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1巻
1-3
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しかし、わたしは売られた喧嘩は買うタチなのだ。せこく、陰湿に、きっちりとやり返した。しつこくやった。必要以上にやった。だからアマリアが王太子妃になった場合、断罪からの一家まとめて処刑という、最悪のルートへと突き進む可能性が高い。
サーシャが王太子妃になれば、とりあえずデブとハゲの命は助かるはずだ。結婚を機に酷い目にあわされたゲッスール家をざまぁするにしても、親殺しってのは外聞が悪すぎるから、おそらく国外追放くらいで済むだろう。
「アマリアがどの程度食い込んでるかは、手下どもに情報収集させるとして。まずわたしが考えるべきは、いかに素早くサーシャを王太子妃にできるかってことだよねー」
壁の時計を見上げると、とっくに朝食の時間を過ぎていた。うーん、やっぱひとりくらいは侍女がいた方がいいかなあ。
「いくらデブスな婚約者が嫌になったからって、王家にはゲッスール家のこれまでの功績、功労まで忘れてもらっちゃ困るのよねー。サーシャはアルフレッド様と対になるような美人なんだから、アマリアなんざ足元にも及ばないわ。オーホッホ、一回会わせりゃあの堅物だってイチコロよー」
王太子妃になったサーシャの姿が脳裏をよぎり、その光の差すような美しさまで想像して、わたしは盛大に高笑いをした。
「わたしはとにかくハゲとデブのために命乞いのテクを磨かないとなー。新侯爵や王太子妃に、あんなクズい両親がいちゃダメだよね。やつらの老後は、わたしが背負わねば!」
爵位を剥奪されて市井に放り出されたとして、あの人たちにいまさら庶民以下の暮らしができるはずがない。カイルとサーシャの未来のために節約して、その中からちょびっとだけ、生活費を確保させてもらいたい。
自分でもちょっと甘いかな、とは思う。でもだいぶ年取った両親だし、方向性はまったく間違ってたけどわたしは可愛がってもらっちゃったし。やっぱり、恩は返したい。
周囲の大多数にとっては邪悪なハゲとデブだが、わたしには優しい親の顔を見せてくれたあの人たちを、どうして切り捨てることができようか。
「とりあえず、着替えるかー」
わたしは勢いよくクローゼットの扉を開け、そこに毒々しくてけばけばしいドレスばっかりかかっているのを見て、速攻で閉めた。
「なんだこの趣味の悪さ。いくらルデルヴァで派手に着飾るのが流行してるからって、これじゃチンドン屋さんだよー」
これらをロマンチックでありながらセクシーさの香る、お姫様ムード満点のドレスだと信じ込んでいたのだから始末が悪い。こんなの着た傲慢なデブは、さぞかし滑稽だったことだろう。
「お母様のとこ行ってドレス借りてくっか。よその親より高齢なだけあって、普段はわりとシンプルなの着てるし」
前世ではひとりっ子だったから、姉妹で洋服の貸し借りとか憧れてたんだけどなあ。
でも非道な姉すぎて、今サーシャに近づいたら逃げられるか泣かれるかのどっちかな気がする。それ以前にサーシャは細いから、とてもじゃないがサイズが合わない。
「お母様、ドレス貸して。あと地味めの靴とかも」
お母様の部屋を訪ねると、デブではあるがそこそこ美人なお母様は「おほほ」と軽やかに笑った。
「まあユリアンヌったら、どういう風の吹き回し? 昨日は少し様子が変だったけど、もう元気になったのかしら?」
「あー平気平気。ちょっと気分転換? みたいな感じだから、気にしないで。あ、この水色のドレスいいね、お上品」
「まあまあ、もしかしてアルフレッド様の趣味が変わったの?」
「いやー。まあ、そんな感じかなー」
お宅の娘さん、アルフレッド様に思いっきり嫌われてますがね。昨日だって執務が忙しいってんで会ってもらえませんでしたけどね。
「じゃあ、これ借りていくね。ありがとう」
「やだわユリアンヌったら、レディが軽々しくお礼なんて言わなくていいのよ」
いや、普通のレディはお礼くらい言いますし。お母様の教育方針謎だらけですし。
「……ところで。お父様は朝っぱらから、どうしてお酒を召し上がっているのかしら?」
わたしは顎をしゃくって、ご機嫌に酔っぱらっているハゲを睨みつけた。ゲスい性格同士で気が合うのか、こいつらはどっちかの部屋で一緒に過ごしていることが多い。
「おおユリアンヌ。おまえも飲みなさい、東洋の神秘の酒だよ」
頭皮トラブル抱えまくりのハゲめ、またクッソ高い酒飲みやがって。
「やだー、お父様おっくれってるぅ。ご存じないの? 我が国が誇る赤ワインには発毛効果があるのよ?」
カイルとサーシャのためにも、これ以上散財されてたまるかと、わたしはお父様の手からグラスを取り上げた。
「そ、それは本当か? 本当にそうなのか?」
「ほんとほんと。飲んでよし塗ってよし。そんな高いお酒なんか飲むから、毛根がびっくりして死ぬのよー」
何しろ我が国はブドウの産地。ワインはめっちゃ安く手に入る。急にやめられないならまずは酒代を減らして、そのあとで酒量を減らしていこう。
それに、発毛効果がありますーみたいな記事、前世で読んだ気がするからたぶん生えるだろう。信じるものは救われる、それいけプラシーボ効果!
