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新しい生活

面談ですね?

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「サミュエル様、こちらです。」

目の前の品の良いロマンスグレーの執事が、菩薩のような微笑を浮かべて僕を重厚な扉の前に案内した。


先程長男のアルバートに馬で拾われて戻った僕は、部屋から忽然と姿を消してしまったせいで、メイド達を慌てさせていたみたいだ。ごめんなさいと申し訳なく思って謝る間も無く、汗の滲んだ服をサッと着替えさせられて、部屋に運ばれた朝食を急いで食べるように言われたんだ。

執事曰く、本来なら食堂で食べるところらしかったけれど、僕の予想外の動きで時間が無くなったらしい。二度目のごめんなさいだ。

というのも、侯爵と昨夜約束した面談というのか、お話し合いが予定されていたんだ。僕の事は自分からは一切話をしていないので、侯爵も直接聞きたいんだろう。



「旦那様、サミュエル様がいらっしゃいました。」

僕が部屋に案内されて入ると、そこには侯爵と長男のアルバート様がソファに座っていた。僕は空いている三人掛けのソファの端っこに座ると、僕たちの後からついてきていたメイドがお茶を淹れるのを見るともなしに眺めていた。

侯爵の広い執務室は、凝った装丁の分厚い本の詰まった本棚や、オブジェ、鉱石の飾りのようなものが幾つか飾られていた。僕が物珍しげにそれらを見つめていると、いつの間にメイド達が立ち去ったのか、部屋には三人だけになっていた。


「よかったらお茶を飲みなさい、サミュエル。朝、庭園を走る君を見たよ。随分走るのが早いね。…今日は君から今までの話を聞こうと思ってね。

でも、まずは私から話をしよう。サミュエルには本当に申し訳ないことをした。まさか後見人になったゲッダム男爵が、君を軟禁して身代わりを立てていたとは夢にも思わなかったんだ。


私はつい最近外交の仕事を終えてこの国に戻ってきたんだ。もちろん行き来はたまにしていたが、なかなかサミュエルには会えなかった。男爵の伏せっているとか、親戚のところに出掛けているという言葉を間に受けてしまったのだ。

今思えば無理にでも会うべきだった。でももう済んだことをくよくよ思い悩んでもしょうがない。サミュエルのこれからの事をしっかり考えるのが私の罪滅ぼしになるだろう。」


僕はふと疑問を感じて侯爵に尋ねた。

「侯爵は僕が本物のサミュエルだと、なぜ信じて下さるんですか?今もケルビーノ伯爵家にはがいるでしょう?」

侯爵はふっと笑って答えた。心なしかアルバートも微笑んでいる。

「それはまさに、伯爵家のサミュエルに会ったからだよ。彼は私の妹に何ひとつ似ていなかった。ケルビーノにもね。…亡きケルビーノ伯爵は私の学院時代の良き仲間だったのだよ。

だから私は拭えない違和感を持ったんだ。私の妹の息子は彼じゃないってね。しかし問題があった。あそこに居るのが偽物だとすると、本物のサミュエルはどこに居るのかって。」
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