貧乏Ωの憧れの人

ゆあ

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あの日、無理矢理荷物をまとめられ、拓也のマンションにそのまま引っ越しさせられた
元々持っていた物は少なかったから、引越しするのは楽だったものの、今までの極貧生活は一変した

拓も広い部屋に喜び、拓也によく懐いている
「おいたん、しゅごいねー。おっきいねぇー」
広々としたリビングが珍しいのか、キャッキャッと笑い声を上げながら部屋を走り回っている
ソファーの背に乗り、窓から外を眺めながら目を輝かせている拓を抱き締め
「こら、拓。お行儀悪いよ」
頬擦りするように拓の頬にオレの頬を擦り寄せ
「パパ、しゅごいね!しゅごいね!おうち、いっぱい!ちっちゃいね!」
興奮で全く聞いていないことに苦笑してしまう

「俺のこと無視してイチャつくなよ」
後ろから腰に腕を回されて抱き締められ、肩口に頭を乗せて文句を言ってきた拓也に苦笑してしまう
「拓、俺のことパパって言ってみ?」
拗ねたように口を尖らせて言う

「パパ?」
オレの顔と拓也の顔を交互に見ながらオレを指差して「パパあっち」と言う拓
どうしても自分をパパと呼ばせたい拓也とずっとオレのことを『パパ』と呼んでいたせいで困惑している拓の攻防を見て笑ってしまう

「拓、ママだよ。オレのこと、ママって呼んでみて」
抱き締めた拓の額に自分の額を当てて視線を合わせながら話す
不思議そうにオレを見てくるも「まぁま?」と嬉しそうに笑いながら言ってくれる拓に涙が溢れ出し、ギュッと抱きしめる

「そう、ママだよ。オレが拓のママだよ。拓、愛してるよ。オレの、宝物」




一緒に住み始めてから最初の発情期ヒートになる時、拓を拓也の実家に預かって貰うことになった

4年前のあの時、拓也のマンションの部屋の前で会ったΩの女性がすっごく嬉しそう顔で拓を抱き締めてくれて
「キャーッ!拓ちゃん、おばあちゃんですよ~。拓ちゃんにすっごく会いたかったんだから!
もう!幸太くんには色々言いたいことあるんだけど、拓也にさっさと噛まれてらっしゃい!
拓也、絶対に逃すんじゃないわよ?足腰立たなくなるまで快楽堕ちさせて、泣いて逃げても押さえ込んで確実に番にしてらっしゃい!」
と結構怖いことをすっごくイイ笑顔で言って、二人でサムズアップしながら頷いていた




そんなわけで、今日から1週間、息子を産んでから初めての拓也との二人っきりの期間が始まってしまう
あれよあれよと引っ越しさせられて、慣れ始めた部屋なのに、二人っきりってだけで心臓が飛び出しそうな程ドキドキする

「コータ、何緊張してんだ?」
ソファーに座ってくつろいでいる拓也にモジモジしていると、手を引かれ倒れ込むように彼の胸に飛び込んでしまう
「ホント、前より軽くなってるじゃねぇーか…。いっぱい我慢させちまって悪かった…」
ギュッと抱き締められながら、耳元で低く囁かれる声にお腹の奥が熱くなるのを感じる

「…ホ、ホントに…オレでいいっ」
言い切れ前に噛み付くようなキスをされ、口内を舌で嬲られる
呼吸もままならなくて、発情期ヒートを促すような拓也のαのフェロモンに頭がボーっとしてしまう
「お前しかいらないって言ってるだろ。もう素直に受け入れろ。俺の番はコータだけだ」
いつも見上げていた拓也の顔を覗き込み、不安になりながらも自分からもキスを強請る
お互いの舌を絡ませながら、今まで離れていた時間を埋めるようなキスに溶けてしまいそうになる

そのまま、なす術もなく発情期ヒートになってしまい、本能のままに拓也を求めてしまった


「んっぁ…拓也、拓也…好き、好き…もっとぉ…」
何度もナカを擦り上げられ、イキそうになる度に呼吸が出来ないくらいキスをされる
頭に酸素が足りなくて、意識が飛びそうになると強くナカを犯されて、頭がチカチカとする
声も絶え絶えになりながら、何度も「好き」と口にした

ずっと言いたかった言葉
ずっと求めていた言葉

一番奥に拓也の熱いモノが挿ってくるのを感じ、何度も抜き差しされる度に精を吐き出した

「コータ、愛してる」
奥に熱いモノを注がれると同時に、頸を噛み付かれ痛みと快楽で頭が真っ白になってしまう

その後も、休ませてなんて貰えなくて、拓也の温もりと匂いを感じながら、デロデロになるまで愛された

今日、やっと、憧れの人に番にしてもらえた
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