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「拓、こないだのお兄ちゃんが今から迎えに来るから、良い子にするんだよ
これからは、おもちゃもいっぱい買って貰えるし、ご飯もいっぱい食べれるようになるからね」
意味のわかっていない拓は、またお客さんが遊びに来てくれるのだと思っているのか、キャッキャっと嬉しそうにしている
嬉しそうにぬいぐるみやミニカーを準備する姿に胸がいっぱいになってしまい、背後から強く抱き締める
「拓、離れていても愛してるよ。オレの大切な宝物」
オレの言葉の意味をまだ理解出来ていないのか、いつものように擦り寄って抱き着いてくる拓に愛しさと寂しさが募っていく
拓也と再会した日から2日後、『今日迎えに行く』って連絡があった
連絡先をあの時に教えてしまったのを何度も後悔したけれど、これでよかったのかもしれない
これで、拓はしあわせになれるんだから…
オレが悲しいのも寂しいのも、そんなの拓には関係ないから…
コンコンと軽いノック音を聞いて振り返ると、玄関に彼が待ち構えていた
「おい、準備出来ているのか?時間もないからさっさと詰め込んで行くぞ」
部屋に入ってきた彼に胸が締め付けられる
「拓をよろしくお願いします。母子手帳もこの中に入れたから、ワクチン接種についても確認して貰えたらわかるから
あと、これ拓の好き嫌いとかノートにまとめたから読んで貰えると嬉しいな…」
昨晩、拓が寝ている間に書いたノート
出来るだけ詳しく、びっしりと拓についてあれこれ書き込んだノートだが、ノートには所々涙で滲んで読みにくい箇所がいくつか出来てしまった
書きながら、これまでの事を思い出してしまって涙が止まらなくて
離れることが、もう成長を見守ることが出来ないのが悲しくて…
「無理だと思うけど、たまには会わせて貰えると嬉しい。
ダメなら、遠くから見守れる日があればいいんだけど…ダメかな…?」
泣くのを必死に堪えているせいで、声が震えてしまう
必死に笑顔を作るも引き攣った不細工な顔になってるんだろうな…
「何言ってんだ?ダメに決まってるだろ?」
呆れたように溜息を吐き出して言う拓也の言葉に息が詰まる
やっぱり、2度と会わせて貰えないのかな...
オレが勝手に産んじゃったから...
「お前が育てるのには変わりないだろ。勝手にベビーシッター頼んで楽しようとすんな」
頭をガシガシと掻きながら、口をへの字に結び文句を言いたげにオレの事を見て来る
「…えっ……ウソ…」
思っても見なかった返事にオレは目をパチクリとしてしまい、頭が追いつかなくて
「だ、だって…拓也には番か彼女が居るんじゃ?オレが一緒に行くなんて無理じゃ…」
盛大な溜息を吐いて後、いきなり抱き締められて意味がわからなくて硬直してしまう
「まさか、子どもだけを連れて帰らせるつもりだったのか?
何度も言うが、俺の番はお前だけだ。昔からそう言ってるだろ」
呆れたような困ったような笑顔を向けられる
「って…悪い、俺の言葉が足りないのが原因だよな…
コータが居なくなってから、ちゃんと『愛してる』って伝えてなかったのを後悔した。お前も一緒の気持ちだって思っていたから…」
ヒヤリと冷えた手が、オレの頬を撫でる
「コータ、愛してる。この4年、ずっとお前を探していた
初めて会ったあの時、俺の運命の番だって思って、絶対に俺のモノにするって決めてた。
他の奴らに取られないよう側に居て、周りに牽制もした…
コータが大学を卒業したら、プロポーズする為に地盤を固めたくてお前の気持ちを蔑ろにしてしまって、本当にすまない…」
初めて聞かされる拓也の気持ちがまだ信じられない
夢じゃないかって、オレの都合のいい夢じゃないかって、不安になる
拓也が、オレのことを愛してるって…そんな、夢みたいなこと…
「だ、て…あの日、Ωの彼女が…拓也の家に来てたから…あの人が好きな人じゃないのか?本当は、あの人が本命で番なんじゃ…」
拓也の言葉を聞いても信じきれなくて、泣きそうな顔であの時に会った女性のことを問い詰める
「本当、お前はせっかちだよな…。昔から、グダグダ自分だけで考えこんで暴走すんなよ…
あの日、お前が俺の前から突然消えた日に会った女性は、俺の母親だよ。呼び止めようとしたのに、勝手に勘違いして、慌てて帰るから母さんも心配してた」
今更知らされる真実に目を見開いて驚く
全部、自分が思い込んでしまったから…
ちゃんと、拓也に相談しなかったから…
母親って、あんな若くて綺麗な人が…?
「ごめんな。それだけ不安にさせてたんだよな…
コータ、俺は今もお前のことを愛してる。お前が居なくなって、無理矢理にでも頸を噛んで番にしとけば良かったと後悔したんだ...
ずっと、ずっと、お前をまた抱き締めたいって願ってた」
抱きしめる腕の力が強く、逃げられない
頬を撫でる手が気持ち良くて、今にも触れそうな唇から目が離せない
「……好きで、いていいの…?
