられない。
ルイーザは視線も向けず、彼との会話に集中しようとする。
「さて、クレイブ様。か弱い女の投げた扇ひとつ避けられない程、腕が鈍ってしまわれたこと……今、どんなお気持ちかしら?」
「ルイーザ嬢……」
「ええぇぇぇぇぇ!? どこがか弱いって!? だってわたし、クレイブ様に聞いたわっ。ルイーザさまって、片手で魔物を捻り潰すような野蛮な人なんでしょう? さっきだって……ひぃぃぃっ」
キャンキャンとうるさい女だ。
鬱陶しくて、それこそ魔物相手に使う威圧スキルをサリーナに向けて解放すると、これには本能的にヤバいと察したらしく、悲鳴をあげて押し黙った。
「ふんっ。重ね重ね失礼な方ですこと。いい加減にしてくださらないかしら?」
せっかく今は見逃してやろうとしたのに……。
ルイーザの優しさを踏みにじる彼女に、今度は感情を押さえきれなかった。
プルプル震えている女に冷たくいい放つ。
2
お気に入りに追加
6,371
あなたにおすすめの小説
「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
お父様お母様、お久しぶりです。あの時わたしを捨ててくださりありがとうございます
柚木ゆず
恋愛
ヤニックお父様、ジネットお母様。お久しぶりです。
わたしはアヴァザール伯爵家の長女エマとして生まれ、6歳のころ貴方がたによって隣国に捨てられてしまいましたよね?
当時のわたしにとってお二人は大事な家族で、だからとても辛かった。寂しくて悲しくて、捨てられたわたしは絶望のどん底に落ちていました。
でも。
今は、捨てられてよかったと思っています。
だって、その出来事によってわたしは――。大切な人達と出会い、大好きな人と出逢うことができたのですから。
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
【短編】国王陛下は王子のフリを見て我がフリを反省した
宇水涼麻
ファンタジー
国王は、悪い噂のある息子たちを謁見の間に呼び出した。そして、目の前で繰り広げられているバカップルぶりに、自分の過去を思い出していた。
国王は自分の過去を反省しながら、息子たちへ対応していく。
N番煎じの婚約破棄希望話です。
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
どうやら断罪対象はわたくしのようです 〜わたくしを下級貴族と勘違いされているようですが、お覚悟はよろしくて?〜
水都 ミナト
恋愛
「ヴァネッサ・ユータカリア! お前をこの学園から追放する! そして数々の罪を償うため、牢に入ってもらう!」
わたくしが通うヒンスリー王国の王立学園の創立パーティにて、第一王子のオーマン様が高らかに宣言されました。
ヴァネッサとは、どうやらわたくしのことのようです。
なんということでしょう。
このおバカな王子様はわたくしが誰なのかご存知ないのですね。
せっかくなので何の証拠も確証もない彼のお話を聞いてみようと思います。
◇8000字程度の短編です
◇小説家になろうでも公開予定です
恋より友情!〜婚約者に話しかけるなと言われました〜
k
恋愛
「学園内では、俺に話しかけないで欲しい」
そう婚約者のグレイに言われたエミリア。
はじめは怒り悲しむが、だんだんどうでもよくなってしまったエミリア。
「恋より友情よね!」
そうエミリアが前を向き歩き出した頃、グレイは………。
本編完結です!その後のふたりの話を番外編として書き直してますのでしばらくお待ちください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる