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・屋敷編
6.
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彼が全てを捧げているこの男は、あの落第しかけの野蛮な花を得てから、すこしずつ何かを変えはじめている。
こうして、ときおり、歪な表情に歪む主人を不安なまなざしで見つめながら、使用人頭は、言った。
「ご指示とあれば、すぐさま手配いたします」
「いや、その前に、まだ時間をあたえてやろう。慈悲だ」
慈悲、と口から出てきたが、それが果たして本当の慈悲なのだろうか。そんな疑問すら、服従をきめた主人の前で出すことはない。
「は」
深々とつつしみをもって、彼は自分より年の若い主人に礼を尽くした。
「それと、今から、やつを連れてきてくれ」
「……と、いいますと?」
「この俺、自らやつをせっぱいてやらねば、な」
「な……」
藤滝の顔を使用人頭は数秒凝視してしまった。
「どうした? 早くしろ」
「え、ええ……ですが、昨日の『宴』で体力を使い果たしたのか、ぐったりとして、彼を引く出すのは―――」
口ごもる使用人を見下ろす藤泰の視線から温度が消えてなくなった。
「そうか。ではもうよい。しばらくの間は、まだ、このままで予定を組んでくれ」
「は、はい」
「やつを落とすとなったら、俺から連絡を入れる。あいつ以外の花はお前が管理しろ。落としたほうがいいと思ったやつは、落とせ」
「はい、承知いたしました」
何度も重ね重ねに礼を尽くして、使用人頭が去っていった部屋に、藤滝はひとり残された。
ふっと、一服、煙を嗜むと、手近に寄せた灰皿で煙草の火を消した。
それから、彼は立ち上がった。
こうして、ときおり、歪な表情に歪む主人を不安なまなざしで見つめながら、使用人頭は、言った。
「ご指示とあれば、すぐさま手配いたします」
「いや、その前に、まだ時間をあたえてやろう。慈悲だ」
慈悲、と口から出てきたが、それが果たして本当の慈悲なのだろうか。そんな疑問すら、服従をきめた主人の前で出すことはない。
「は」
深々とつつしみをもって、彼は自分より年の若い主人に礼を尽くした。
「それと、今から、やつを連れてきてくれ」
「……と、いいますと?」
「この俺、自らやつをせっぱいてやらねば、な」
「な……」
藤滝の顔を使用人頭は数秒凝視してしまった。
「どうした? 早くしろ」
「え、ええ……ですが、昨日の『宴』で体力を使い果たしたのか、ぐったりとして、彼を引く出すのは―――」
口ごもる使用人を見下ろす藤泰の視線から温度が消えてなくなった。
「そうか。ではもうよい。しばらくの間は、まだ、このままで予定を組んでくれ」
「は、はい」
「やつを落とすとなったら、俺から連絡を入れる。あいつ以外の花はお前が管理しろ。落としたほうがいいと思ったやつは、落とせ」
「はい、承知いたしました」
何度も重ね重ねに礼を尽くして、使用人頭が去っていった部屋に、藤滝はひとり残された。
ふっと、一服、煙を嗜むと、手近に寄せた灰皿で煙草の火を消した。
それから、彼は立ち上がった。
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