オレ、こんな…ひとりで、勝手に…グダグダ考えちゃって…拓も、子どもも勝手に産んじゃったから…」
ボロボロと涙が溢れ出して止まらない
今までずっと、色々我慢していた気持ちが溢れ出してしまい、止め処なく溢れ落ちてしまう
さっきよりも強く抱き締められてちょっと痛い
痛いけど、久々に感じる拓也の匂いに包まれて安心してしまう
この心地良いこの人の番に、本当になっていいのなら...
恐る恐る自分からも腕を回して服にしがみ付く
「ひっぐ…オレも…ずっと、ずっと…好き、ずっと…言いたかった…」
嗚咽が混じってしまい、ちゃんと言葉に出来なかったけど、やっと言うことが出来た
拓也はそんなオレを抱き締めながら何度も頷いてくれる
「コータ、愛してる。もう、俺の前から消えるなよ」
触れる唇が熱い
差し込まれる舌に口内を舐め回され、頭が溶けそうになる
発情期でもないのに、身体が熱くなってしまって何も考えられない
「ッ!?いってぇー!?」
ガッガッガッと何かで叩く音と拓也の声に、ボーっとしていた意識が戻り、足元を見る
真っ赤な顔で頬をぷっくりと膨らませ、両手にパトカーとバスのミニカーを持った拓が、拓也の脚を殴って攻撃していた
「パパいじめちゃメッ!おいたんきらい!パパ、いたいいたい?」
オレが泣いてるのを虐められていると勘違いしたのか、今も攻撃して守ろうとしている姿に笑みが溢れてしまう
「ふっ…あはっ、あはははっ」
あまりにも愛しい存在につい笑ってしまい、涙を指の腹で拭ってから拓を抱き締める
「ありがとう、拓。大丈夫、いじめられてたわけじゃないよ」
そんなオレたちの様子を少し拗ねた顔で見つめる拓也にもつい笑ってしまう
バツの悪そうな顔を一瞬見せるも、すぐに破顔して拓の頭を撫でてくれる
「拓は強いなぁ~、ちゃんとパパを守ってきたんだな
でも、パパを苛めてたわけじゃないんだからな。まぁ、次はベッドで散々鳴かせるだろうけど」
ずっと好きだった勝ち気な笑みを浮かべ、とんでもないことを息子に話す彼に目を見開いて驚き
「ばかっ!そんなこと教えんな!」
顔を赤らめながら文句を言うと、そっと耳元で囁かれた
「次の発情期で必ず噛むからな
とりあえず、ここは狭いし、壁が薄いからさっさと引っ越すぞ」
これからは、おもちゃもいっぱい買って貰えるし、ご飯もいっぱい食べれるようになるからね」
意味のわかっていない拓は、またお客さんが遊びに来てくれるのだと思っているのか、キャッキャっと嬉しそうにしている
嬉しそうにぬいぐるみやミニカーを準備する姿に胸がいっぱいになってしまい、背後から強く抱き締める
「拓、離れていても愛してるよ。オレの大切な宝物」
オレの言葉の意味をまだ理解出来ていないのか、いつものように擦り寄って抱き着いてくる拓に愛しさと寂しさが募っていく
拓也と再会した日から2日後、『今日迎えに行く』って連絡があった
連絡先をあの時に教えてしまったのを何度も後悔したけれど、これでよかったのかもしれない
これで、拓はしあわせになれるんだから…
オレが悲しいのも寂しいのも、そんなの拓には関係ないから…
コンコンと軽いノック音を聞いて振り返ると、玄関に彼が待ち構えていた
「おい、準備出来ているのか?時間もないからさっさと詰め込んで行くぞ」
部屋に入ってきた彼に胸が締め付けられる
「拓をよろしくお願いします。母子手帳もこの中に入れたから、ワクチン接種についても確認して貰えたらわかるから
あと、これ拓の好き嫌いとかノートにまとめたから読んで貰えると嬉しいな…」
昨晩、拓が寝ている間に書いたノート
出来るだけ詳しく、びっしりと拓についてあれこれ書き込んだノートだが、ノートには所々涙で滲んで読みにくい箇所がいくつか出来てしまった
書きながら、これまでの事を思い出してしまって涙が止まらなくて
離れることが、もう成長を見守ることが出来ないのが悲しくて…
「無理だと思うけど、たまには会わせて貰えると嬉しい。
ダメなら、遠くから見守れる日があればいいんだけど…ダメかな…?」
泣くのを必死に堪えているせいで、声が震えてしまう
必死に笑顔を作るも引き攣った不細工な顔になってるんだろうな…
「何言ってんだ?ダメに決まってるだろ?」
呆れたように溜息を吐き出して言う拓也の言葉に息が詰まる
やっぱり、2度と会わせて貰えないのかな...
オレが勝手に産んじゃったから...
