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昨日の話をマーセルにしたの。 2話

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 婚約を白紙にするのは決定事項。でも、慰謝料を請求してきちんと支払われるかどうかはわからないわね。

 陛下たちの思考が、まともであることを願うしかない。

「……ごめんなさい、私、わたし……ッ」

 自分がしたことを理解したのか、マーセルはわたくしに眉を下げて今にもこぼれ落ちそうな涙を浮かべた表情を見せた。謝られたところで、もう遅いのだけど。

 とにかく、マーセルにはマティス殿下の隣に立ってもらわないといけない。

「あとは、どうしてわたくしたちが取り替えられたのかを知りたいわ」

 男爵家と公爵家で、いったいなにがあったのかしら?

 出産はそれぞれの屋敷でするはずだから、取り違えられることはないはずなのよ。男爵家と公爵家で、なにかしら取引があったはず。

「どうして、そんなに冷静なんですか……?」
「気持ちの整理が多少ついたから、かしらね。あの家でわたくしは完璧な公爵令嬢でなければならなかった。それって、結構なストレスなのよ。貴女あなたの身体に入って、すごく楽なのよね。確かに嫌がらせはあるけれど……あまりにも、その……質が低すぎて……」

 特にダメージを受けないのよね。ちょっとした新鮮さもあったけど、絡んでくるのは令嬢だけだった。

 マティス殿下には詰め寄られないから、身近にいるマーセルに絡んできたのだと思う。

 婚約者を奪うような真似をしているし……あ、いいえ。真似ではなくて、奪ったのよね。

 陛下はまだ、この国の王太子を決めていない。それぞれの兄妹を見極めるつもりなのだろう。

 第一王子であるマティスが長男。第二王子、第一王女、第三王子と弟と妹がいる。

「カミラさまは、平気なんですか……?」

「そうね。質が低すぎる嫌がらせには、呆れるだけだわ」

 テキストやノートを使えなくしたり、嫌味を言ってきたり。マーセルのしていたことを考えると、それも妥当のような気はするけれどね。

「学園という狭い世界で、盛り上がっちゃったのかしら?」
「……ッ」
「貴女たちは、先にわたくしに話を通すべきだったのよ。好きな人がいるから、婚約を白紙にしてほしいって。わたくしに隠れてマティス殿下と付き合うようになったから、他の令嬢からの嫌がらせを受けるようになったのではなくて?」
「……違います」

 マーセルは弱々しく首を横に振り、うつむいて膝に額をつけた。ねたようなそんな姿に、眩暈めまいがするような気がした。だって、わたくしの姿でするんだもの。

 今までそんなことをしたことがなかったから、なんだかすごく複雑な気持ちだわ。
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