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時勢の変貌

エイデンside閉ざされた想い

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馬車で侯爵家からサミュエルを連れ去る時に、アルたちの視線が痛いのは気づかないふりをするくらい、私はサミュエルと二人だけになりたかった。私たちがをして以来、遠征から戻る度にサミュエルは日々美しく成長していった。

私は昔からサミュエルを好きだったけれど、当時はまだ兄様としてサミュエルの可愛さに絆されていた面も多分にあった。だから遠征先で仲間たちと遊びに行くことに罪悪感もなかったし、それが普通だと思っていた向きもあった。


けれどもサミュエルに性教育の手解きをした時の印象はいつまでも心の奥に住みついた。サミュエルの前にもお兄様契約で他の令息に同様の事をしたのにも関わらず、なぜかサミュエルの事だけ忘れることが出来ずにいたんだ。

騎士科卒業後、黒騎士団に所属するようになって、私はなかなか王都へ戻る暇が無かった。そんな中、仲間内で麗人と呼ばれるある令息の噂が囁かれるようになった。

聞くとも無しに聞いてみれば、その麗人とはサミュエルの事だった。へたをするとそこら辺の貴族令嬢よりも彼は美しく際立っていた。そして、彼自身若きケルビーノ伯爵であり、15歳にしてヴィレスク侯爵の指導の元、自領経営も始め、騎士科の学術もそつがないと皆の関心を集めていた。


私の前ではいつも可愛らしく頬を染めるサミュエルがいつの間にそんな大人びたのだろうと、遠征から戻った時にサミュエルに会いに行ったんだ。

彼は15歳にして際立って成長していた。今までも美しい令息には間違いなかったが、目の前のサミュエルは以前の子供っぽさは影を潜めて、何処か謎めいたゾクゾクする様な眼差しを持つ青年に成長していた。

私は自分でも呆れるほど狼狽えて、一方で何が彼をこれほど変えたのか湧き上がってくる嫉妬心の様なものを感じながらサミュエルに尋ねた。


「…サミュエルはどこか変わったね。しばらく会えない間に随分大人っぽくなった。…誰か好きな人でも出来たのかい?」

するとサミュエルは顔を赤らめて、私から顔を背けた。私は胸の奥が焼かれる様な経験の無い感覚を覚えながら、思わず自分の胸元をぎゅっと掴んだ。

するとサミュエルは顔を背けながら掠れた声で言った。

「僕はずっとエイデン様が好きです。…そんな言い方をするなんて、エイデン様は僕の事など単なる弟としか思っていないんですね。」


私は思わずサミュエルの顔が見たくて、サミュエルの身体をこちらへ向けさせた。私を見つめる悲しげなサミュエルの紫色の瞳から涙が一粒こぼれ落ちるのを見た瞬間、私はあの王都の湖へ二人で遠乗りに出掛け、お兄様契約した日の事を思い出した。

あの時私はサミュエルを愛していると言った。サミュエルが幼くて無意識に蓋をしていたその気持ちが、今もう一度解放されて目の前に湧き上がるのを感じた。

私はサミュエルを愛していた。あの日からずっと。それは美しくも苦しい日々の始まりだったけれど。

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