21 / 29
秋のごちそう
栗まんじゅう 2話
しおりを挟む
芽衣は少しだけ悩んだように視線を動かし、自分が丸めた栗を見てぱっと顔を上げた。
「お父さんにあげたい!」
「……そっか、そうだね。芽衣もお手伝いしてくれたもんね」
「ふふ。気持ちが大事なのよね、こういうのは」
美咲が小さく首を縦に動かして、芽衣を見る。恵子はにこにこと笑う彼女たちを見て、ほんわかと胸の中が温かくなる。
(――おいしいまんじゅう作らないとね)
ふたりの会話を聞きながら、恵子は小麦粉を足してお湯を注いだ。
「こんなにたくさん使うの?」
「皮は余ったらだんずにするからねぇ」
「だんずってなぁに?」
「小麦粉の餅さね。砂糖醤油で食べるとうんまいんだよ」
「芽衣はマヨ醤油のほうが良いかも?」
「どっちもおいしそう! 食べてみたい!」
ちょうど良い柔らかさになった皮を手のひらに乗せて、くぼみを作り丸めた栗を押し込んで包んでいく。
「わ、けーこばぁば素早い!」
「慣れさね、慣れ。美咲ちゃんも慣れっとできるようになるべ」
「そうかなぁ……」
美咲と芽衣は苦戦しているようだ。そのあいだに恵子は次々とまんじゅうを丸めていく。
丸める前に大きな鍋にたっぷりの水を入れて火にかけていた。丸めたまんじゅうを茹でれば完成だ。
……そして、やはり皮は余った。だんずも作るつもりだったのでちょうど良い。
平べったい丸型に成形していくと、芽衣が「これがだんず?」と聞いてきた。
こくりと恵子がうなずくと、「……おいしいの……?」と怪訝そうに唇を尖らせる。
「好みだからねぇ、これも。まぁ、小麦が好きな人は美味しいんじゃないかねぇ?」
「とか言いながら、パクパク食べる芽衣の姿が想像できるわー」
まんじゅうの皮に火が通るまで茹で、大皿に乗せていく。出来立ては熱いので注意が必要だ。だんずも一緒に茹でてもらい、冷ます。
「もう食べられるの?」
「熱いから気をつけんと」
ちなみにまんじゅうもだんずも冷凍できるので、冷凍庫に余裕があるときが良い。五キロの小麦をすべて使い切るので、かなりの量になるからだ。
手で持てるくらいまで冷まし、味見分の栗まんじゅうとだんずを食卓に並べる。
砂糖醤油とマヨ醤油も用意した。
「とりあえず、栗まんじゅうから食べよっか?」
「いただきます!」
わくわくとした表情で栗まんじゅうに手を伸ばす美咲と芽衣に、恵子は微笑んでうなずく。
自分も栗まんじゅうに手を伸ばし、ふたつに割ってみるとふわっと湯気が見えた。
「まだほかほかだ!」
「気をつけて食べるんだよ」
恵子もぱくりと食べた。皮はほんのりと甘く、栗しか入れていないので栗本来の味を楽しめるまんじゅうだ。
「美味しい!」
「おいしー!」
目をキラキラと輝かせるふたりに、恵子はふふっと微笑む。
「それにしても、栗まんじゅうって栗の形してないんだね……」
「地元では普通のおまんじゅうよ。中身が栗だから、栗まんじゅう。地区によってはあんこも入れるみたい」
「町内でも全然違うよねぇ……」
「本当にね。地区によって違うから、いろんな人と話すと面白いよ」
「お父さんにあげたい!」
「……そっか、そうだね。芽衣もお手伝いしてくれたもんね」
「ふふ。気持ちが大事なのよね、こういうのは」
美咲が小さく首を縦に動かして、芽衣を見る。恵子はにこにこと笑う彼女たちを見て、ほんわかと胸の中が温かくなる。
(――おいしいまんじゅう作らないとね)
ふたりの会話を聞きながら、恵子は小麦粉を足してお湯を注いだ。
「こんなにたくさん使うの?」
「皮は余ったらだんずにするからねぇ」
「だんずってなぁに?」
「小麦粉の餅さね。砂糖醤油で食べるとうんまいんだよ」
「芽衣はマヨ醤油のほうが良いかも?」
「どっちもおいしそう! 食べてみたい!」
ちょうど良い柔らかさになった皮を手のひらに乗せて、くぼみを作り丸めた栗を押し込んで包んでいく。
「わ、けーこばぁば素早い!」
「慣れさね、慣れ。美咲ちゃんも慣れっとできるようになるべ」
「そうかなぁ……」
美咲と芽衣は苦戦しているようだ。そのあいだに恵子は次々とまんじゅうを丸めていく。
丸める前に大きな鍋にたっぷりの水を入れて火にかけていた。丸めたまんじゅうを茹でれば完成だ。
……そして、やはり皮は余った。だんずも作るつもりだったのでちょうど良い。
平べったい丸型に成形していくと、芽衣が「これがだんず?」と聞いてきた。
こくりと恵子がうなずくと、「……おいしいの……?」と怪訝そうに唇を尖らせる。
「好みだからねぇ、これも。まぁ、小麦が好きな人は美味しいんじゃないかねぇ?」
「とか言いながら、パクパク食べる芽衣の姿が想像できるわー」
まんじゅうの皮に火が通るまで茹で、大皿に乗せていく。出来立ては熱いので注意が必要だ。だんずも一緒に茹でてもらい、冷ます。
「もう食べられるの?」
「熱いから気をつけんと」
ちなみにまんじゅうもだんずも冷凍できるので、冷凍庫に余裕があるときが良い。五キロの小麦をすべて使い切るので、かなりの量になるからだ。
手で持てるくらいまで冷まし、味見分の栗まんじゅうとだんずを食卓に並べる。
砂糖醤油とマヨ醤油も用意した。
「とりあえず、栗まんじゅうから食べよっか?」
「いただきます!」
わくわくとした表情で栗まんじゅうに手を伸ばす美咲と芽衣に、恵子は微笑んでうなずく。
自分も栗まんじゅうに手を伸ばし、ふたつに割ってみるとふわっと湯気が見えた。
「まだほかほかだ!」
「気をつけて食べるんだよ」
恵子もぱくりと食べた。皮はほんのりと甘く、栗しか入れていないので栗本来の味を楽しめるまんじゅうだ。
「美味しい!」
「おいしー!」
目をキラキラと輝かせるふたりに、恵子はふふっと微笑む。
「それにしても、栗まんじゅうって栗の形してないんだね……」
「地元では普通のおまんじゅうよ。中身が栗だから、栗まんじゅう。地区によってはあんこも入れるみたい」
「町内でも全然違うよねぇ……」
「本当にね。地区によって違うから、いろんな人と話すと面白いよ」
10
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる