オカルト研究部員の非日常な日常

秋月一花

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2章:異存

銀華のお願い 2話

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 架瑠かけるは軽く頬をかき、視線をつむぎに移した。彼は架瑠がなにを伝えたいのかを理解したらしく、すっと手のひらを上にして、炎を繰り出す。

「案内は任せた」
「うん、こっちだよ」

 扉を開けて、紬の炎で周辺の雪を溶かしながら目的地に向かう。架瑠の脳裏には、銀華ぎんかの恋人までの道のりが浮かんでいて、それを頼りに足を進めた。

 しばらく歩いたところで、架瑠が足を止める。そこに広がっていたのは、大きな湖だった。もちろん、湖も凍っているが……

「あそこよ」

 つい、と銀華が指したのは、湖上の真ん中。架瑠は目を細めてそれを視て――ぞくりと鳥肌が立った。

「血……?」

 凍っている湖。うねるような血だまりに、赤い筋が湖面を這っている。

 架瑠は夢の内容を思い出し、ズキッと頭が痛んだが、すぐに気を取り直して紬を見上げた。

「あいつを溶かせばいいのか?」
「ええ、お願いできる?」

 銀華はこくりとうなずいたのを見て、つむぎはこの場所から炎を操り、氷を溶かそうとする。遠目だから、人が凍っているかはわからない。

 だが――架瑠はじっと目を凝らして前方を見つめる。彼の紫苑の瞳が淡く光り――氷漬けにされている男性が見えた。

 氷漬けにされていても生きているようで、この氷華界の住民なのだと感じたのとともに、笑みを浮かべていることに気付き、ぐっと拳を握った。なぜ、笑っているのだろう、と。

「しかし壮観だね! 白銀の世界に大きな湖、湖上で氷漬けにされている男性――……実に素晴らしいシチュエーション!」

 佑心の興奮したような弾んだ声に応えるように、湖上の氷がビキビキとひび割れていく。湖の色が、どんどんと血のように赤く染まっていき、架瑠の心臓は締め付けられるように痛くなった。

(――まるで、あの夢のようだ――……)

 架瑠がなにも言えずにいると、茉莉まつりが湖の色に気付き「ひっ!」と短い悲鳴を上げる。

 恐怖心からか伸ばしてきた茉莉の手を握ろうとした瞬間、なにかが架瑠の脳裏によぎった。だが、あまりにもかすれていてわからない。

 鉄のような匂いが漂い、茉莉はカタカタと震え出した。佑心も異変に気付き、彼女を庇うように前に出る。

「……なにか、くる!」

 架瑠の言葉と同時に、氷の刃が襲いかかってきた。何本なのかは定かではない。紬が「チッ」と舌打ちをして紅蓮の炎で架瑠たちを囲い込み、氷の刃から守ってくれた。

「あ、ありがとう……」
「まだくるよ!」
「あんっの、浮気男! 凝りてないようね!」

 銀華が叫び、氷漬けの人に近付こうとする。それを止めたのは茉莉だった。彼女は茉莉の真剣な表情で顔を左右に振るのを見て、ぐっと唇を噛み締める。

「……ね」
「……なんだ?」
「笑いながら、凍れ」
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