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水族館。 2話
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「あ、やっと俺らの番だ」
「わー、魚ー」
わたくしたちの番がきて、入場すると……そこはまるで海の中――……ごめんなさい、考えてみればわたくし、海の中に入ったことがないわ。
それでも、きっと海の中に入るとこんな感じなのだろうなと思った。
「ぷくぷく太っていて美味しそうですねぇ」
「そこなの!?」
ブレンさまの言葉に、クロエが反応を示す。
餌を与えられているからか、確かにぷくぷくと太っていたけれど……まさかここで美味しそうという言葉が出てくるとは思わなかったわ。
「アジ……アジフライ……、焼くのも良いですね。あ、なめろうも捨てがたいです……骨せんべいも良いなぁ……」
「すまんな、こいつマジで食い意地張ってるから」
むしろ、アジを見てそれだけの想像ができるブレンさまがすごい。
彼にとってはこの場所、美味しい魚宣帝署になるのでは……?
いえ、もちろん、水族館の魚は食べないだろうけど!
「いわしの群れのショーや、イルカのショーもあるみたいですよー」
「……さすがに、イルカは美味しそうとは言いませんわよね?」
「……うふ」
ブレンさま、その笑い方はちょっと怖いわ!
クロエも同じことを思ったのか、ブレンさまを見て肩をすくめていた。
わたくしたちは一通り館内を見て回り、そのたびにブレンさまが魚料理のことを口にするから、最終的に面白くなってしまい、ぷっと噴き出してしまう。
だってあれだけキラキラした目で「いわし……煮て骨まで……」とか「サーモン……刺身……あ、漬けもいいなぁ」とか、「捌いてみたいなぁ、マグロ」なんて言うのだもの……!
というか、小さめとはいえ、よくマグロをここまで運んだものだと感心してしまった。
サメは見ていたけれど、サメについてはなにも言わなかった。ただぽつりと、
「……周りの魚、食べているのかなぁ……」
そうつぶやいていた。羨ましそうに。
ブレンさまの考えていることは、すべて食に関することなのでは? と考えていると、クロエはサメを見ながら「怖いのか可愛いのか、よくわからない顔をしていますね」とじっくり眺めていた。
「あ、イルカのショーがそろそろ始まるみたいだ。見にいくかい?」
「はい、行きましょう」
イルカのショーの場所に向かうと、人気があるらしくびっしりと人がいた。最前列の人にはレインコートを渡している。
わたくしたちは来るのが遅かったみたいで、遠くから見ることになった。
それでも、飼育員のいうことを聞いて演技するイルカの姿は愛らしかった。きゅいきゅい鳴いて、水中からジャンプ!
その水しぶきを、最前列の人たちが「キャー!」と楽しそうに受けていた。
「遠目ですけど、可愛いですね」
「そうですわね。……イルカってこんなにも賢いのね……」
感心したようにつぶやけば、レグルスさまが「飼育員の努力の賜物だな」と返してくれた。確かに。
イルカもすごいけれど、それを教え込んだ飼育員の努力もすごいわ。
「わー、魚ー」
わたくしたちの番がきて、入場すると……そこはまるで海の中――……ごめんなさい、考えてみればわたくし、海の中に入ったことがないわ。
それでも、きっと海の中に入るとこんな感じなのだろうなと思った。
「ぷくぷく太っていて美味しそうですねぇ」
「そこなの!?」
ブレンさまの言葉に、クロエが反応を示す。
餌を与えられているからか、確かにぷくぷくと太っていたけれど……まさかここで美味しそうという言葉が出てくるとは思わなかったわ。
「アジ……アジフライ……、焼くのも良いですね。あ、なめろうも捨てがたいです……骨せんべいも良いなぁ……」
「すまんな、こいつマジで食い意地張ってるから」
むしろ、アジを見てそれだけの想像ができるブレンさまがすごい。
彼にとってはこの場所、美味しい魚宣帝署になるのでは……?
いえ、もちろん、水族館の魚は食べないだろうけど!
「いわしの群れのショーや、イルカのショーもあるみたいですよー」
「……さすがに、イルカは美味しそうとは言いませんわよね?」
「……うふ」
ブレンさま、その笑い方はちょっと怖いわ!
クロエも同じことを思ったのか、ブレンさまを見て肩をすくめていた。
わたくしたちは一通り館内を見て回り、そのたびにブレンさまが魚料理のことを口にするから、最終的に面白くなってしまい、ぷっと噴き出してしまう。
だってあれだけキラキラした目で「いわし……煮て骨まで……」とか「サーモン……刺身……あ、漬けもいいなぁ」とか、「捌いてみたいなぁ、マグロ」なんて言うのだもの……!
というか、小さめとはいえ、よくマグロをここまで運んだものだと感心してしまった。
サメは見ていたけれど、サメについてはなにも言わなかった。ただぽつりと、
「……周りの魚、食べているのかなぁ……」
そうつぶやいていた。羨ましそうに。
ブレンさまの考えていることは、すべて食に関することなのでは? と考えていると、クロエはサメを見ながら「怖いのか可愛いのか、よくわからない顔をしていますね」とじっくり眺めていた。
「あ、イルカのショーがそろそろ始まるみたいだ。見にいくかい?」
「はい、行きましょう」
イルカのショーの場所に向かうと、人気があるらしくびっしりと人がいた。最前列の人にはレインコートを渡している。
わたくしたちは来るのが遅かったみたいで、遠くから見ることになった。
それでも、飼育員のいうことを聞いて演技するイルカの姿は愛らしかった。きゅいきゅい鳴いて、水中からジャンプ!
その水しぶきを、最前列の人たちが「キャー!」と楽しそうに受けていた。
「遠目ですけど、可愛いですね」
「そうですわね。……イルカってこんなにも賢いのね……」
感心したようにつぶやけば、レグルスさまが「飼育員の努力の賜物だな」と返してくれた。確かに。
イルカもすごいけれど、それを教え込んだ飼育員の努力もすごいわ。
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