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本編

彼は悪くない

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息子さんの名前は確か、リントだった気がするのだが自信がないので呼ぶ事は出来ないと思っていたら救世主が現れた。

「リント、下がりなさい。謝罪もせず許されてもいない貴方が近付いて良い方ではありません」

救世主は激おこのセイバースさんだ。
その声に反応して、リント君は元の位置まで戻ろうとしている。
行かないで。

「リントくん、ごめんなしゃい」

急いで起き上がり、顔を見て謝った。
リント君は驚いているのか、目が大きくなっている。

「ファルシュター、お前が謝る事は無い」

お爺さまがそう言ってくれたが、そんな事はあるはずがない。

「なんで?リントくん、にいしゃま、すき。だから、ぼくに、おこったんだよぉ。にいしゃまが、いやな、きもち、なるの、ダメだもんねぇ」

リント君はギル兄様の為に苦痛を排除しようとしただけだ。
自分だって同じ立場ならそうすると思う。

「それでも、俺は…。まだ小さいファルシュター様に乱暴を働きました。申し訳ありません」

ちょっと待って。
様付けで呼ぶのはやめて欲しい。
ぼっちゃまも恥ずかしいけど、自分は様付けされるような立場の人間ではない。
森で拾われたのだ。
多分だが、捨てられたんだと思う。
それに乱暴などされていない。
確かに初代ツノ(枝)は壊れてしまったが、アレは不幸な行き違いだったのだ。
今はギル兄様から頂いた二代目ツノ(枝)があるし、気にしていない。
それどころか自分の愚かな行いを気づかせてもらい感謝しているくらいだ。
ギル兄様の為に怒ってくれてありがとう。
嫌な気持ちにさせてごめんなさい。
その気持ちでいっぱいだ。

「ルシー、リントを許せるの?」
「ぼく、おこって、ないよぉ。ぼくが、わるいこ、だったの。リントくん、いいこだもん」
「だが、ファルシュターの宝物を壊したんだろう?」
「これ、あるから、へーきなの」

初代より二代目の方が、ギル兄様が見つけてきて下さったというだけで随分とグレードアップしているのだ。
初代の事は悲しかったが、今では土に還りまたどこかで芽吹いてくれたらいいと思っている。
嬉しくなってヘラッと笑ってしまったが、不謹慎だっただろうか。

「リントくん、ぼく、わるいこ、なったら、メッてしてねぇ」

ストッパー役としてとても期待しているので、自分が間違えていたり暴走している時は、強めに叱って止めて下さい。
リント君の大きな手を両手で握りしめ、ぶらぶらと揺らしてお願いしておいた。

体格差がありすぎて、それだけでも重労働だったのは秘密にしておきたい。
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