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1章:始まり
五月の雪 2話
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「こんなところまで来なくていいと言ったはずだ、六郷」
「これがわたくしの仕事でございますから。さ、雪が降っております。足元に気をつけながら車にお乗りください。あ、そちらの方々は紬さまのご友人ですかな? 紬さまはこのようにクールな感じでございますが、心優しいお方なのでどうぞよろしくお願いいたします」
つらつらと言葉を重ねていく六郷と呼ばれた男性は、紬の「六郷!」というイヤそうな声に、へらりとした笑みを浮かべて架瑠を一度じっくりと頭の天辺から足のつま先までを眺めてから、車まで戻っていく。
(な、なんだったんだ……?)
ぽかんと口を開けた架瑠に、ぽんと佑心が彼の肩を叩いた。
「早く帰った方がいいよ、冷えてきた」
「……そうですね」
佑心の言う通り、寒くなってきた。身体をぶるりと震わせてから、歩き出す。
登校と同様、三十分ほどをかけて歩いていると、ふと信号機が急に色を失った。
「……また、停電?」
校内にいたときにも停電していたが……と辺りを見渡す。ひゅう、と吹雪が架瑠を襲い、くしゅんとくしゃみをした。どんどんと、気温が下がっていくような感覚に、早足で家まで急ぐ。
「ただいま!」
玄関を開けると、伊吹がひょっこりと顔を覗かせて「るーくーん!」と抱きついてきた。
ぼふんと音を立てて猫の姿に戻り、架瑠の胸元に収まった伊吹。
「あらら、寒くて猫の姿になっちゃった」
「こっちが伊吹の本当の姿だもん。うー、寒いよー! 五月にこんなに寒いなんてあるー!?」
ぶるぶると震えている伊吹の背中を撫でていると、蓮也が眉を八の字にしてから架瑠に声をかけた。
「仕方ない。今日は石油ストーブつけようか」
「わぁーい! 電気もいきなり消えちゃって、困ってたんだよねぇ。……ん? るーくん、なんか不思議な匂いがする……」
「それはたぶん、今日来た転校生の匂いだと思うよ」
玄関先で話しているのも寒いので、架瑠たちは居間に向かう。
蓮也が最近しまったばかりの石油ストーブを取り出して、ストーブの火をつけた。
「停電しているから、石油ファンヒーターのほうは使えないし、オレの仕事もできないし、今日はのんびり過ごそうか」
彼の言葉に一番に反応したのは伊吹だった。架瑠の腕から蓮也の腕に移動し、「賛成!」と手を上げる。
「停電中だからテレビもつかないし……。すぐに回復するといいんだけど」
しみじみと蓮也がつぶやくと、架瑠は「そうですね」とうなずいた。これ以上暗くなったら課題がこなせないな、と思い、先に課題をやることに決め、自室に足を運ぶ。
勉強机の上に鞄を置き、中から課題を取り出す。課題に取りかかる前に服を着替え、制服をハンガーにかけてから、手洗いうがいをした。
明日にはこの停電も良くなるのだろうか、と考えながら、架瑠は自室に戻り課題に視線を落とす。
――その日から、架瑠の住んでいる町では停電が頻繁に起こるようになった。
「これがわたくしの仕事でございますから。さ、雪が降っております。足元に気をつけながら車にお乗りください。あ、そちらの方々は紬さまのご友人ですかな? 紬さまはこのようにクールな感じでございますが、心優しいお方なのでどうぞよろしくお願いいたします」
つらつらと言葉を重ねていく六郷と呼ばれた男性は、紬の「六郷!」というイヤそうな声に、へらりとした笑みを浮かべて架瑠を一度じっくりと頭の天辺から足のつま先までを眺めてから、車まで戻っていく。
(な、なんだったんだ……?)
ぽかんと口を開けた架瑠に、ぽんと佑心が彼の肩を叩いた。
「早く帰った方がいいよ、冷えてきた」
「……そうですね」
佑心の言う通り、寒くなってきた。身体をぶるりと震わせてから、歩き出す。
登校と同様、三十分ほどをかけて歩いていると、ふと信号機が急に色を失った。
「……また、停電?」
校内にいたときにも停電していたが……と辺りを見渡す。ひゅう、と吹雪が架瑠を襲い、くしゅんとくしゃみをした。どんどんと、気温が下がっていくような感覚に、早足で家まで急ぐ。
「ただいま!」
玄関を開けると、伊吹がひょっこりと顔を覗かせて「るーくーん!」と抱きついてきた。
ぼふんと音を立てて猫の姿に戻り、架瑠の胸元に収まった伊吹。
「あらら、寒くて猫の姿になっちゃった」
「こっちが伊吹の本当の姿だもん。うー、寒いよー! 五月にこんなに寒いなんてあるー!?」
ぶるぶると震えている伊吹の背中を撫でていると、蓮也が眉を八の字にしてから架瑠に声をかけた。
「仕方ない。今日は石油ストーブつけようか」
「わぁーい! 電気もいきなり消えちゃって、困ってたんだよねぇ。……ん? るーくん、なんか不思議な匂いがする……」
「それはたぶん、今日来た転校生の匂いだと思うよ」
玄関先で話しているのも寒いので、架瑠たちは居間に向かう。
蓮也が最近しまったばかりの石油ストーブを取り出して、ストーブの火をつけた。
「停電しているから、石油ファンヒーターのほうは使えないし、オレの仕事もできないし、今日はのんびり過ごそうか」
彼の言葉に一番に反応したのは伊吹だった。架瑠の腕から蓮也の腕に移動し、「賛成!」と手を上げる。
「停電中だからテレビもつかないし……。すぐに回復するといいんだけど」
しみじみと蓮也がつぶやくと、架瑠は「そうですね」とうなずいた。これ以上暗くなったら課題がこなせないな、と思い、先に課題をやることに決め、自室に足を運ぶ。
勉強机の上に鞄を置き、中から課題を取り出す。課題に取りかかる前に服を着替え、制服をハンガーにかけてから、手洗いうがいをした。
明日にはこの停電も良くなるのだろうか、と考えながら、架瑠は自室に戻り課題に視線を落とす。
――その日から、架瑠の住んでいる町では停電が頻繁に起こるようになった。
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