SLAVE 屋敷の奥で〜百回いくまで逃げられない〜🔞

阿沙🌷

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・屋敷編

Tue-12

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 青年の目の前に広がっている光景。それは、ガラスの向こう側の世界だった。ガラスを通した向こう側には、下に、先ほどとおってきた、豚箱のメインフロアが見える。
「ここでの眺望はなかなかのものにございます」
 伊佐美が、うっとりとした様子で応じた。
「このフロアに次々と下劣な客たちがみなぎり、それに応えるように、穴たちが、なきだす」
「……まったくだな。この発想には俺も驚かされた」
 藤滝が、感情ひとつ読み取れない声で応えた。
「伊佐美」
 名前を主人に呼ばれて、伊佐美が微笑んだ。
「はい、ご主人さま」
「お前は、屋敷にいるうちから、こういう発想ができる男だったが、実現したいまでは、その想像が具現化されたものを見れて、俺は……ぞっとするな」
 藤滝が、微かに微笑むのが見えた。伊佐美は、頬を紅潮させて、深々と頭をさげた。
「そのおことば、ありがたく頂戴いたします、ご主人さま。……ああ、あのころのように、もういちど、ご主人の鞭を浴びたいものでございます」
 ふたりの会話から、この豚箱が、屋敷にいたもともと青年と同じような立場であった伊佐美が、考案し、その考えが藤滝に受け入れられてできた場所だということを青年は推測した。そしてそれはおそらく間違いないことなのだろう。
 悪魔だ。
 青年は手をぎゅっと握りしめた。強くにぎりしめたせいで、手の甲に血管が浮かびあがる。
 ここまで、人間の自由をないがしろにできる男たちはいない。
 自分が捕らわれの身になり、そこから逃げおおせるために、自らと同じ境遇に落とされた人間を使って、そこから逃れたこの伊佐美という男も、そんな男の愚劣な発想を許した藤滝、そうこの男も。
 悪魔の手の中に握られてた鎖が小さく音を立てる。青年の身体の震えとそれはリンクしていた。
 苛立ち、怒り。
 そして、絶望。
 ここまで絶望的な人間と対峙しなくてはならないのかと思うと、青年は叫んでいた。
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