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本編

作戦失敗

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「ファルシュターぼっちゃまは本当に天使のような子ですね。孫を許して下さりありがとうございます」
「ファルシュター様、ありがとうございます」
「まっちぇ!ぼく、ファルって、よんで?しゃまはいやよぉ」

天使扱いは慣れてしまったのでスルーできるが、これだけは譲れない。
リント君が自分の事を様付けで呼ぶのなら、コチラも同じ対応をさせていただく所存です。

「ルシーは様付けで呼ばれるのが嫌なんだね。可愛いな。リントもファルって呼んであげてよ……2度目はないけどね」

ギル兄様がフォローしてくれたので、なんとか様付けは回避出来たと思う。
最後、ボソッと呟かれた言葉は聞こえなかったけど、いつもの優しい笑顔だったので特に問題ではないだろう。

「俺もぼっちゃまって呼ぶ」

何故だ。
リント君はギル兄様の事はギルバートと呼び捨てにしたり、ギルと愛称で呼んでいるのに、何故自分がぼっちゃまなんだ。
このお屋敷の正真正銘おぼっちゃまはギル兄様だ。

なにより歳の近い少年にぼっちゃまと呼ばれたくはない。
大人から見たら歳の差もあるので仕方がないと諦めもつくが、ギル兄様と同い年なら自分とは七歳差だ。
いくら仕えているからと言っても、ギル兄様とは友達の様に接しているのなら、自分の事は友達の義弟だと思って気軽に接して欲しい。

「ぼっちゃま、ダメよぉ。ファルちゃんねぇ」

そっちがその気なら、こちらにも考えがあるのだ。
呼ばれて自分だけが恥ずかしい思いをするのは嫌だ。
それなら呼ぶ方にも恥ずかしい思いをしてもらおう。
彼ならきっとファルちゃんと呼ぶ事に、抵抗を示す筈だ。
そうなったら、こちらの勝ちだ。
普通に呼び捨てにしてもらおう。

「わかった。ファルちゃん、俺とも仲良くして貰えると嬉しい」

どうしたんだ、リント!
そんなキャラじゃなかっただろう!
何を普通の顔をしてファルちゃんなんて呼んでいるんだ。
これではただ自分が痛いヤツなだけじゃないか…。

「ファルちゃんって呼ばれたかったの?僕もルシーちゃんって呼ぼうか?」

ほら見ろ。
ギル兄様がとんでもない勘違いをしてしまったじゃないか。
ギル兄様は今まで通りルシーと呼んで下さい。
そして、お爺さま。
小さな声でファルちゃん、ファルちゃんと呟くのはやめて下さい。
お爺さまはさっきまで呼び捨てにしてくれていたのだから、そのままでお願いします。

計画は失敗してしまったが、距離は縮まったので良しとしよう。
パパは明らかにホッとした表情をしているし、きっとリント君の今後を心配していたのだと思う。
自分も家族の崩壊現場など見たくなかったので、パパと同じかそれ以上にホッとしたのは言うまでもない。
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