憧れが恋に変わったそのあとに――俳優×脚本家SS

木偶舞屋🌷旧阿沙

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✿ワンライ関係

・「手料理」と「ディナー」

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――今夜、早めに帰って来れます。

 スマホの画面に浮かび上がった彼からのメッセージに千尋ちひろ崇彦たかひこは胸を弾ませた。
 仕事と仕事の合間に、料理を習い出したのは、彼が自宅に現れるようになったからである。最初は、レトルトのルゥを溶かしてカレーをつくるくらいしかできなかったが、今では、それ以外のレパートリーも増えた。
 最低限の調理器具しかなかった台所キッチンにも、ものが増えて来たし、何より、料理を始めてからその奥深さにはまりはじめている。同じ食材であっても、料理の仕方でなんと様変わりすることか――。
「よし! 何にしようかな」
 忙しい彼とスケジュールが合うことはめったにない。普段、一緒にいられないからこそ、こういうちょっとした時間でも、心が燃え上がる。
 何を作ろうか。頭のなかに浮かんでは消えていく、あれやこれや。そんな妄想を始めた千尋は、次の瞬間、うっと息を飲んだ。

――もし、千尋さんさえ、よければ、久しぶりにどこかで食事でもしませんか?

「あー、うん。そうだねえ」
 自分が作る気満々でいたのだが、彼から食事の誘いが来た。

――俺、先輩から美味しいエスニック料理屋、教えてもらったので、よければ……

 うん、いいよ。
 千尋は、そう返信してしまった。



「千尋さん、今日、何かありましたか?」
 新しくできたばかりの店内は洒落ていて、絞られたライトの下で見る新崎にいざき迅人はやとは、より大人びて見えた。そんな彼が、運ばれてきたばかりのバッタイに手をつけ始めた千尋に向かって、こう尋ねてきたのだ。
「え? 別に、何もないけど?」
「そうですか? ……なら、いいんですけど……」
 するどい。千尋は思わず苦笑しながら、料理に口をつけた。
「あ、美味しい」
「本当ですか! やった!」
 嬉しそうに無邪気にはしゃぐ新崎を見て、千尋も微笑む。
「よかった~。いつも、俺が早く帰れる日って、千尋さん、夕食準備してくれるじゃないですか」
「え、ああ、うん」
「毎回毎回、なんか悪いな~と思って。たまには、俺が! って思ったんですけど、俺、料理巧くないし、美味しいお店ってなかなか知らないし」
「めちゃくちゃ美味しいよ」
「やった~! あ、もう、じゃんじゃん、頼んでいいですからね! 俺もじゃんじゃん頼みますからね」
 いや、そんなに食べないから。
 そう思いながらも、胸がぽかぽかしてきた。
「新崎くん」
「はい、おかわりですか?」
 色々頼みまくったテーブルの上はカオス状態である。新崎がきょとんとして聞いてきたので、千尋は笑った。
「そうじゃなくて。ぼく、こう見えて、料理作るの好きなんだよ」
「へえ~。えっ!」
「ああ、いや、あの、今日は誘ってくれてありがとう。だけど、その……新崎くん、いつも美味しそうに食べてくれるから、ぼくは料理作るの、好きです」
「へ!? あっ!?」
 多分、彼の口にした料理のせいだ。香辛料が入っているからね。かーっと突然、顔を赤くした新崎に、千尋は笑った。

(了)

20220820創作BL版深夜の真剣一本勝負「手料理」「ディナー」
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