「お、おいおまえ、早速赤ワインを買ってこい。ワシに相応しい最高級のやつだ!」
わたしは慌てて出ていこうとする執事を呼び止める。
「渋くてえぐみがある方がハゲには効くからー、安いやつ買ってきてー」
「そ、そうなのか。ならば一番安いワインを買い占めてこい!」
まあ備蓄はあってもいいしな。わたしは執事に、違うワイナリーを回って五本くらい買ってくるようにと付け加えた。安くても飲み比べりゃお気に入りも見つかるだろう。
「そうだわユリアンヌ、元気になったのなら楽団でも呼びましょうか?」
「あー、遠慮しとく。なんか外出疲れっていうか、部屋の掃除とかもしたいから」
「まああユリアンヌ、どうしちゃったの。そんなの使用人にやらせればいいのよ」
「やだー、お母様もおっくれってるぅ。時代はロハスよ、ロハス。身も心も健康で美しくなきゃレディとは言えないわ」
「ロ、ロハス?」
「簡単に言えば、粗食で健康! 身体を動かしてさらに健康! いらないものは整理して内面から美しくってことね。よその国で流行ってるんですって。知らなきゃ最先端とは言えないわよ?」
「あら、そうなの? じゃあ、ちょっとクローゼットの整理でもしようかしら」
「さすがお母様だわ、最先端! もう着ないドレスはじゃんじゃか出しちゃって!」
散財しまくりのお母様のクローゼットからは、きっと金目のものがザクザク出てくるだろう。
(老後資金確保のためにも、売れるものはみんな売らなきゃ。でも、貴族の持ち物を売り払えるフリマとか、お気軽なリサイクルショップはさすがにないだろうなあ。どうしたもんかなあ)
箱入りで育ってしまったせいで、市井のことはイマイチよくわからない。そこらへんも、どうにかする必要があるだろう。
わたしは自分の部屋に戻り、わりと地味めな水色のドレスに着替えた。
「やっぱり、手足となって動いてくれる人材が必要ねー。何人か脅す……いや面接してみようかしらー」
うーん、とわたしは頭を掻く。ぬるっとしているのにざらつくという謎の手触りに、口がへの字になった。
「ああもう。お風呂入りたいけど、高い金払って買った洗髪剤も石鹸も、まるで効き目がないしなー。まてよ、たしか蜂蜜でシャンプーが作れるんじゃなかったっけ?」
前世で患者仲間だったオーガニック大好きお姉さんが、アレコレ教えてくれたよな。試してみる価値はありそうだ。
いまさら美しくなったところで、わたしが迎える結末はめでたいものじゃないんだけど。とはいえ腐っても侯爵令嬢としては、みっともない姿は見せたくないじゃないか。せめて散り際くらいは美しくありたいじゃないか。
わたしは机に置かれた蜂蜜の瓶に手を伸ばした。こんなところにお気軽に蜂蜜が置かれているのは、デブなわたしが紅茶に大量投入していたせいである。
「うちの領地で採れた蜂蜜は上質で混ぜ物一切なしだし。これとぬるま湯と、あと重曹があれば、ツヤ髪効果のあるシャンプーが作れるはず。たしか、蜂蜜をダイレクトに顔に塗ってもよかったような……」
ゲッスール家の領地は北の方にあるため陰気で寒いのだが、短い春から夏にかけて、ほぼ手つかずの土地に咲きっぱなしの花々やクローバーのおかげで、それは美味しい蜂蜜が採れるのだ。
「患者仲間におばあちゃんの知恵的なものも、いっぱい聞いたもんなー。ドクダミとかハーブとか、そんなのが庭に生えてないかな。無料で口に入れられるものは、なんでも活用しなきゃ」
時間は有限、ここはさくさく進めないと。わたしは本棚から図鑑を取り出して、意気揚々と庭へ出た。
さすがに金持ってるだけあって、我が家の敷地は無駄に広い。今まで散策なんかしたことなかったから、図鑑片手にあちこち彷徨ってると、まったく予想外の展開になった。
「あなたたち、我が家の裏庭で乳繰り合うとは度胸あるわねー……」
「ひいっ! どうかどうかお許しをーっ!」
ジャックというらしい下働きの男が、地べたに額をこすりつけんばかりに謝り倒す。
「えーっと、すみませんでしたぁ」
新人侍女であるらしいリズがにへらっと笑った。うーむ、怒れるわたしを前にしてのこの態度、おぬしなかなかやりおるな。
ジャックとリズは、あろうことか裏庭の一角でくんずほぐれつしていやがったのだ。それを見つけたときのわたしこそ「ひいっ」ってなもんである。
我が家では、使用人同士の交際は〝風紀が乱れる〟という理由で許可されていない。
ちなみに前世の記憶が戻る前、わたしは絶好調の恋人同士がひたすら憎かったので、見つけ次第クビにしていた。
「そうねー、あなたたちがわたしの言うことをなんでも聞くっていうのなら、許してあげないこともないわ。もちろん、うちの家族にも他の使用人にも、すべて極秘よ。王都は不景気、就職難の今、うちをクビにされるのは困るわよねー?」
ジャックとリズはうんうんとうなずいた。やった、侍女となんでも屋ゲットだぜ。
「ちょうどよかったわー。さっき気分転換にあっちらへんを彷徨ってたら、お母様専用の物置小屋を見つけたのよ。でも、みっちみちに詰まってて中に入れなかったの。たぶん若いころのドレスとか、買ってはみたものの秒で飽きたダイエット器具とかが詰め込まれてると思うんだけど。ジャック、整理しといてー」
「了解です! 俺、力だけは自信あるんで速攻で終わらせますよっ!」
わりとモブっぽい顔でジャックは笑った。髪も瞳もグレーでこれまたモブっぽいが、のんびりした雰囲気はまさに癒し系男子。いや、癒し系は裏庭で乳繰り合わないか。
「じゃあ、リズはわたしについてきて。よさげな野草を見つけたから、摘むのを手伝ってほしいの」
「はぁーい」
リズがチャーミングな笑顔を輝かせた。ウェーブのかかった赤毛を侍女らしくまとめてるけど、両サイドにふわふわっとおくれ毛が出てる。ヘーゼルの瞳がとろけるように緩いっていうか、激烈な色気のある娘さんだ。
「あなた、最近うちに入ったのよね? 誰付きになりたいとか、このポジションにつきたいとか、そういった目標とかあるの?」
「目標ですかぁ? えーっと、婚活です!」
「潔いな。気に入ったわ」
度胸ありそうだし、昨日までのわたしをあんまり知らないだろうし、この子ならそばに置いといても気が楽だ。
