生き別れの兄が魔法使いだった

小倉みち

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第2章

初めて

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「で、どうやって行くの?」 


 金曜日の夜、遠足の前夜に起こる、あの妙な高揚感が私の心を支配していた。


 楽しみというか、明日私の中の何かが変わるという、ある一種の期待のせいで、私は慌ただしかった。


 リュックサックを用意し、2日分の着替えと歯磨き粉、歯ブラシ、タオル、下着、ティッシュ、スマホ、バッテリー満タンのモバイル充電器などなどを詰め込んでいく。

「そんなに持っていかなくても良いよ」


 兄は言った。

「僕の家にもある程度物は置いてあるしね。お金はあるから、現地でも買えるよ」


 異世界の日用品か。

 ちょっと気になる。


 ――が、やっぱり一応念のためにリュックは持っていくことにする。


「で、どうやって行くの? 異世界には」


 当日、私は兄に尋ねた。

「どういうルートで? 歩いて?」

「まあ多少は歩くけど」


 兄は眠そうに目を擦る。

「前に言ったでしょ? 僕がこの世界に戻ってこれたのは、向こうからこの世界に続く道があったからって。まあ要するに、ここと向こうの時空のひずみがあってね。そこを通れば向こうに渡れるよ」

「で、そのひずみってどこにあるの?」


 薫はにっこり笑って言った。

「小学校だよ。近所の」

「えっ」

「小学校の1階の女子トイレの窓から出れば良いんだ」


 ……うわ。

 


 
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