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第2章

小学校

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 まさに犯罪だった。


 土日に、どう考えても小学生には見えない成人男性とJKが小学校に侵入する。

 その字面だけでも凶悪なのに、向かう場所は1階の女子トイレである。


 地獄絵図。


 そんなの、バレたら命がない。

 私だってこの歳で警察に捕まりたくないし、そもそも小学校に侵入なんてヤンチャなことをするようなグループに属しているわけでもない。


 今の今まで義両親に迷惑をかけないよう、

「なんでこんな子を娘にしたんだ」

 と後悔させることのないよう、「良い子」として生きてきた私には無謀な話だった。


「本当にやるの?」


 ただし、約束は約束なので、私は自分よりも背の高い兄に隠れるような形で、嫌々小学校に向かう。


 自分の身長よりも少し低めの門を見つめながら、私は薫に尋ねる。

「もちろん」

「ほかに、その異世界への入り口とかはないの?」

「少なくともこの辺にはないね」

「ほかの場所は?」

「知らない。僕、ここしかわからないから」


 私はため息をつき、周囲を見渡す。

 
 幸か不幸か、周りには人がいなかった。

 普段、小学校の校庭でご老人がパターゴルフなんかをしているのを見かけることがあったが、今日はないみたいだ。

 学童保育も、ここの小学校内部ではやっていないらしく、校内は完全に静まり返っていた。


 私は、意を決して門に触れる。


 ……動かない。

 鍵がかかっているみたいだ。


「やっぱり」

 私は少しほっとしながら、兄に言う。

「鍵がかかってる。中に入るのは無理よ」


 が、兄はふふんと得意げに笑う。

「僕を誰だと思っているだい?」


 薫はそう言って、門の鍵穴に手を触れ、この世のものではない言葉を呟く。

 すると――。


 ガチャ。


 小気味良い音とともに、門が開いた。

「よし、進もうか」


 探検を楽しむ無邪気な子どものような顔で、兄は我先にと小学校の門をくぐった。
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