「お嬢様ぁ、あっちの草も食べられますよ。食べてよし、塗ってよし、煎じて飲んでもよしですぅ。あ、あそこのじめっとしたところに生えてるキノコ、あれも美味しいですよぉ」
「へー、詳しいのねー」
「ちっちゃいころに親が死んじゃってぇ。親戚中をたらい回しにされながら育ったんですけど、ご飯にありつけない日が多かったんですよねぇ。だから早くあたたかい家庭を作りたくて、ここでお金貯めるついでに相手探そうと思って!」
「可愛いじゃねえかこんちくしょうぅっ!」
リズと一緒にあれもこれもと摘んで回ると予想外に大量だったので、リズの侍女服のエプロンをびよーんと伸ばして全部載せた。
「これをさー、なんとか調理して飲んだり食べたりしたいんだけど。うちにいる料理人で、そういうのが得意な人っているかなー」
何しろ我が家の食卓ときたら、朝から晩まで贅沢三昧だ。好きなものを好きなだけ食べられるのは豊かな行為だと思っていたけれど、このままでは健康にも家計にもよろしくない。
採れたてのヘルシーな食材を調理してもらう方がよほど贅沢だし、いかにもロハスっぽくて身体にもいいだろう。さらには節約にもなって一石二鳥。
「ズバッと料理長さんに相談したらどうですかぁ? この時間なら、きっと畑にいると思いますぅ」
「それもそうだよねー。ところで料理長ってどんな人? わたし、自分で台所に行ったことなくてさー」
「えーと。すごく男らしいっていうか、『半端なヤンチャはしねえぜ』みたいな人ですねぇ」
なるほどわけわからん、と首をひねりながらしばらく歩くと、やがて家庭菜園的なものが見えてきた。
『立ち入り禁止(入ったら殺す)』と書かれた札が見えたが、なんたってわたしなのでそんなもん気にするわけがない。この屋敷にわたしを殺せる人間は、まだ今のところいないはずだし。
「うふふ、インゲン豆ちゃんもオクラちゃんも立派に育ったわねえ。待っててね、アタシが美味しく調理してあげるわよ」
リズと一緒に背の高い野菜やら花やらを掻き分けていると、野太い声が耳に届いた。緑のカーテンの隙間から覗くと、硬そうな茶髪の毛を強風に煽られたように逆立てた偉丈夫が、しゃがみ込んで土をいじっている。こちらの気配に気付いたのか、はっとしたように顔を上げた。
「やだわ、また野豚が入ってきたのかしら。んもう、困っちゃうわねえ。捕まえてローストポークにしようっと」
焼き豚にされてはたまらないので、わたしは緑の向こう側にぐっと顔を突き出す。
「オーホッホ、野豚ことユリアンヌ・ゲッスールよー」
「ユリアンヌお嬢様っ!?」
立ち上がった料理長の身体には厚みがあり、見るからにたくましい。声だって低くて太いが、ゴリゴリマッチョでも中身が乙女ってことはあるだろう。偏見や差別はよろしくない、てか気にならない。
「仕事中悪いんだけどさー、ちょっと協力してほしいことがあるのよ。あ、性的指向とか性自認とか、そういうので脅すつもりはないから。隠してるなら誰にも言わないし。嫌だったら、断ってくれていいよー」
「え、いや、あの」
「あのさー、そこらへんに生えてる草を飲んだり食べたりしたいの。つまり、節約と健康を両立させた料理が食べたいんだけど、うちの料理人で適任はいるかなー。できたら、口が堅いタイプで」
料理長はゴツイ手を頬に当てて、青い瞳でじっとわたしを見つめていた。そしてしばらくののち、唇をすぼめてうふふと笑った。
「面白そうだし、アタシがやります」
あんまり自然な笑顔だったので、つられてわたしも笑った。やったぜ、料理人ゲットだぜ。
草やらキノコやらを料理長に託してリズと一緒に部屋に戻ると、お母様が部屋をノックしてきた。扉の向こうから、心配げな声がする。
「ユリアンヌ、ちょっといいかしら。あなた、侍女たちをみんな追い出したそうじゃないの。いったいどうしちゃったの?」
いや、単に未来の王太子妃たるサーシャにこそ、たくさんの侍女の手が必要ってだけですけど? しかし掛け値なしの思いとはいえ、今の段階でお母様に知られるわけにもいくまい。
「ハアハア……た、体調が悪くて……しばらく、静かに過ごしたいのよ。侍女なら、ひとり、いるから」
わたしは扉を開けずに、とりあえず切羽詰まった声でそう答えた。ブリッジしながら。これ、マジでつらそうな声が出せるのでオススメ。
「まああユリアンヌ!? とても苦しそうよ、すぐにお医者様を呼ぶわ!」
「だ、だいじょぶ、寝てれば治る、から。ハアハア、しばらく、ゆっくりさせて。他の侍女たちには、サーシャの身の回りの世話を、させておいて」
「で、でも」
「ただ飯食わせるのは、もったいない、でしょ」
「ユリアンヌがそう言うなら……。じゃあ、目が覚めたら必ずお医者様に診て頂くのよ?」
「わ、わかっ、わかったわ」
ブリッジ、うまくできなくても問題ナッシング。何せ、下手なほどリアルに苦しそうな声が出せるから。
それに、デブは普通にしてても肉で喉が圧迫されてるからな。ブリッジなんかしたら、もうカッスカスの声しか出ない。たぶん、優勝決定戦直後の力士の方がもうちょっとまともに喋れると思う。
お母様の足音が遠ざかっていくのを確認して、わたしは仰向けに寝転んだ。
「ふー。ブリッジとか、このダルダルの身体にはキツすぎたわ。マジで疲れたわ。しかし休んでいる暇はない。さあリズ、まずはお風呂よ!」
はぁーい、と大変いいお返事が返ってきた。
普通ならわたしの心理状態を把握しきれず戸惑う場面だろうに、リズは勝手にソファに腰掛けてくつろいでいた。こいつ、強い。
溺愛されまくりの我儘娘なので、風呂とトイレは部屋に隣接している。リズに早速風呂の準備をさせて、ぬるま湯に溶かした蜂蜜で丁寧に髪を洗ってもらった。うーん、超気持ちいい。
「ねえ、リズ。使い道のない不要品をこっそり売りさばける店とか、知ってたりしないかしらー? わたしってば詮索されるのが嫌いだから、貴族に気付かれたくないのよね。ていうか、カイルに知られるのだけは、わたしの傲慢なプライドが許さないというかー」
食費と美容代の節約はなんとかなりそうだけど、ハゲとデブの老後資金を貯めないといけない。でも、誰かに知られてカイルからのざまぁが早まるのは、絶対に避けたい。
