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本編

持久力もない

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訓練場に着くと、真っ先に馬が駆け寄って来てくれた。
後ろから馬の相棒がすごい形相で走って来ているが見なかった事にしたいと思うレベルだ。
そんなに訓練が厳しいのだろうか。
彼とはギル兄様を崇める信者仲間なので、身体を壊さないか心配だ。
布教活動をするにしても、身体が資本だと思う。
無理をしてはいけない。

「カルちゃん、こんちは。きょうは、おやつ、ないのよぉ。ごめんねぇ」

大きな顔を擦り寄せながら甘えてくれるのが可愛い。
鼻先を撫でながら謝ると、ぶるるっと返事をしてくれた。

「ファルシュター君!カルファが縮小化の魔法を覚えたんだ。是非、背中に乗ってみてもらえないかな?」

なんと、馬まで小さいなる魔法を使える様になったらしい。
今まで馬はあまり魔法を使っていなかったと思う。
もちろん自分が知らないだけで、強化系の魔法などは使っていたのかもしれないが、目に見える形の魔法は初めてだ。
凄い。
これは大空を駆ける夢に一歩近づいた気がする。

「カルちゃん、ちっちゃく、なる?ぼく、のしぇて?」

お願いすると、熊や虎と同じように光に包まれみるみる身体が小さくなっていった。
大型犬と同じ位の大きさになった馬が綺麗な瞳で自分を見つめている。
なんて可愛いんだ。
真っ黒の身体は同じなのに、小さくなると鬣の色が黒から灰色に変化するみたいだ。

「しゅごい!にいしゃま、のしぇて!」

どんなに小さくなってくれても、1人では乗ることが出来ないのは悔しいが、こちらは練習するしか無いだろう。
熊やペンギンがいれば多分乗せてくれると思うが、いつかは1人で乗れるようになりたいので頑張るしかない。

「ふふ。ルシー、興奮して落ちないようにね。しっかりカルファに掴まってるんだよ?」

ギル兄様が両脇を支えて乗せてくれた。
 これは大変だ。
乗馬の経験が無いから何処に力を入れて良いのかわからないし、掴まる場所も鬣とかだと馬が痛い思いをしてしまう。
とりあえず太腿に力を込めて挟んで体を安定させようと頑張っているのだが、持久力が無さすぎてすぐに足がプルプルしてしまう。
グリフォンの時と同じ様に首にしがみ付こうかと思ったのだが、手が短くて届かない。
どうしたらいいのかわからず困っていると、馬も不安なのか歩かずジッとしていてくれる。
なんて賢いのだろう。

これは、アレだ。
虎の背に乗る用のファンシーなプリンセス仕様の鞍と同じ物が必要だと思う。
もちろん、プリンセス仕様ではなく馬に似合う普通の鞍でお願いしたいのだが贅沢は言わない。
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