オカルト研究部員の非日常な日常

秋月一花

文字の大きさ
12 / 70
1章:始まり

五月の雪 2話

しおりを挟む
「こんなところまで来なくていいと言ったはずだ、六郷ろくごう
「これがわたくしの仕事でございますから。さ、雪が降っております。足元に気をつけながら車にお乗りください。あ、そちらの方々はつむぎさまのご友人ですかな? 紬さまはこのようにクールな感じでございますが、心優しいお方なのでどうぞよろしくお願いいたします」

 つらつらと言葉を重ねていく六郷と呼ばれた男性は、紬の「六郷!」というイヤそうな声に、へらりとした笑みを浮かべて架瑠かけるを一度じっくりと頭の天辺から足のつま先までを眺めてから、車まで戻っていく。

(な、なんだったんだ……?)

 ぽかんと口を開けた架瑠に、ぽんと佑心が彼の肩を叩いた。

「早く帰った方がいいよ、冷えてきた」
「……そうですね」

 佑心の言う通り、寒くなってきた。身体をぶるりと震わせてから、歩き出す。

 登校と同様、三十分ほどをかけて歩いていると、ふと信号機が急に色を失った。

「……また、停電?」

 校内にいたときにも停電していたが……と辺りを見渡す。ひゅう、と吹雪が架瑠を襲い、くしゅんとくしゃみをした。どんどんと、気温が下がっていくような感覚に、早足で家まで急ぐ。

「ただいま!」

 玄関を開けると、伊吹いぶきがひょっこりと顔を覗かせて「るーくーん!」と抱きついてきた。

 ぼふんと音を立てて猫の姿に戻り、架瑠の胸元に収まった伊吹。

「あらら、寒くて猫の姿になっちゃった」
「こっちが伊吹の本当の姿だもん。うー、寒いよー! 五月にこんなに寒いなんてあるー!?」

 ぶるぶると震えている伊吹の背中を撫でていると、蓮也れんやが眉を八の字にしてから架瑠に声をかけた。

「仕方ない。今日は石油ストーブつけようか」
「わぁーい! 電気もいきなり消えちゃって、困ってたんだよねぇ。……ん? るーくん、なんか不思議な匂いがする……」
「それはたぶん、今日来た転校生の匂いだと思うよ」

 玄関先で話しているのも寒いので、架瑠たちは居間に向かう。

 蓮也が最近しまったばかりの石油ストーブを取り出して、ストーブの火をつけた。

「停電しているから、石油ファンヒーターのほうは使えないし、オレの仕事もできないし、今日はのんびり過ごそうか」

 彼の言葉に一番に反応したのは伊吹だった。架瑠の腕から蓮也の腕に移動し、「賛成!」と手を上げる。

「停電中だからテレビもつかないし……。すぐに回復するといいんだけど」

 しみじみと蓮也がつぶやくと、架瑠は「そうですね」とうなずいた。これ以上暗くなったら課題がこなせないな、と思い、先に課題をやることに決め、自室に足を運ぶ。

 勉強机の上に鞄を置き、中から課題を取り出す。課題に取りかかる前に服を着替え、制服をハンガーにかけてから、手洗いうがいをした。

 明日にはこの停電も良くなるのだろうか、と考えながら、架瑠は自室に戻り課題に視線を落とす。

 ――その日から、架瑠の住んでいる町では停電が頻繁に起こるようになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。 最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。 会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...