「カイル様にバレずに不要品を売りさばける場所ですかぁ? たしか、農業組合が毎週青空市場を開いてるから、そこでなら……あ、でもあそこは農産物とか、手作りの工芸品や雑貨を売るところだっけ」
「手作り! いいじゃない、それっ!」
わたしが庶民に交ざろうとするなんて誰も考えないだろうし、それならバレずに粛々とやれそうだ。しかし、派手すぎるドレスはそのままじゃ確実に売れないだろうし、なんとか工夫ができないものか。
そうだ、目に痛い毒々しい色の布地を切り裂いて、パッチワークにしてあれこれ小物を作るのはどうだろう。何しろ前世のわたしは長期入院のプロ。ベッドの上でできる裁縫は趣味のひとつだった。
「リズ、あなたお裁縫はできる?」
「できますよぉ。裁縫も掃除も洗濯も料理も、ぜーんぶ得意ですぅ」
「頼もしいわー。お母様の古いドレスも、リメイクして着たいのよねー。あ、そうだ。お風呂から上がったら、早速運動着を作るの手伝ってくれない?」
「了解ですぅ」
お風呂から上がって、わたしはうっとりと息を吐き出した。リズに洗ってもらった髪も身体も、一皮剥けたみたいにつるんと綺麗になった気がする。
肌があたたまって柔らかくなっているうちに顔面蜂蜜パックも終え、わたしはウキウキしながら裁縫箱を開いた。淑女のたしなみとして買い与えられてはいたが、一度も開けたことのなかったものだ。
「まずは針に慣れるつもりで、簡単な小物を作ってみましょうか」
「はぁーい」
わたしとリズはしばらくの間裁縫に熱中し、シュシュやらリボンやらマスコットやらを量産した。元がドギツイ色のドレスなもんだから、当然眼球に突き刺さる出来栄えだった。
「リズって見かけによらず、仕事が丁寧よねー。ちょっと地味っつーか守りに入ってるデザインだけど、そのシュシュすごく可愛い」
「お嬢様のマスコットは奇抜ですねぇ、可愛いの前にキモとかブサとかダサがつくカンジ」
失敬な、とは思ったが、その通りなので言い返せなかった。
「これが売れたら、ちゃんと取り分は渡すからね」
「わぁい、ユリアンヌお嬢様付きになれてラッキー。やりがいありますぅ」
(オーホッホ、わりあい計画通りに進みそうじゃない? そりゃ不安の種はあるけど、おおむね順調だわー)
つい顔中でニヤニヤと笑っていたら、リズが不思議そうな表情になって話しかけてきた。
「でもお嬢様ぁ、もう社交シーズンが始まってますけど、こんなことしてていいんですかぁ?」
「うーん、まあ大丈夫でしょ。しばらく病気療養を理由に引きこもるつもりだから、よろしく頼むわー」
そんなこんなでドレスをリメイクして運動着も作り、まずは自分で着て動いてみることにした。
揺れる二の腕、セルフでぶつかり合う腹の肉。デブなので身体は重いが、動きはまあまあ軽やかだった。わたしってばわりと動けるデブだったのだな。
(よかったー、これならざまぁ後の肉体労働もなんとかこなせそう! それに、運動したら健康的に痩せられるもんね。周囲の鼻を明かしてやりたいっていうより、単純にデブってることに嫌気がさしたわー)
不摂生と贅沢で蓄えた肉など、なんの役にも立たない。万が一ざまぁされて棺桶に入るとき、だらしなく太った身体を無理やりぎゅうぎゅう詰めにされるのはプライドが許さない。病気を理由に引きこもるなら、なおさら痩せるべきだし。
とにかく、次のお茶会までは子分たちにアルフレッド様の動向を探らせよう。その間はサーシャをわたしの名代にして方々に出かけさせ、社交界にとんでもねえ美人がいるって噂を流す。
(オーホッホ、そしてわたしはその間、ひっそりとハゲとデブの老後資金を稼ぐのよー。とにかく、目の前のことを猛烈に頑張らなきゃねっ!)
そして、瞬く間に三週間が過ぎた。
リズと一緒に裁縫しまくって、ジャックや料理長に指示を出しつつ子分どもが集めた情報を精査し、反復横跳びなどに勤しんでいれば、三週間などあっという間だった。
料理長が運んできてくれる料理と野草茶のおかげで、ひと回りもふた回りも痩せた。蜂蜜効果とリズの頭皮マッサージで髪質も変わったし、たくさんあったニキビもほとんどなくなった。
「おおおー、わりとクレオパトラみがあるかも?」
いま、わたしは鏡の前で蹲踞のポーズを取っている。ちなみに蹲踞とは、お相撲さんが土俵でしゃがむときのポーズである。
「わたしって、デビュリア遺伝子ちゃんと持ってたんだなー」
ハゲーザー遺伝子頑張りすぎ、と世の不平等を恨んでいたが、痩せてみるとわたしはちゃんとお母様にも似ていた。
まあ、もちろんひと目でお父様の娘だなーってわかるレベルだけど。でも今お母様と並ぶと、わりと共通点を見つけられると思う。
毛先の傷みはどうしようもなかったので、リズに頼んで、肩につかないくらいで切り揃えてもらった。
「そうは言ってもブスー。やっぱりブスー」
痩せたら激烈に美しくなりました、なんてのは幻想。あるわけなかった。
鏡の中のわたしは、ハゲーザーとデビュリアが残念なカンジに混ざってしまっている。鼻とか口元はハッキリクッキリなのに、目が一重なのが惜しすぎた。まあ、エキゾチックと言い張れないこともないだろうが。
ジャックが物置から取ってきて、リズと一緒にリメイクしたお母様のドレスを着る。部屋の中では運動着か、または病人らしく寝間着で過ごしていたので、ちゃんとしたドレスを着るのは久しぶりだ。
そして、両親を部屋に招き入れる。
「ままあ、なんて綺麗なのユリアンヌ! わたくしの若いころみたい! アルフレッド様もきっとびっくりなさるわ!!」
「おお、女神様も霞むほどの美しさだ! さすがワシの愛娘だなあ!」
という親馬鹿全開な言葉はすべて聞き流した。しかしまあ、かなりのデブは激流を下るように痩せるらしい。ふたりが感激するのも、当然っちゃ当然か。
「あ、お父様。顔色がよくなったわねー。それに、うっすら産毛みたいなのが生えてるわよ。これは赤ワイン効果かしら。お母様も、ちょっとだけど痩せたんじゃない?」
ハゲとデブに関しては、徐々にロハスに移行しないと暴動を起こしそうだったので、料理長に頼んで少しずつ健康メニューを取り入れている。いつまでも血液ドロドロでいられたんじゃ、ざまぁ後すぐに介護生活が始まっちゃうかもしれないしね。
