48 / 116
早速ノートを使いましょう。 2話
しおりを挟む
マーセルは、マティス殿下と付き合う前からいじめられていたと言っていた。彼女の他にも男爵家の人はいる。それなのになぜ、マーセルだけが狙われたのか……
まさか近くにいたからとか、顔が気に入らないとか、そんなしょうもない理由ではないでしょうね?
思い返せば、マーセルに意地悪をしようと人も、嫌味を言ってきた人たち、すべて令嬢だった。
召使学科は伯爵令嬢までしか入れない。つまり、否応なしにトップは伯爵家の人。
令息たちはマーセルに興味を示しているようには見えなかったから、伯爵家の令嬢となにかがあった、と考えるのが自然かしら。
メイドも執事も待遇が良い公爵家か侯爵家、もしくは王城の職に就きたいって人がこの学科に集まるわけで……いろいろややこしいわね。頭が痛くなりそう。
今日は夕食を食べる気分にならないから、ちょっと掃除をしてから早めに休んじゃいましょう。休息も大事、よね。
わたくしは部屋の掃除を初めて――気付けば部屋がピカピカになるまでやってしまった。一度始めると気が済むまでやりたくなるのよ。
床が光っているように見えるし、窓もピカピカ。心地良い空間って最高だわ。それに――……なんといっても、レグルスさまからいただいた花がある。ふんわりと柔らかい、花の香りに心が癒されるきがした。
個人的に花をもらうのも、初めてだったかも。
ぼんやりと考えていると、扉がノックされた。
「はい?」
こんな時間に誰が? と思ったら、現れたのはクロエだった。彼女の手にはなにかが握られている。
「行きましょう、か……マーセルさま! 許可をもぎ取ってきました!」
「え? クロエ!?」
「ほら、早く!」
許可って? と尋ねる前に、クロエはわたくしを部屋の外に出して、ぱたんと扉を閉めて鍵をかけた。
そして、わたくしの手を握るとパタパタと寮の裏門に向かって走り出す。
いったいなんの許可をもぎ取ってきたのかしら、と考えて――あ、と思った。
『ホテルはもう取ってあるんだ』
レグルスさまの言葉を思い出す。寮に戻ったときにデートは終わりという感じだったから、冗談だったのかしらと思っていたのだけど……そうではなかったようね。
ただ、あのとき外泊許可をもらっていなかったから、クロエが取りに行ってくれたということなのかしら?
それでも、まだ彼らと……レグルスさまと一緒にいられると思うと、なんだか胸がドキドキとしてきて、不思議な感覚だった。
裏門まで行くと、レグルスさまとブレンさまが馬車の前に立っていた。
そしてレグルスは開口一番、「ごめん、浮かれていて許可取るのを忘れていた」と謝った。浮かれていて? と首をかしげると、ブレンさまがくすくすと笑い越えを上げる。
「レグルスさまね、カミ……マーセル嬢とデートって張り切って用意したのに、肝心の外泊許可を取ってなかったので、慌てて寮に戻ってきたんですよー」
もしかして、あのとき相当焦っていたのかしら? 表に出さないだけで。
そして、わたくしとのデートを、そんなに張り切ってくれるなんて……。人に大切にされた覚えがないから、なんだかすごく胸がいっぱいだわ……
まさか近くにいたからとか、顔が気に入らないとか、そんなしょうもない理由ではないでしょうね?
思い返せば、マーセルに意地悪をしようと人も、嫌味を言ってきた人たち、すべて令嬢だった。
召使学科は伯爵令嬢までしか入れない。つまり、否応なしにトップは伯爵家の人。
令息たちはマーセルに興味を示しているようには見えなかったから、伯爵家の令嬢となにかがあった、と考えるのが自然かしら。
メイドも執事も待遇が良い公爵家か侯爵家、もしくは王城の職に就きたいって人がこの学科に集まるわけで……いろいろややこしいわね。頭が痛くなりそう。
今日は夕食を食べる気分にならないから、ちょっと掃除をしてから早めに休んじゃいましょう。休息も大事、よね。
わたくしは部屋の掃除を初めて――気付けば部屋がピカピカになるまでやってしまった。一度始めると気が済むまでやりたくなるのよ。
床が光っているように見えるし、窓もピカピカ。心地良い空間って最高だわ。それに――……なんといっても、レグルスさまからいただいた花がある。ふんわりと柔らかい、花の香りに心が癒されるきがした。
個人的に花をもらうのも、初めてだったかも。
ぼんやりと考えていると、扉がノックされた。
「はい?」
こんな時間に誰が? と思ったら、現れたのはクロエだった。彼女の手にはなにかが握られている。
「行きましょう、か……マーセルさま! 許可をもぎ取ってきました!」
「え? クロエ!?」
「ほら、早く!」
許可って? と尋ねる前に、クロエはわたくしを部屋の外に出して、ぱたんと扉を閉めて鍵をかけた。
そして、わたくしの手を握るとパタパタと寮の裏門に向かって走り出す。
いったいなんの許可をもぎ取ってきたのかしら、と考えて――あ、と思った。
『ホテルはもう取ってあるんだ』
レグルスさまの言葉を思い出す。寮に戻ったときにデートは終わりという感じだったから、冗談だったのかしらと思っていたのだけど……そうではなかったようね。
ただ、あのとき外泊許可をもらっていなかったから、クロエが取りに行ってくれたということなのかしら?
それでも、まだ彼らと……レグルスさまと一緒にいられると思うと、なんだか胸がドキドキとしてきて、不思議な感覚だった。
裏門まで行くと、レグルスさまとブレンさまが馬車の前に立っていた。
そしてレグルスは開口一番、「ごめん、浮かれていて許可取るのを忘れていた」と謝った。浮かれていて? と首をかしげると、ブレンさまがくすくすと笑い越えを上げる。
「レグルスさまね、カミ……マーセル嬢とデートって張り切って用意したのに、肝心の外泊許可を取ってなかったので、慌てて寮に戻ってきたんですよー」
もしかして、あのとき相当焦っていたのかしら? 表に出さないだけで。
そして、わたくしとのデートを、そんなに張り切ってくれるなんて……。人に大切にされた覚えがないから、なんだかすごく胸がいっぱいだわ……
121
あなたにおすすめの小説
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
※表紙 AIアプリ作成
[完結中編]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜
コマメコノカ@女性向け・児童文学・絵本
恋愛
王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。
そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。
【完結】旦那様、わたくし家出します。
さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。
溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。
名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。
名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。
登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*)
第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
赤貧令嬢の借金返済契約
夏菜しの
恋愛
大病を患った父の治療費がかさみ膨れ上がる借金。
いよいよ返す見込みが無くなった頃。父より爵位と領地を返還すれば借金は国が肩代わりしてくれると聞かされる。
クリスタは病床の父に代わり爵位を返還する為に一人で王都へ向かった。
王宮の中で会ったのは見た目は良いけど傍若無人な大貴族シリル。
彼は令嬢の過激なアプローチに困っていると言い、クリスタに婚約者のフリをしてくれるように依頼してきた。
それを条件に父の医療費に加えて、借金を肩代わりしてくれると言われてクリスタはその契約を承諾する。
赤貧令嬢クリスタと大貴族シリルのお話です。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる