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2章:異存
加茂家で紬と 1話
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◆◆◆
紬が転入してきてから約一ヶ月の月日が経った。そろそろ中間テストの時期だ。だが、五月下旬から急に雪が降り続け、積もってしまい、身体がついていかないのか体調を崩す生徒が増えてきた。
五月中旬には体育祭があり、その頃はまだ雪は積もっていなかった。急激に襲いかかってきた寒波に、佑心は興奮したように目を輝かせ、『これはきっとなにかあるね!』と体育祭が終わってからの部活で声を弾ませていたのは記憶に新しい。
そして現在、六月上旬の中間テスト一週間前。
部活動禁止期間に入り、架瑠たちは家に帰ってテスト勉強をする期間になったのだが、寒さに凍える生徒たちが多いからか登校している生徒の数は少なくなった。
むしろ、教員たちもこの寒さについていけないらしく、休む人も多いようで自習の時間が増えてしまった。
「倉橋。……頼みが、あるのだが」
「おれに?」
下校時間になり、架瑠は家に帰ろうと鞄を背負ったのと同時に、紬に声をかけられる。
「テスト範囲を確認したい」
「ああ、うん。いいよ。ちょっと待ってて」
架瑠はスマートフォンを取り出して、電話をかける。すぐに蓮也が出たので、転入生の紬と一緒に離れで勉強したいと話すと、彼はすぐに『いいよ。架瑠の友人ならいつでも歓迎さ』と言ってくれた。
「それじゃあ、おれが住んでいる家でいい?」
「ああ。そこまで六郷に送らせる」
「えっ、でも……あんなに立派な車、おれが乗って大丈夫なのか……?」
紬が転入してきた日からずっと、黒塗りの車が学校の門の前で待っていた。何度か「ここに停めるな」と抗議していたようだが、さすがに一ヶ月も続けば諦めもついたらしい。
「車は人を乗せるもんだろ」
「そうだけど……」
とりあえず、このまま教室で話しているよりは、と校門に向かう。やはり車が停まっていた。
「おや?」
「今日は倉橋の家に寄る。こいつも乗せろ」
「えっと、よろしくお願いします……?」
「かしこまりました。お乗りください」
さっと後部座席のドアを開ける六郷に、会釈をしてから車に乗り込む。ふかふかとしたシートはこれまで乗ったどの車よりも心地良く、こんなに高級そうな車に平然と乗っている紬はいったい何者だろうと疑問を抱く。
「あの、加茂家ってわかりますか?」
「加茂家ですか? わかりますよ」
「でしたら、そこで降ろしてください」
六郷にそうお願いすると、すぐに「かしこまりました」と返事がきた。雪が積もっているのでゆっくりとした安全運転だったが、歩くよりは早い。
加茂家の前に駐車し、再び六郷が後部座席のドアを開けたので架瑠たちは外に出る。
「おや、立派な車だこと」
車の音に気付いたのか、蓮也がわざわざ玄関を開けて、架瑠たちを視界に入れた。その後ろには警戒したように毛並みを逆立てている伊吹の姿もあった。
「おや……猫又、ですか」
「ええ、可愛いでしょう? そういうあなた方は……『鬼』ですか」
にっこりと微笑み合う六郷と蓮也。鬼? と疑問を抱き視線を紬に向ける架瑠。
紬は面倒くさそうに、髪をかき上げた。
紬が転入してきてから約一ヶ月の月日が経った。そろそろ中間テストの時期だ。だが、五月下旬から急に雪が降り続け、積もってしまい、身体がついていかないのか体調を崩す生徒が増えてきた。
五月中旬には体育祭があり、その頃はまだ雪は積もっていなかった。急激に襲いかかってきた寒波に、佑心は興奮したように目を輝かせ、『これはきっとなにかあるね!』と体育祭が終わってからの部活で声を弾ませていたのは記憶に新しい。
そして現在、六月上旬の中間テスト一週間前。
部活動禁止期間に入り、架瑠たちは家に帰ってテスト勉強をする期間になったのだが、寒さに凍える生徒たちが多いからか登校している生徒の数は少なくなった。
むしろ、教員たちもこの寒さについていけないらしく、休む人も多いようで自習の時間が増えてしまった。
「倉橋。……頼みが、あるのだが」
「おれに?」
下校時間になり、架瑠は家に帰ろうと鞄を背負ったのと同時に、紬に声をかけられる。
「テスト範囲を確認したい」
「ああ、うん。いいよ。ちょっと待ってて」
架瑠はスマートフォンを取り出して、電話をかける。すぐに蓮也が出たので、転入生の紬と一緒に離れで勉強したいと話すと、彼はすぐに『いいよ。架瑠の友人ならいつでも歓迎さ』と言ってくれた。
「それじゃあ、おれが住んでいる家でいい?」
「ああ。そこまで六郷に送らせる」
「えっ、でも……あんなに立派な車、おれが乗って大丈夫なのか……?」
紬が転入してきた日からずっと、黒塗りの車が学校の門の前で待っていた。何度か「ここに停めるな」と抗議していたようだが、さすがに一ヶ月も続けば諦めもついたらしい。
「車は人を乗せるもんだろ」
「そうだけど……」
とりあえず、このまま教室で話しているよりは、と校門に向かう。やはり車が停まっていた。
「おや?」
「今日は倉橋の家に寄る。こいつも乗せろ」
「えっと、よろしくお願いします……?」
「かしこまりました。お乗りください」
さっと後部座席のドアを開ける六郷に、会釈をしてから車に乗り込む。ふかふかとしたシートはこれまで乗ったどの車よりも心地良く、こんなに高級そうな車に平然と乗っている紬はいったい何者だろうと疑問を抱く。
「あの、加茂家ってわかりますか?」
「加茂家ですか? わかりますよ」
「でしたら、そこで降ろしてください」
六郷にそうお願いすると、すぐに「かしこまりました」と返事がきた。雪が積もっているのでゆっくりとした安全運転だったが、歩くよりは早い。
加茂家の前に駐車し、再び六郷が後部座席のドアを開けたので架瑠たちは外に出る。
「おや、立派な車だこと」
車の音に気付いたのか、蓮也がわざわざ玄関を開けて、架瑠たちを視界に入れた。その後ろには警戒したように毛並みを逆立てている伊吹の姿もあった。
「おや……猫又、ですか」
「ええ、可愛いでしょう? そういうあなた方は……『鬼』ですか」
にっこりと微笑み合う六郷と蓮也。鬼? と疑問を抱き視線を紬に向ける架瑠。
紬は面倒くさそうに、髪をかき上げた。
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