(それにしても、まさか本当に生えるとはねー)
前世で患者仲間のおばちゃんに、「昔は卵の殻の内側にある薄い皮を洗って乾燥させて、焼酎に入れて育毛剤にしてた」って聞いた記憶があったから、赤ワインに突っ込んでみたんだけど。
(あとビワとかイチョウの葉とかドクダミとか、こっちの世界にも普通にあったから全部混ぜ込んだんだよねー。よかったー、これでハゲが垂れ流してた育毛剤代が浮いたわー)
わたしは手をパンッと合わせて、高らかに号令をかけた。
「じゃあ、今からわたしと一緒に運動しましょう。お父様とお母様のために、もっと髪が生えてもっと痩せる体操を編み出したの。ほら、わたしが動かぬ証拠でしょ?」
くびれのできたウエストに手を当て、オーホッホと高笑いをして見せる。両親の喉がごくりと鳴った。リズがすかさず、前世の体操着とハーフパンツをイメージして作った運動着を差し出す。
「はいお父様、お母様。腕を前から上にあげて大きく背伸びの運動よー」
「こ、これを続ければ本当にもっと髪が生えるのだな?」
「ハアハア、お、お腹周りの肉も落ちるのよね?」
「ほんとほんとー。暗闇を抜け出すための唯一の方法、それはやり抜くことよー。信じる者しか救われないのよー」
サーシャが王太子妃になれば、とりあえずデブとハゲの命は助かるはずだ。結婚を機に酷い目にあわされたゲッスール家をざまぁするにしても、親殺しってのは外聞が悪すぎるから、おそらく国外追放くらいで済むだろう。
「アマリアがどの程度食い込んでるかは、手下どもに情報収集させるとして。まずわたしが考えるべきは、いかに素早くサーシャを王太子妃にできるかってことだよねー」
壁の時計を見上げると、とっくに朝食の時間を過ぎていた。うーん、やっぱひとりくらいは侍女がいた方がいいかなあ。
「いくらデブスな婚約者が嫌になったからって、王家にはゲッスール家のこれまでの功績、功労まで忘れてもらっちゃ困るのよねー。サーシャはアルフレッド様と対になるような美人なんだから、アマリアなんざ足元にも及ばないわ。オーホッホ、一回会わせりゃあの堅物だってイチコロよー」
王太子妃になったサーシャの姿が脳裏をよぎり、その光の差すような美しさまで想像して、わたしは盛大に高笑いをした。
「わたしはとにかくハゲとデブのために命乞いのテクを磨かないとなー。新侯爵や王太子妃に、あんなクズい両親がいちゃダメだよね。やつらの老後は、わたしが背負わねば!」
爵位を剥奪されて市井に放り出されたとして、あの人たちにいまさら庶民以下の暮らしができるはずがない。カイルとサーシャの未来のために節約して、その中からちょびっとだけ、生活費を確保させてもらいたい。
自分でもちょっと甘いかな、とは思う。でもだいぶ年取った両親だし、方向性はまったく間違ってたけどわたしは可愛がってもらっちゃったし。やっぱり、恩は返したい。
周囲の大多数にとっては邪悪なハゲとデブだが、わたしには優しい親の顔を見せてくれたあの人たちを、どうして切り捨てることができようか。
「とりあえず、着替えるかー」
わたしは勢いよくクローゼットの扉を開け、そこに毒々しくてけばけばしいドレスばっかりかかっているのを見て、速攻で閉めた。
「なんだこの趣味の悪さ。いくらルデルヴァで派手に着飾るのが流行してるからって、これじゃチンドン屋さんだよー」
これらをロマンチックでありながらセクシーさの香る、お姫様ムード満点のドレスだと信じ込んでいたのだから始末が悪い。こんなの着た傲慢なデブは、さぞかし滑稽だったことだろう。
「お母様のとこ行ってドレス借りてくっか。よその親より高齢なだけあって、普段はわりとシンプルなの着てるし」
前世ではひとりっ子だったから、姉妹で洋服の貸し借りとか憧れてたんだけどなあ。
でも非道な姉すぎて、今サーシャに近づいたら逃げられるか泣かれるかのどっちかな気がする。それ以前にサーシャは細いから、とてもじゃないがサイズが合わない。
「お母様、ドレス貸して。あと地味めの靴とかも」
お母様の部屋を訪ねると、デブではあるがそこそこ美人なお母様は「おほほ」と軽やかに笑った。
「まあユリアンヌったら、どういう風の吹き回し? 昨日は少し様子が変だったけど、もう元気になったのかしら?」
「あー平気平気。ちょっと気分転換? みたいな感じだから、気にしないで。あ、この水色のドレスいいね、お上品」
「まあまあ、もしかしてアルフレッド様の趣味が変わったの?」
「いやー。まあ、そんな感じかなー」
お宅の娘さん、アルフレッド様に思いっきり嫌われてますがね。昨日だって執務が忙しいってんで会ってもらえませんでしたけどね。
「じゃあ、これ借りていくね。ありがとう」
「やだわユリアンヌったら、レディが軽々しくお礼なんて言わなくていいのよ」
いや、普通のレディはお礼くらい言いますし。お母様の教育方針謎だらけですし。
「……ところで。お父様は朝っぱらから、どうしてお酒を召し上がっているのかしら?」
わたしは顎をしゃくって、ご機嫌に酔っぱらっているハゲを睨みつけた。ゲスい性格同士で気が合うのか、こいつらはどっちかの部屋で一緒に過ごしていることが多い。
「おおユリアンヌ。おまえも飲みなさい、東洋の神秘の酒だよ」
頭皮トラブル抱えまくりのハゲめ、またクッソ高い酒飲みやがって。
「やだー、お父様おっくれってるぅ。ご存じないの? 我が国が誇る赤ワインには発毛効果があるのよ?」
カイルとサーシャのためにも、これ以上散財されてたまるかと、わたしはお父様の手からグラスを取り上げた。
「そ、それは本当か? 本当にそうなのか?」
「ほんとほんと。飲んでよし塗ってよし。そんな高いお酒なんか飲むから、毛根がびっくりして死ぬのよー」
何しろ我が国はブドウの産地。ワインはめっちゃ安く手に入る。急にやめられないならまずは酒代を減らして、そのあとで酒量を減らしていこう。
それに、発毛効果がありますーみたいな記事、前世で読んだ気がするからたぶん生えるだろう。信じるものは救われる、それいけプラシーボ効果!
