異世界に召喚されたけど間違いだからって棄てられました

ピコっぴ

文字の大きさ
276 / 294
Ⅲ.女神の祝福を持つ少女たち

114.収穫祭⑨武

しおりを挟む

 穀物とお酒の奉納式を見た後、大人達は振る舞い酒にわき上がり、若者は、雑穀のスープやパンを味わう。
 シーグも領主館で、朝食を軽く食べたはずなのに、雑穀スープもパンも試していた。
 まあ、育ち盛りというか、十代の男の子って、びっくりするくらい食べるわよね。

 そして今日もサヴィアンヌは、穀物やお酒の奉納品に飛び込んでいった。
 いくらその方が旨味が出るってみんなが容認してるとはいえ、食べ過ぎじゃないかしら?
 穀類をお祀りしているだけあって、籾っ子ちゃん達が増えていた。
 どこから? 南からやって来たの?

《違うわヨ。豊穣だったから、自然に増えたのヨ。ここはいい土地ネ》

 そういうものなの? そういえば、妖精の結婚は価値観と気持ちの合う相手と融合──文字通りひとつになるらしいので、結婚するたびにどんどん数が減ってるんだと心配してたけど、自然発生で増えるんだ⋯⋯

《自然発生はちょっと違うカシラ? 大地の地精をよく含んだよい実りがたくさんあると、妖精を抱いた花が咲いたり、果実が実ったりするノヨ》
「種子とか? 果実や蜜?はちょっと違うか」
《だいたいそんな感ジ》

 親指姫とかかぐや姫みたいなものかしら。

 花が開くと中にお姫様。桃を割ると男の子⋯⋯

《アラ、シオリの世界にもそんな花の精とか居るのネ》
「いると言うかいないと言うか、お伽噺?」
《伝説やお伽噺って言うノハ、自分の視る力に気づかなくテ、夢でも見たのかな~って話が続くところから始まるノヨ。キット、そっちにも視えないだけで居るんダワ》
「そうかな」
《ダッテ、みんながてんでバラバラの話をするんじゃなくテ、だいたィ、似たような話になるんデショ?》
「そういえば、そうね」

 でも、近代化が進んで自然が少なくなって、本当に居たとしても、最早いなくなってるのかもしれないけど。

 お酒が入って陽気になるからか、初日よりもみんなの踊りに熱が入る。しかも、酔って踊るので、まわりが早くて、ふらついたり、隅で寝込む人もいる。この街にも泥酔するほど飲む人が居るのは初めて見た。

 シーグに手を引かれ、酔っ払いがひと通り気が済んで退場して空いた輪に入り、私も踊りだす。

 こんなに毎日運動するのはいつぶりかしら⋯⋯

 去年の体育祭前に、訓練や予行演習した時以来かしら。

 妖精もたくさん踊りに加わり、視える人は驚いていたけれど、カインハウザー様と私がいるからも含め、収穫祭だから、と驚くだけで騒ぎにはならなかった。


 収穫祭は初日の天の日に、開祭宣言から新成人、新婚の祝いと、野菜や果物の収穫を感謝して奉納するのを皮切りに、毎日、二日目地の日が山の幸、野の幸、川の幸など、恵みに感謝する日、昨日の三日目火の日が畜産や加工食品、今日の四日目水の日が穀物や酒類、明日五日目風の日が鋳物や工芸品、六日目の樹の日は学問を称え、魔法と武芸を競い合い、それぞれ感謝と王都への納税の準備もする。
 七日目の闇の日は、生命や死の安寧について祈る日で、お祭り騒ぎはなく、教会や神殿にて神々への信仰を篤くする日だそうで、また、クロノ神殿が係わってきそう⋯⋯
 最終日の聖の日は、世界の恵みと営みである、精霊や妖精への感謝の日で、穏やかに過ごして、収穫祭は終わりとなる。

 ここの暦では、一週間が八日間で何々曜日とは呼ばず、天の日地の日と言い表し、順に天地火水風樹闇聖となる。
 それぞれ、精霊魔法の属性に呼応しているらしい。

 鋳物や鉄鋼品、手芸品や工芸品などは、文化祭みたいな展示会でもあり、クロノ神殿への巡礼者に工芸や芸術に精通した人が居たようで、意見を交わしたりもしていた。

 六日目も似たようなもので、新しい論文を書いた人の褒章式があったり、ちょっとした魔術や剣技でのトーナメントもあって、特に衛士隊の人達は素晴らしかったし、観客である街の人々も大声で応援したり拳に力が入ったりと、盛り上がって色々発散したように思う。
 ちなみに、武芸大会ではベーリングさんがダントツ瞬殺で勝ち抜き優勝。ハルカスさんが熟練の技で準優勝。
 意外だったのが、ロイスさんが、ドルトスさんと三位タイだったこと。小隊長さんだったとは聞いてたけど、そんなに強かったなんて。

「いつもはもう少し下の方なんだけどね。毎年ベーリングが圧倒するので優勝は出来ないってわかってるから、適当に勝ち抜いて適当な所で負けてたんだけど、今年は張り切ってたからね」
「そうなんですか? なにか心境の変化でもあったのかしら」
「いいとこ見せたかったんでしょ? 私も驚いたわ」

 カインハウザー様とリリティスさんの説明から、どうやら、ロイスさんには自分が活躍するカッコイイところを見せたい人がいたらしい。ここの基準で言えば、結婚しててもおかしくない年だもんね。キリッとして冗談を言わなければ、ロイスさんもかっこいいし。

「それ、表彰式のあとで言ってあげると、喜ぶと思うわ」
「そうですね、お祝いを言うときに、ちゃんとカッコよかったって言っておきます」
「それ、要らん誤解を生まないか?」
 シーグがギロリと睨む。
「誤解? カッコよかったのは本当だし、こういう時は、素直にカッコよかったって言うのは普通じゃない?」

 その事自体には異論はないのか、納得はしてなかったみたいだけど、それ以上、シーグが不満を表すことはなかった。

 そして更に意外な事に。
 魔術系のトーナメントでも、大活躍だった。
 優勝したのは、衛士隊所属の魔術士で、なんと準優勝がロイスさん。

「魔術の方は、第一回目に参加してやはり中間くらいに位置して、その後はずっと出てなかったのだけど、今年は本当に頑張ったようだな。魔術専門職に勝つとは思わなかったよ」
「いいとこ見せたい願望が、効果覿面ね。いつもあれくらい頑張ればいいのに」

 リリティスさんが笑うと、カインハウザー様も苦笑しながら「意中の人にかっこよかったと言って貰えれば、来年以降も発憤興起するだろうさ」と仰った。
 
 こんなに楽しいお祭りは、人生でも初めてだった。

 ハウザー砦街で楽しく幸せな収穫祭を楽しんだのは、今年が最初で最後だった──



しおりを挟む
感想 113

あなたにおすすめの小説

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

婚約破棄から50年後

あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで、王子が婚約者に婚約破棄を宣言した。王子は真に愛する女性と結ばれ、めでたしめでたし。 そして50年後、王子の孫の王子は、婚約破棄された女性の孫と婚約する事に。そこで明かされた婚約破棄の真実とは。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...