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3章:探求
出掛ける準備
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伊吹に呼ばれた蓮也は、伊吹の尻尾がぶわわと膨らんでいることに気付き、背後から彼女の肩に手を置く。
「どうし――……架瑠、それは……」
「……目立ちます?」
「とっても」
こくり、と蓮也はうなずいた。
七月某日。七分丈のパジャマで寝ていたため、架瑠の首元と足首の手の痕はすっかりと彼らに見えてしまい、なにがあったのかと心配そうに問われる。
「伊吹、まずは手当てをしないと」
「そうだね、足首のほうは血も結構出ちゃってるし」
えっ? と視線を落として足首を見ると、彼女の言う通り血がじわりとにじんでいた。
「るーくんは座ってて!」
そう言い残して、伊吹は救急箱を取りにいく。蓮也は架瑠の手を掴んで、ベッドまで移動して座らせる。
「例の夢かい?」
「……はい」
「ついに夢で起きたことも、現実に……」
蓮也が表情を歪めた。
加茂家には結界が張ってある。蓮也が作り上げた強力な結界が。
しかし、架瑠の夢は加茂家の結界を通り越して、彼自身を攻撃してしまう。
その理由を、蓮也は知っている。
だが、どうしても話せない。話すことが正しいとは思えない。
「枕にお守りでも縫い付けようか?」
「いや、それはちょっと……お守りに頭を乗せるのはちょっと……」
ぶんぶんと勢いよく頭を振る架瑠に、蓮也は「そうだよねぇ」と肩をすくめた。
今はまだ、架瑠にすべてを話したくないと思うのは、自分のエゴだろうかと蓮也は思考を巡らせる。
「ごめん、お待たせ!」
伊吹が救急箱を持って架瑠の部屋に入る。すぐに彼の足首の傷を消毒して、包帯を巻いた。
「今日、オカルト研究部の人たちと一緒に、合宿の買い出しでしょ? 間に合う?」
「うん、六郷さんが車で迎えにきてくれるから。茉莉の家とも近いしね」
「荷物が多くなりそうだねぇ。じゃあ、伊吹。架瑠のことを頼むよ。オレはちょっと用事があるから」
蓮也はぽんと架瑠の頭を優しく撫でてから、彼の部屋から出ていく。その後ろ姿を見送り、架瑠は伊吹に視線を移す。
「あの、首元、どうしよう……?」
途方に暮れたような表情の架瑠に、伊吹はうーん、と唸った。
足首の包帯は、デニムパンツと靴下でなんとかなるだろう。
薄く血がにじんでいた首元も消毒して、包帯を巻いてからハッとしたように顔を上げる。
「確か、夏用のストールがあったはず!」
使い終わったものを片付けてから、伊吹は救急箱を持って架瑠の部屋から出ていき、すぐにストールを持ってきて彼に見せた。
「じゃーん! 良い色でしょ? れんちゃん全然使わないから、借りちゃお!」
伊吹が見せたのは大判の薄いストールだった。色はレモンイエローと明るいもの。
確かに一度も蓮也が使っている姿は、見たことがない。
「どうし――……架瑠、それは……」
「……目立ちます?」
「とっても」
こくり、と蓮也はうなずいた。
七月某日。七分丈のパジャマで寝ていたため、架瑠の首元と足首の手の痕はすっかりと彼らに見えてしまい、なにがあったのかと心配そうに問われる。
「伊吹、まずは手当てをしないと」
「そうだね、足首のほうは血も結構出ちゃってるし」
えっ? と視線を落として足首を見ると、彼女の言う通り血がじわりとにじんでいた。
「るーくんは座ってて!」
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「例の夢かい?」
「……はい」
「ついに夢で起きたことも、現実に……」
蓮也が表情を歪めた。
加茂家には結界が張ってある。蓮也が作り上げた強力な結界が。
しかし、架瑠の夢は加茂家の結界を通り越して、彼自身を攻撃してしまう。
その理由を、蓮也は知っている。
だが、どうしても話せない。話すことが正しいとは思えない。
「枕にお守りでも縫い付けようか?」
「いや、それはちょっと……お守りに頭を乗せるのはちょっと……」
ぶんぶんと勢いよく頭を振る架瑠に、蓮也は「そうだよねぇ」と肩をすくめた。
今はまだ、架瑠にすべてを話したくないと思うのは、自分のエゴだろうかと蓮也は思考を巡らせる。
「ごめん、お待たせ!」
伊吹が救急箱を持って架瑠の部屋に入る。すぐに彼の足首の傷を消毒して、包帯を巻いた。
「今日、オカルト研究部の人たちと一緒に、合宿の買い出しでしょ? 間に合う?」
「うん、六郷さんが車で迎えにきてくれるから。茉莉の家とも近いしね」
「荷物が多くなりそうだねぇ。じゃあ、伊吹。架瑠のことを頼むよ。オレはちょっと用事があるから」
蓮也はぽんと架瑠の頭を優しく撫でてから、彼の部屋から出ていく。その後ろ姿を見送り、架瑠は伊吹に視線を移す。
「あの、首元、どうしよう……?」
途方に暮れたような表情の架瑠に、伊吹はうーん、と唸った。
足首の包帯は、デニムパンツと靴下でなんとかなるだろう。
薄く血がにじんでいた首元も消毒して、包帯を巻いてからハッとしたように顔を上げる。
「確か、夏用のストールがあったはず!」
使い終わったものを片付けてから、伊吹は救急箱を持って架瑠の部屋から出ていき、すぐにストールを持ってきて彼に見せた。
「じゃーん! 良い色でしょ? れんちゃん全然使わないから、借りちゃお!」
伊吹が見せたのは大判の薄いストールだった。色はレモンイエローと明るいもの。
確かに一度も蓮也が使っている姿は、見たことがない。
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