「お、おいおまえ、早速赤ワインを買ってこい。ワシに相応しい最高級のやつだ!」
わたしは慌てて出ていこうとする執事を呼び止める。
「渋くてえぐみがある方がハゲには効くからー、安いやつ買ってきてー」
「そ、そうなのか。ならば一番安いワインを買い占めてこい!」
まあ備蓄はあってもいいしな。わたしは執事に、違うワイナリーを回って五本くらい買ってくるようにと付け加えた。安くても飲み比べりゃお気に入りも見つかるだろう。
「そうだわユリアンヌ、元気になったのなら楽団でも呼びましょうか?」
「あー、遠慮しとく。なんか外出疲れっていうか、部屋の掃除とかもしたいから」
「まああユリアンヌ、どうしちゃったの。そんなの使用人にやらせればいいのよ」
「やだー、お母様もおっくれってるぅ。時代はロハスよ、ロハス。身も心も健康で美しくなきゃレディとは言えないわ」
「ロ、ロハス?」
「簡単に言えば、粗食で健康! 身体を動かしてさらに健康! いらないものは整理して内面から美しくってことね。よその国で流行ってるんですって。知らなきゃ最先端とは言えないわよ?」
「あら、そうなの? じゃあ、ちょっとクローゼットの整理でもしようかしら」
「さすがお母様だわ、最先端! もう着ないドレスはじゃんじゃか出しちゃって!」
散財しまくりのお母様のクローゼットからは、きっと金目のものがザクザク出てくるだろう。
(老後資金確保のためにも、売れるものはみんな売らなきゃ。でも、貴族の持ち物を売り払えるフリマとか、お気軽なリサイクルショップはさすがにないだろうなあ。どうしたもんかなあ)
箱入りで育ってしまったせいで、市井のことはイマイチよくわからない。そこらへんも、どうにかする必要があるだろう。
わたしは自分の部屋に戻り、わりと地味めな水色のドレスに着替えた。
「やっぱり、手足となって動いてくれる人材が必要ねー。何人か脅す……いや面接してみようかしらー」
うーん、とわたしは頭を掻く。ぬるっとしているのにざらつくという謎の手触りに、口がへの字になった。
「ああもう。お風呂入りたいけど、高い金払って買った洗髪剤も石鹸も、まるで効き目がないしなー。まてよ、たしか蜂蜜でシャンプーが作れるんじゃなかったっけ?」
前世で患者仲間だったオーガニック大好きお姉さんが、アレコレ教えてくれたよな。試してみる価値はありそうだ。
いまさら美しくなったところで、わたしが迎える結末はめでたいものじゃないんだけど。とはいえ腐っても侯爵令嬢としては、みっともない姿は見せたくないじゃないか。せめて散り際くらいは美しくありたいじゃないか。
わたしは机に置かれた蜂蜜の瓶に手を伸ばした。こんなところにお気軽に蜂蜜が置かれているのは、デブなわたしが紅茶に大量投入していたせいである。
「うちの領地で採れた蜂蜜は上質で混ぜ物一切なしだし。これとぬるま湯と、あと重曹があれば、ツヤ髪効果のあるシャンプーが作れるはず。たしか、蜂蜜をダイレクトに顔に塗ってもよかったような……」
ゲッスール家の領地は北の方にあるため陰気で寒いのだが、短い春から夏にかけて、ほぼ手つかずの土地に咲きっぱなしの花々やクローバーのおかげで、それは美味しい蜂蜜が採れるのだ。
「患者仲間におばあちゃんの知恵的なものも、いっぱい聞いたもんなー。ドクダミとかハーブとか、そんなのが庭に生えてないかな。無料で口に入れられるものは、なんでも活用しなきゃ」
時間は有限、ここはさくさく進めないと。わたしは本棚から図鑑を取り出して、意気揚々と庭へ出た。
さすがに金持ってるだけあって、我が家の敷地は無駄に広い。今まで散策なんかしたことなかったから、図鑑片手にあちこち彷徨ってると、まったく予想外の展開になった。
「あなたたち、我が家の裏庭で乳繰り合うとは度胸あるわねー……」
「ひいっ! どうかどうかお許しをーっ!」
ジャックというらしい下働きの男が、地べたに額をこすりつけんばかりに謝り倒す。
「えーっと、すみませんでしたぁ」
新人侍女であるらしいリズがにへらっと笑った。うーむ、怒れるわたしを前にしてのこの態度、おぬしなかなかやりおるな。
ジャックとリズは、あろうことか裏庭の一角でくんずほぐれつしていやがったのだ。それを見つけたときのわたしこそ「ひいっ」ってなもんである。
我が家では、使用人同士の交際は〝風紀が乱れる〟という理由で許可されていない。
ちなみに前世の記憶が戻る前、わたしは絶好調の恋人同士がひたすら憎かったので、見つけ次第クビにしていた。
「そうねー、あなたたちがわたしの言うことをなんでも聞くっていうのなら、許してあげないこともないわ。もちろん、うちの家族にも他の使用人にも、すべて極秘よ。王都は不景気、就職難の今、うちをクビにされるのは困るわよねー?」
ジャックとリズはうんうんとうなずいた。やった、侍女となんでも屋ゲットだぜ。
「ちょうどよかったわー。さっき気分転換にあっちらへんを彷徨ってたら、お母様専用の物置小屋を見つけたのよ。でも、みっちみちに詰まってて中に入れなかったの。たぶん若いころのドレスとか、買ってはみたものの秒で飽きたダイエット器具とかが詰め込まれてると思うんだけど。ジャック、整理しといてー」
「了解です! 俺、力だけは自信あるんで速攻で終わらせますよっ!」
わりとモブっぽい顔でジャックは笑った。髪も瞳もグレーでこれまたモブっぽいが、のんびりした雰囲気はまさに癒し系男子。いや、癒し系は裏庭で乳繰り合わないか。
「じゃあ、リズはわたしについてきて。よさげな野草を見つけたから、摘むのを手伝ってほしいの」
「はぁーい」
リズがチャーミングな笑顔を輝かせた。ウェーブのかかった赤毛を侍女らしくまとめてるけど、両サイドにふわふわっとおくれ毛が出てる。ヘーゼルの瞳がとろけるように緩いっていうか、激烈な色気のある娘さんだ。
「あなた、最近うちに入ったのよね? 誰付きになりたいとか、このポジションにつきたいとか、そういった目標とかあるの?」
「目標ですかぁ? えーっと、婚活です!」
「潔いな。気に入ったわ」
度胸ありそうだし、昨日までのわたしをあんまり知らないだろうし、この子ならそばに置いといても気が楽だ。
「お嬢様ぁ、あっちの草も食べられますよ。食べてよし、塗ってよし、煎じて飲んでもよしですぅ。あ、あそこのじめっとしたところに生えてるキノコ、あれも美味しいですよぉ」
「へー、詳しいのねー」
「ちっちゃいころに親が死んじゃってぇ。親戚中をたらい回しにされながら育ったんですけど、ご飯にありつけない日が多かったんですよねぇ。だから早くあたたかい家庭を作りたくて、ここでお金貯めるついでに相手探そうと思って!」
