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1章:出会い
後宮 10話
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朱亞と桜綾は棚の前まで移動して、桜綾に手紙を渡してから燐寸を取る。
燐寸に火をつけ、蝋燭を灯し、再び手紙を預かりそうっとあぶってみた。
すると、じわじわと文字が浮かび上がってくる。
「朱亞の想像通りね」
「はい。合っていて良かった」
浮かび上がった文字には、燗流が前王の息子であることが書かれていた。
「え!」
「兄弟、だったのね」
黒髪に緋色の瞳の飛龍。
金髪に瑠璃色の瞳の燗流。
あまりにも、似ていない。
「――ああ、だから」
納得したように言葉をこぼす桜綾に、朱亞が不思議そうに彼女を見る。
「以前……わたくしがまだ幼い頃、帝都にきたとき、彼のような人を見かけたことがあるの」
「そうだったんですね。でも、どうして前王の息子であることを、あぶりだしで教えてくれたのでしょうか?」
桜綾が考えるように口元に指をかけ、視線を上げた。
朱亞は手紙をじっと見つめて、読み落としていることはないかと頭を働かせ、ふと思いついたことを口にする。
「陛下と燗流さんに、試されているのでしょうか」
「……その可能性もあるかもしれないわね」
両肩を上げる桜綾。彼女は燗流をこの部屋に呼ぶように伝えると、朱亞から手紙を受け取り寝台に向かった。
朱亞は隣の自室に戻り、ちょこんと座っている燗流の名を呼ぶ。彼は顔を上げて朱亞を見ると、ほっとしたように息を吐く。
「胡貴妃がお呼びです」
「は、はい……!」
すくっと勢いよく立ち上がったからか、ぐらりと倒れそうになったのを見て、朱亞は慌てて彼に近付きその身体を支えた。
「大丈夫ですか?」
「は、はい。すみません、ありがとうございます」
朱亞に支えられた燗流は申し訳なさそうに眉を下げた。朱亞は緩やかに首を横に振り、彼から離れると「行きましょう」と明るく声をかけてから、桜綾の部屋に足を運ぶ。
「胡貴妃、入っても良いですか?」
「ええ、どうぞ」
扉を手の甲で軽く叩き、朱亞が中にいる桜綾へ声をかける。
彼女はすぐに扉の外にいるふたりに聞こえるように言葉を返し、朱亞は扉を開けて足を踏み入れた。
燗流は中に入ることに少し戸惑ったようだが、桜綾の「入って」という声に、急いで中に入る。
「……あれ、思ったよりも、がらんとしていますね……?」
「そうね。これから、わたくしの好きなようにしていくつもりよ」
桜綾は寝台に座っていた。中に入ってきたふたりを見て、こちらへ来なさいとばかりに手招いた。
「あなた、前王の子なのよね?」
ぴくっと、燗流の肩が小さく跳ね上がる。それを見て、桜綾は真剣な表情を浮かべて問いかける。
「あなたは本当に、わたくしたちの味方なのよね?」
燐寸に火をつけ、蝋燭を灯し、再び手紙を預かりそうっとあぶってみた。
すると、じわじわと文字が浮かび上がってくる。
「朱亞の想像通りね」
「はい。合っていて良かった」
浮かび上がった文字には、燗流が前王の息子であることが書かれていた。
「え!」
「兄弟、だったのね」
黒髪に緋色の瞳の飛龍。
金髪に瑠璃色の瞳の燗流。
あまりにも、似ていない。
「――ああ、だから」
納得したように言葉をこぼす桜綾に、朱亞が不思議そうに彼女を見る。
「以前……わたくしがまだ幼い頃、帝都にきたとき、彼のような人を見かけたことがあるの」
「そうだったんですね。でも、どうして前王の息子であることを、あぶりだしで教えてくれたのでしょうか?」
桜綾が考えるように口元に指をかけ、視線を上げた。
朱亞は手紙をじっと見つめて、読み落としていることはないかと頭を働かせ、ふと思いついたことを口にする。
「陛下と燗流さんに、試されているのでしょうか」
「……その可能性もあるかもしれないわね」
両肩を上げる桜綾。彼女は燗流をこの部屋に呼ぶように伝えると、朱亞から手紙を受け取り寝台に向かった。
朱亞は隣の自室に戻り、ちょこんと座っている燗流の名を呼ぶ。彼は顔を上げて朱亞を見ると、ほっとしたように息を吐く。
「胡貴妃がお呼びです」
「は、はい……!」
すくっと勢いよく立ち上がったからか、ぐらりと倒れそうになったのを見て、朱亞は慌てて彼に近付きその身体を支えた。
「大丈夫ですか?」
「は、はい。すみません、ありがとうございます」
朱亞に支えられた燗流は申し訳なさそうに眉を下げた。朱亞は緩やかに首を横に振り、彼から離れると「行きましょう」と明るく声をかけてから、桜綾の部屋に足を運ぶ。
「胡貴妃、入っても良いですか?」
「ええ、どうぞ」
扉を手の甲で軽く叩き、朱亞が中にいる桜綾へ声をかける。
彼女はすぐに扉の外にいるふたりに聞こえるように言葉を返し、朱亞は扉を開けて足を踏み入れた。
燗流は中に入ることに少し戸惑ったようだが、桜綾の「入って」という声に、急いで中に入る。
「……あれ、思ったよりも、がらんとしていますね……?」
「そうね。これから、わたくしの好きなようにしていくつもりよ」
桜綾は寝台に座っていた。中に入ってきたふたりを見て、こちらへ来なさいとばかりに手招いた。
「あなた、前王の子なのよね?」
ぴくっと、燗流の肩が小さく跳ね上がる。それを見て、桜綾は真剣な表情を浮かべて問いかける。
「あなたは本当に、わたくしたちの味方なのよね?」
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