「お前が育てるのには変わりないだろ。勝手にベビーシッター頼んで楽しようとすんな」
頭をガシガシと掻きながら、口をへの字に結び文句を言いたげにオレの事を見て来る
「…えっ……ウソ…」
思っても見なかった返事にオレは目をパチクリとしてしまい、頭が追いつかなくて
「だ、だって…拓也には番か彼女が居るんじゃ?オレが一緒に行くなんて無理じゃ…」
盛大な溜息を吐いて後、いきなり抱き締められて意味がわからなくて硬直してしまう
「まさか、子どもだけを連れて帰らせるつもりだったのか?
何度も言うが、俺の番はお前だけだ。昔からそう言ってるだろ」
呆れたような困ったような笑顔を向けられる
「って…悪い、俺の言葉が足りないのが原因だよな…
コータが居なくなってから、ちゃんと『愛してる』って伝えてなかったのを後悔した。お前も一緒の気持ちだって思っていたから…」
ヒヤリと冷えた手が、オレの頬を撫でる
「コータ、愛してる。この4年、ずっとお前を探していた
初めて会ったあの時、俺の運命の番だって思って、絶対に俺のモノにするって決めてた。
他の奴らに取られないよう側に居て、周りに牽制もした…
コータが大学を卒業したら、プロポーズする為に地盤を固めたくてお前の気持ちを蔑ろにしてしまって、本当にすまない…」
初めて聞かされる拓也の気持ちがまだ信じられない
夢じゃないかって、オレの都合のいい夢じゃないかって、不安になる
拓也が、オレのことを愛してるって…そんな、夢みたいなこと…
「だ、て…あの日、Ωの彼女が…拓也の家に来てたから…あの人が好きな人じゃないのか?本当は、あの人が本命で番なんじゃ…」
拓也の言葉を聞いても信じきれなくて、泣きそうな顔であの時に会った女性のことを問い詰める
「本当、お前はせっかちだよな…。昔から、グダグダ自分だけで考えこんで暴走すんなよ…
あの日、お前が俺の前から突然消えた日に会った女性は、俺の母親だよ。呼び止めようとしたのに、勝手に勘違いして、慌てて帰るから母さんも心配してた」
今更知らされる真実に目を見開いて驚く
全部、自分が思い込んでしまったから…
ちゃんと、拓也に相談しなかったから…
母親って、あんな若くて綺麗な人が…?
「ごめんな。それだけ不安にさせてたんだよな…
コータ、俺は今もお前のことを愛してる。お前が居なくなって、無理矢理にでも頸を噛んで番にしとけば良かったと後悔したんだ...
ずっと、ずっと、お前をまた抱き締めたいって願ってた」
抱きしめる腕の力が強く、逃げられない
頬を撫でる手が気持ち良くて、今にも触れそうな唇から目が離せない
「……好きで、いていいの…?
オレ、こんな…ひとりで、勝手に…グダグダ考えちゃって…拓も、子どもも勝手に産んじゃったから…」
ボロボロと涙が溢れ出して止まらない
今までずっと、色々我慢していた気持ちが溢れ出してしまい、止め処なく溢れ落ちてしまう
さっきよりも強く抱き締められてちょっと痛い
痛いけど、久々に感じる拓也の匂いに包まれて安心してしまう
この心地良いこの人の番に、本当になっていいのなら...
恐る恐る自分からも腕を回して服にしがみ付く
「ひっぐ…オレも…ずっと、ずっと…好き、ずっと…言いたかった…」
嗚咽が混じってしまい、ちゃんと言葉に出来なかったけど、やっと言うことが出来た
拓也はそんなオレを抱き締めながら何度も頷いてくれる
「コータ、愛してる。もう、俺の前から消えるなよ」
触れる唇が熱い
差し込まれる舌に口内を舐め回され、頭が溶けそうになる
発情期でもないのに、身体が熱くなってしまって何も考えられない
「ッ!?いってぇー!?」
ガッガッガッと何かで叩く音と拓也の声に、ボーっとしていた意識が戻り、足元を見る
真っ赤な顔で頬をぷっくりと膨らませ、両手にパトカーとバスのミニカーを持った拓が、拓也の脚を殴って攻撃していた
「パパいじめちゃメッ!おいたんきらい!パパ、いたいいたい?」
オレが泣いてるのを虐められていると勘違いしたのか、今も攻撃して守ろうとしている姿に笑みが溢れてしまう
「ふっ…あはっ、あはははっ」
あまりにも愛しい存在につい笑ってしまい、涙を指の腹で拭ってから拓を抱き締める
「ありがとう、拓。大丈夫、いじめられてたわけじゃないよ」
そんなオレたちの様子を少し拗ねた顔で見つめる拓也にもつい笑ってしまう
バツの悪そうな顔を一瞬見せるも、すぐに破顔して拓の頭を撫でてくれる
「拓は強いなぁ~、ちゃんとパパを守ってきたんだな
でも、パパを苛めてたわけじゃないんだからな。まぁ、次はベッドで散々鳴かせるだろうけど」
ずっと好きだった勝ち気な笑みを浮かべ、とんでもないことを息子に話す彼に目を見開いて驚き
「ばかっ!そんなこと教えんな!」
顔を赤らめながら文句を言うと、そっと耳元で囁かれた
「次の発情期で必ず噛むからな
とりあえず、ここは狭いし、壁が薄いからさっさと引っ越すぞ」
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