「可愛いじゃねえかこんちくしょうぅっ!」
リズと一緒にあれもこれもと摘んで回ると予想外に大量だったので、リズの侍女服のエプロンをびよーんと伸ばして全部載せた。
「これをさー、なんとか調理して飲んだり食べたりしたいんだけど。うちにいる料理人で、そういうのが得意な人っているかなー」
何しろ我が家の食卓ときたら、朝から晩まで贅沢三昧だ。好きなものを好きなだけ食べられるのは豊かな行為だと思っていたけれど、このままでは健康にも家計にもよろしくない。
採れたてのヘルシーな食材を調理してもらう方がよほど贅沢だし、いかにもロハスっぽくて身体にもいいだろう。さらには節約にもなって一石二鳥。
「ズバッと料理長さんに相談したらどうですかぁ? この時間なら、きっと畑にいると思いますぅ」
「それもそうだよねー。ところで料理長ってどんな人? わたし、自分で台所に行ったことなくてさー」
「えーと。すごく男らしいっていうか、『半端なヤンチャはしねえぜ』みたいな人ですねぇ」
なるほどわけわからん、と首をひねりながらしばらく歩くと、やがて家庭菜園的なものが見えてきた。
『立ち入り禁止(入ったら殺す)』と書かれた札が見えたが、なんたってわたしなのでそんなもん気にするわけがない。この屋敷にわたしを殺せる人間は、まだ今のところいないはずだし。
「うふふ、インゲン豆ちゃんもオクラちゃんも立派に育ったわねえ。待っててね、アタシが美味しく調理してあげるわよ」
リズと一緒に背の高い野菜やら花やらを掻き分けていると、野太い声が耳に届いた。緑のカーテンの隙間から覗くと、硬そうな茶髪の毛を強風に煽られたように逆立てた偉丈夫が、しゃがみ込んで土をいじっている。こちらの気配に気付いたのか、はっとしたように顔を上げた。
「やだわ、また野豚が入ってきたのかしら。んもう、困っちゃうわねえ。捕まえてローストポークにしようっと」
焼き豚にされてはたまらないので、わたしは緑の向こう側にぐっと顔を突き出す。
「オーホッホ、野豚ことユリアンヌ・ゲッスールよー」
「ユリアンヌお嬢様っ!?」
立ち上がった料理長の身体には厚みがあり、見るからにたくましい。声だって低くて太いが、ゴリゴリマッチョでも中身が乙女ってことはあるだろう。偏見や差別はよろしくない、てか気にならない。
「仕事中悪いんだけどさー、ちょっと協力してほしいことがあるのよ。あ、性的指向とか性自認とか、そういうので脅すつもりはないから。隠してるなら誰にも言わないし。嫌だったら、断ってくれていいよー」
「え、いや、あの」
「あのさー、そこらへんに生えてる草を飲んだり食べたりしたいの。つまり、節約と健康を両立させた料理が食べたいんだけど、うちの料理人で適任はいるかなー。できたら、口が堅いタイプで」
料理長はゴツイ手を頬に当てて、青い瞳でじっとわたしを見つめていた。そしてしばらくののち、唇をすぼめてうふふと笑った。
「面白そうだし、アタシがやります」
あんまり自然な笑顔だったので、つられてわたしも笑った。やったぜ、料理人ゲットだぜ。
草やらキノコやらを料理長に託してリズと一緒に部屋に戻ると、お母様が部屋をノックしてきた。扉の向こうから、心配げな声がする。
「ユリアンヌ、ちょっといいかしら。あなた、侍女たちをみんな追い出したそうじゃないの。いったいどうしちゃったの?」
いや、単に未来の王太子妃たるサーシャにこそ、たくさんの侍女の手が必要ってだけですけど? しかし掛け値なしの思いとはいえ、今の段階でお母様に知られるわけにもいくまい。
「ハアハア……た、体調が悪くて……しばらく、静かに過ごしたいのよ。侍女なら、ひとり、いるから」
わたしは扉を開けずに、とりあえず切羽詰まった声でそう答えた。ブリッジしながら。これ、マジでつらそうな声が出せるのでオススメ。
「まああユリアンヌ!? とても苦しそうよ、すぐにお医者様を呼ぶわ!」
「だ、だいじょぶ、寝てれば治る、から。ハアハア、しばらく、ゆっくりさせて。他の侍女たちには、サーシャの身の回りの世話を、させておいて」
「で、でも」
「ただ飯食わせるのは、もったいない、でしょ」
「ユリアンヌがそう言うなら……。じゃあ、目が覚めたら必ずお医者様に診て頂くのよ?」
「わ、わかっ、わかったわ」
ブリッジ、うまくできなくても問題ナッシング。何せ、下手なほどリアルに苦しそうな声が出せるから。
それに、デブは普通にしてても肉で喉が圧迫されてるからな。ブリッジなんかしたら、もうカッスカスの声しか出ない。たぶん、優勝決定戦直後の力士の方がもうちょっとまともに喋れると思う。
お母様の足音が遠ざかっていくのを確認して、わたしは仰向けに寝転んだ。
「ふー。ブリッジとか、このダルダルの身体にはキツすぎたわ。マジで疲れたわ。しかし休んでいる暇はない。さあリズ、まずはお風呂よ!」
はぁーい、と大変いいお返事が返ってきた。
普通ならわたしの心理状態を把握しきれず戸惑う場面だろうに、リズは勝手にソファに腰掛けてくつろいでいた。こいつ、強い。
溺愛されまくりの我儘娘なので、風呂とトイレは部屋に隣接している。リズに早速風呂の準備をさせて、ぬるま湯に溶かした蜂蜜で丁寧に髪を洗ってもらった。うーん、超気持ちいい。
「ねえ、リズ。使い道のない不要品をこっそり売りさばける店とか、知ってたりしないかしらー? わたしってば詮索されるのが嫌いだから、貴族に気付かれたくないのよね。ていうか、カイルに知られるのだけは、わたしの傲慢なプライドが許さないというかー」
食費と美容代の節約はなんとかなりそうだけど、ハゲとデブの老後資金を貯めないといけない。でも、誰かに知られてカイルからのざまぁが早まるのは、絶対に避けたい。
「カイル様にバレずに不要品を売りさばける場所ですかぁ? たしか、農業組合が毎週青空市場を開いてるから、そこでなら……あ、でもあそこは農産物とか、手作りの工芸品や雑貨を売るところだっけ」
「手作り! いいじゃない、それっ!」
わたしが庶民に交ざろうとするなんて誰も考えないだろうし、それならバレずに粛々とやれそうだ。しかし、派手すぎるドレスはそのままじゃ確実に売れないだろうし、なんとか工夫ができないものか。
そうだ、目に痛い毒々しい色の布地を切り裂いて、パッチワークにしてあれこれ小物を作るのはどうだろう。何しろ前世のわたしは長期入院のプロ。ベッドの上でできる裁縫は趣味のひとつだった。
「リズ、あなたお裁縫はできる?」
「できますよぉ。裁縫も掃除も洗濯も料理も、ぜーんぶ得意ですぅ」
「頼もしいわー。お母様の古いドレスも、リメイクして着たいのよねー。あ、そうだ。お風呂から上がったら、早速運動着を作るの手伝ってくれない?」
