【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜

秋月一花

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番外編

海辺の街で。 2話

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◆◆◆

「カミラ嬢、馬車の窓を見てごらん」
「……? ……まぁ!」

 馬車の旅は続いていた。

 レグルスさまに言われて窓の外に視線を向けると、とても澄んで大きな水面が見えて思わず声を上げてしまう。

「馬車から降りたら、きっと驚くよ」

 にっと白い歯を見せるレグルスさまに首をかしげた。でも、馬車から降りてすぐにその理由がわかったわ。

「――独特の香りがしますのね」

「潮の香りだからね。馬車の旅は終わり。今日からは船旅になるけれど……船酔いしないかな?」
「……わかりませんわ。ボートに乗ったときは酔ったことありませんけれど……」

 湖でボートに乗ったことはあるけれど、……こんなに大きい船に乗るのは初めてで、なんだかワクワクとドキドキが混ざって変な感じがする。

「豪華客船って感じですね」
「一応リンブルグの王太子だからね、俺。手配したのはブレンだけど」
「いやー、思ったよりも大きな船がきましたねー」

 ブレンさまが船を見上げてぽつりとつぶやいた。どうやら、もう少し小さい船が迎えに来ると思っていたようだ。

 でも、レグルスさまはリンブルグの王太子なのだから、このくらい大きな船が迎えにきてもおかしくはない……と思うわ。

「もしも具合が悪くなったらおっしゃってくださいね」

 ぐっと拳を握ってわたくしを見るクロエ。こくりとうなずくと、満足そうに微笑んだ。

 船に乗り、リンブルグへ向かう。陸地とは違い足元が心もとない感じがして、レグルスさまにエスコートをされていなかったら、きっと歩くのももっと遅かっただろうなと苦笑を浮かべる。

 クロエもブレンさまにエスコートをされて、なんとか船の中を歩いている。その足が少し震えていたけれど、彼女は気丈に振る舞っていたから、気付かないふりをした。

「もしかして、船に乗っているのはわたくしたちだけですか?」

 こんなに大きな船なのに、まったくお客さんとすれ違わないことに疑問を抱きたずねると、ブレンさまが「そうですよー」と答える。

 こんなに大きな船にわたくしたちだけ、なんて……貸し切りのようね。

「リンブルグの国王が、カミラ嬢とクロエさんに最上級のおもてなしを、と」
「わ、私も?」
「はい。カミラ嬢の侍女として、移住するのですから当然ですよー」

 にこにこと微笑みながら、ブレンさまはわたくしとクロエを交互に見た。どこか呆れたように肩をすくめるレグルスさまに首をかしげると、「なんでもないよ」と緩やかに頭を左右に振った。

「あ、そうそう、レグルス殿下。陛下から伝言があったことを思い出しましたー」
「伝言? 陛下から?」

 ブレンさまは悪戯っぽく目元を細めて、人差し指を口元に添える。

「『甘い時間を過ごせるかは、そなたにかかっているぞ』……だそうですー」
「あの人は……」

 大袈裟に息を吐くレグルスさまに、「きゃあっ」とはしゃぐように頬を赤らめるクロエ。心なしか、目がキラキラと輝いているように見えるわ……
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