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復活
アレクside突然の銀髪の青年
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逃げて来ていた。もう、組織に良い様に利用されるのは御免だった。もっと早くにこうすれば良かったんだ。社交界デビュー直前に、私の運命は崩れ去った。もともとハリボテの人生だったのだから笑える。他人のものを自分のもののように振る舞っていたのだから、その罰を受けたのだ。
私を強引に連れ出した男爵夫人は自分の母親だとは、一瞬でも思いたくはなかったけれども、僅か11歳の後ろ盾のない私には、頼るものはそこにしかなかった。滅ぼされた国の末裔たちが組織する地下組織に、男爵夫人は私を連れて行った。
私は貴族として歴史を学んでいるが、あんな100年も前のことを、ぐだぐだと引きずっているあいつらが笑えて仕方がなかった。自分の人生がうまくいかないことを、この国を理由づけているだけに過ぎない彼らは、子供の私の目から見てもお粗末なものだった。
だが一方で私もまた、人生に裏切られた1人ではあった。私は貴族の教育を受けていたので、何かと対外的な役割が与えられた。地下組織の資金を稼ぐために、商売するとしても、品の良い子供がいると信用が増すのだろう。
しばらくは、そんな商人の様な生活をしていたので、これもまた人生かと私はそれを楽しみ始めていた。ところが、しばらくすると、先鋭的な地下組織のメンバーが国のあちこちでキナ臭い真似をするようになった。
私はとことん嫌気がさしていたので、今までの経験を生かして、組織のための資金を稼ぐと言う名目で、商売の方へと役割を移すように頼んだ。少なくとも商品の取引は正当なもので、それは私に普通の生活を与えてくれると思ったのだ。
そして私はロッキンと会ってしまった。年上のロッキンが私の仕入れた商品を気に入って、商売の事も親切におしえてくれ、優しくしてくれた。私は外国とこの国を行き来しながら、ロッキンに会うのが楽しみになった。
しかしそれをよく思わないのは男爵夫人だった。私は王国の血が入っているのだからと、煩く言い始めた。滅亡したギガ国の末裔とは夫人の信憑性のない主張だったけれど、それは組織内ではもはやどうでも良い大義名分になっていたのに。
男爵夫人はそんな組織の空気を読んで、ある日突然失踪した。なんでも金持ちの恋人ができて一緒に逃げたと言う事だった。あの女ならやりそうなことだ。
あの女が大事にしていた末裔の名目は軽くなり、組織もまた金で、他国からのこの国への政治的侵略に利用される様な、暴力集団に成り下がっていたのだ。私は逃げ出す算段をし始めた。いつもロッキンの所へ一緒に監視としてついてくる、卑下た男に疑いの眼差しを向けられている事には気づかなかった。
そして今日私はついに、隙を見て商用のフリをして逃げ出した。ロッキンに匿ってもらおうとしたのだ。しかしあと少しのところで、私は組織のナンバー2の男に捕まってしまった。冷酷で有名なこの男は、普段から私を妙な目で見ていた男だ。
大通りまであと少しの場所で、私は通行人がチラチラとこちらを気にするのを感じながらも、この男の手を振り解いて、逃げることが出来ないでいた。私は、愛するロッキンを近くに感じながらも、二度と会えなくなるのだと絶望を感じた。
するとそこに銀色の髪を閃かせて、私と男の間に青年が立った。私はこの抜ける様な柔らかな銀の髪に見覚えがあった。それは私が焦がれてならなかった、肖像画の中にあったものと同じだった。
私を強引に連れ出した男爵夫人は自分の母親だとは、一瞬でも思いたくはなかったけれども、僅か11歳の後ろ盾のない私には、頼るものはそこにしかなかった。滅ぼされた国の末裔たちが組織する地下組織に、男爵夫人は私を連れて行った。
私は貴族として歴史を学んでいるが、あんな100年も前のことを、ぐだぐだと引きずっているあいつらが笑えて仕方がなかった。自分の人生がうまくいかないことを、この国を理由づけているだけに過ぎない彼らは、子供の私の目から見てもお粗末なものだった。
だが一方で私もまた、人生に裏切られた1人ではあった。私は貴族の教育を受けていたので、何かと対外的な役割が与えられた。地下組織の資金を稼ぐために、商売するとしても、品の良い子供がいると信用が増すのだろう。
しばらくは、そんな商人の様な生活をしていたので、これもまた人生かと私はそれを楽しみ始めていた。ところが、しばらくすると、先鋭的な地下組織のメンバーが国のあちこちでキナ臭い真似をするようになった。
私はとことん嫌気がさしていたので、今までの経験を生かして、組織のための資金を稼ぐと言う名目で、商売の方へと役割を移すように頼んだ。少なくとも商品の取引は正当なもので、それは私に普通の生活を与えてくれると思ったのだ。
そして私はロッキンと会ってしまった。年上のロッキンが私の仕入れた商品を気に入って、商売の事も親切におしえてくれ、優しくしてくれた。私は外国とこの国を行き来しながら、ロッキンに会うのが楽しみになった。
しかしそれをよく思わないのは男爵夫人だった。私は王国の血が入っているのだからと、煩く言い始めた。滅亡したギガ国の末裔とは夫人の信憑性のない主張だったけれど、それは組織内ではもはやどうでも良い大義名分になっていたのに。
男爵夫人はそんな組織の空気を読んで、ある日突然失踪した。なんでも金持ちの恋人ができて一緒に逃げたと言う事だった。あの女ならやりそうなことだ。
あの女が大事にしていた末裔の名目は軽くなり、組織もまた金で、他国からのこの国への政治的侵略に利用される様な、暴力集団に成り下がっていたのだ。私は逃げ出す算段をし始めた。いつもロッキンの所へ一緒に監視としてついてくる、卑下た男に疑いの眼差しを向けられている事には気づかなかった。
そして今日私はついに、隙を見て商用のフリをして逃げ出した。ロッキンに匿ってもらおうとしたのだ。しかしあと少しのところで、私は組織のナンバー2の男に捕まってしまった。冷酷で有名なこの男は、普段から私を妙な目で見ていた男だ。
大通りまであと少しの場所で、私は通行人がチラチラとこちらを気にするのを感じながらも、この男の手を振り解いて、逃げることが出来ないでいた。私は、愛するロッキンを近くに感じながらも、二度と会えなくなるのだと絶望を感じた。
するとそこに銀色の髪を閃かせて、私と男の間に青年が立った。私はこの抜ける様な柔らかな銀の髪に見覚えがあった。それは私が焦がれてならなかった、肖像画の中にあったものと同じだった。
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