「了解ですぅ」
お風呂から上がって、わたしはうっとりと息を吐き出した。リズに洗ってもらった髪も身体も、一皮剥けたみたいにつるんと綺麗になった気がする。
肌があたたまって柔らかくなっているうちに顔面蜂蜜パックも終え、わたしはウキウキしながら裁縫箱を開いた。淑女のたしなみとして買い与えられてはいたが、一度も開けたことのなかったものだ。
「まずは針に慣れるつもりで、簡単な小物を作ってみましょうか」
「はぁーい」
わたしとリズはしばらくの間裁縫に熱中し、シュシュやらリボンやらマスコットやらを量産した。元がドギツイ色のドレスなもんだから、当然眼球に突き刺さる出来栄えだった。
「リズって見かけによらず、仕事が丁寧よねー。ちょっと地味っつーか守りに入ってるデザインだけど、そのシュシュすごく可愛い」
「お嬢様のマスコットは奇抜ですねぇ、可愛いの前にキモとかブサとかダサがつくカンジ」
失敬な、とは思ったが、その通りなので言い返せなかった。
「これが売れたら、ちゃんと取り分は渡すからね」
「わぁい、ユリアンヌお嬢様付きになれてラッキー。やりがいありますぅ」
(オーホッホ、わりあい計画通りに進みそうじゃない? そりゃ不安の種はあるけど、おおむね順調だわー)
つい顔中でニヤニヤと笑っていたら、リズが不思議そうな表情になって話しかけてきた。
「でもお嬢様ぁ、もう社交シーズンが始まってますけど、こんなことしてていいんですかぁ?」
「うーん、まあ大丈夫でしょ。しばらく病気療養を理由に引きこもるつもりだから、よろしく頼むわー」
そんなこんなでドレスをリメイクして運動着も作り、まずは自分で着て動いてみることにした。
揺れる二の腕、セルフでぶつかり合う腹の肉。デブなので身体は重いが、動きはまあまあ軽やかだった。わたしってばわりと動けるデブだったのだな。
(よかったー、これならざまぁ後の肉体労働もなんとかこなせそう! それに、運動したら健康的に痩せられるもんね。周囲の鼻を明かしてやりたいっていうより、単純にデブってることに嫌気がさしたわー)
不摂生と贅沢で蓄えた肉など、なんの役にも立たない。万が一ざまぁされて棺桶に入るとき、だらしなく太った身体を無理やりぎゅうぎゅう詰めにされるのはプライドが許さない。病気を理由に引きこもるなら、なおさら痩せるべきだし。
とにかく、次のお茶会までは子分たちにアルフレッド様の動向を探らせよう。その間はサーシャをわたしの名代にして方々に出かけさせ、社交界にとんでもねえ美人がいるって噂を流す。
(オーホッホ、そしてわたしはその間、ひっそりとハゲとデブの老後資金を稼ぐのよー。とにかく、目の前のことを猛烈に頑張らなきゃねっ!)
そして、瞬く間に三週間が過ぎた。
リズと一緒に裁縫しまくって、ジャックや料理長に指示を出しつつ子分どもが集めた情報を精査し、反復横跳びなどに勤しんでいれば、三週間などあっという間だった。
料理長が運んできてくれる料理と野草茶のおかげで、ひと回りもふた回りも痩せた。蜂蜜効果とリズの頭皮マッサージで髪質も変わったし、たくさんあったニキビもほとんどなくなった。
「おおおー、わりとクレオパトラみがあるかも?」
いま、わたしは鏡の前で蹲踞のポーズを取っている。ちなみに蹲踞とは、お相撲さんが土俵でしゃがむときのポーズである。
「わたしって、デビュリア遺伝子ちゃんと持ってたんだなー」
ハゲーザー遺伝子頑張りすぎ、と世の不平等を恨んでいたが、痩せてみるとわたしはちゃんとお母様にも似ていた。
まあ、もちろんひと目でお父様の娘だなーってわかるレベルだけど。でも今お母様と並ぶと、わりと共通点を見つけられると思う。
毛先の傷みはどうしようもなかったので、リズに頼んで、肩につかないくらいで切り揃えてもらった。
「そうは言ってもブスー。やっぱりブスー」
痩せたら激烈に美しくなりました、なんてのは幻想。あるわけなかった。
鏡の中のわたしは、ハゲーザーとデビュリアが残念なカンジに混ざってしまっている。鼻とか口元はハッキリクッキリなのに、目が一重なのが惜しすぎた。まあ、エキゾチックと言い張れないこともないだろうが。
ジャックが物置から取ってきて、リズと一緒にリメイクしたお母様のドレスを着る。部屋の中では運動着か、または病人らしく寝間着で過ごしていたので、ちゃんとしたドレスを着るのは久しぶりだ。
そして、両親を部屋に招き入れる。
「ままあ、なんて綺麗なのユリアンヌ! わたくしの若いころみたい! アルフレッド様もきっとびっくりなさるわ!!」
「おお、女神様も霞むほどの美しさだ! さすがワシの愛娘だなあ!」
という親馬鹿全開な言葉はすべて聞き流した。しかしまあ、かなりのデブは激流を下るように痩せるらしい。ふたりが感激するのも、当然っちゃ当然か。
「あ、お父様。顔色がよくなったわねー。それに、うっすら産毛みたいなのが生えてるわよ。これは赤ワイン効果かしら。お母様も、ちょっとだけど痩せたんじゃない?」
ハゲとデブに関しては、徐々にロハスに移行しないと暴動を起こしそうだったので、料理長に頼んで少しずつ健康メニューを取り入れている。いつまでも血液ドロドロでいられたんじゃ、ざまぁ後すぐに介護生活が始まっちゃうかもしれないしね。
(それにしても、まさか本当に生えるとはねー)
前世で患者仲間のおばちゃんに、「昔は卵の殻の内側にある薄い皮を洗って乾燥させて、焼酎に入れて育毛剤にしてた」って聞いた記憶があったから、赤ワインに突っ込んでみたんだけど。
(あとビワとかイチョウの葉とかドクダミとか、こっちの世界にも普通にあったから全部混ぜ込んだんだよねー。よかったー、これでハゲが垂れ流してた育毛剤代が浮いたわー)
わたしは手をパンッと合わせて、高らかに号令をかけた。
「じゃあ、今からわたしと一緒に運動しましょう。お父様とお母様のために、もっと髪が生えてもっと痩せる体操を編み出したの。ほら、わたしが動かぬ証拠でしょ?」
くびれのできたウエストに手を当て、オーホッホと高笑いをして見せる。両親の喉がごくりと鳴った。リズがすかさず、前世の体操着とハーフパンツをイメージして作った運動着を差し出す。
「はいお父様、お母様。腕を前から上にあげて大きく背伸びの運動よー」
「こ、これを続ければ本当にもっと髪が生えるのだな?」
「ハアハア、お、お腹周りの肉も落ちるのよね?」
「ほんとほんとー。暗闇を抜け出すための唯一の方法、それはやり抜くことよー。信じる者しか救われないのよー」
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