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本編

練習します

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「ルシー、もう少し力を抜いて?僕が横で支えてあげるから大丈夫だよ。今度、カルファ用の鞍を準備しておくから、歩くのはその時まで待てる?」

もちろん、待ちます。
自分が無理を言って歩いてもらえば、間違いなく落馬するだろう。
そうなるとギル兄様はとても心配するし、パパも泣くかもしれない。

パパは自分が少し怪我をするだけで、いつも泣きそうになりながら治癒魔法をかけてくれるのだ。
それに気が付いてからは、騎士団内で怪我をしてしまった時はペンギンに治してもらっていたりする。
ペンギンに初めて治療してもらった時は、ペンギンが狭い治療室を走り回り、物を落として壊しまくった後、何故か魔法で水の輪っかを作って相棒の隊長さんにしこたま怒られていたのを鮮明に覚えている。
水の輪っかは小さかったのだが、隊長さんの頭上に作り出した為に隊長さんの頭は洗髪後の様にビショビショに濡れてしまったのだ。

「落ち着け!馬鹿ペンギン!」

こめかみに今にもキレそうな青筋を発見した時は、自分が怒られている訳では無いのだが、震え上がったものだ。
そんな状態なので、極力怪我は避けたい。
鞍を準備してくれるのなら、それが1番安全だろう。
乗馬はもちろん今後はずっと練習を続けていくが、そのまま乗れる様になるには相当時間がかかると思う。
もしかしたら、自分の能力では無理かもしれないとさえ思ってしまう程だ。

「カルちゃん、ごめんねぇ。ぼく、れんちゅう、しゅるねぇ」

近い将来、パカパカと補助なしで乗りたい。
馬は微動だにせずまるで木馬の様に固まってくれているので、今日は馬上を楽しむ事だけを考える事にする。
大きさは大型犬なので、ギル兄様の腰の高さ程しかないのだが自分にとっては結構な高さだ。
見晴らしがいい。

「カルちゃん、ぼく、たのちい!ありがとぉ」

そっと鬣を撫でると、小さく鳴いて応えてくれた。
多分だがぶるると震えると、自分が落ちるとわかっているのだと思う。
熊と虎は心配そうに周りをウロウロしているが、そこは大丈夫だと信じて欲しい。
なにせ、ギル兄様が自分の両脇を持って支えてくれているのだ。
落ちる筈がない。

「ファルシュター君、ありがとう!鞍は準備しておくから、また来てくれるかい?」
「うん!れんちゅう、しゅる!」

さっきまでのすごい形相が嘘の様な穏やかな笑顔で馬の相棒が誘ってくれた。
もちろん、今後は頻繁に通って練習させてもらう気でいる。
訓練場には来れないが、いつもの馬の獣舎に行ってまずは1人で乗って座っていられる様にならなければ、大空を駆けるなど出来はしないだろう。
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