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新しい生活
朝の目覚め
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『街の子供』サミュは朝が早い。その名残で、昨日の夜は遅かったのにも関わらず、いつもの様に早い時間に目覚めてしまった。僕は窓を開けて朝の清々しい空気を吸い込みながら、侯爵家の大きな庭園を眺めた。
僕の知識では、貴族の階級には詳しくないけれど、侯爵は男爵や伯爵よりも爵位が上だというのは分かる。痩せ細って何も出来なかった小さな男の子サミュエルの亡き母が、侯爵の妹だったなんてびっくりだ。
あの美丈夫が僕の伯父さんになるのか…。うん、凄い頼もしい。でも、僕が思い描いている、面倒臭そうな貴族社会からのフェードアウトの人生設計が怪しくなってきた気がする。
僕は眉間に皺を寄せて、ベッドから飛び降りた。もしかしてこんな振る舞いも、お行儀が悪いとか言われる様になるのかな。やっぱり貴族社会の一員になるのは気が進まない。
僕は部屋のクローゼットの側のチェストテーブルの上に、洋服が一式置いてあるのを見つけた。きっと昨日のメイドが、今日着る服を用意してくれておいたのかも知れない。
一応念の為にクローゼットを開けると、10着以上のジャケットやブラウスが吊り下がっていて、棚にはズボンらしきものが一本ずつしまってあった。まるでお洒落なブティックの様だなと感心したけれど、とりあえず暇なので身支度をした。
軟禁されていたとは言え、以前着ていた服も質が悪いながら着こなしはそう違わない。まして僕は17歳の記憶持ち。鼻歌混じりに着ると鏡の前に立った。
昨日も驚いたけれど、僕の姿は想像よりずっと儚げだった。離れには錆が滲んだ鏡しか無かったし、街では鏡など見るより動き回って遊んでいたので、実際自分の顔や姿をじっくり見たのは昨日が初めてだったんだ。
周囲の反応から、ちょっとくらいは可愛い顔なんだろうと思ってはいた。男だから可愛いっていうのは違うのかも知れないけどね。でもここまでだとは僕にも予想外というか…。
ふわふわの艶のある銀色の巻き毛は耳元くらいで小さな顔を包んでいて、吸い込まれる様な紫色の瞳を引き立てていた。小さな鼻と長いまつ毛が可愛さを強調するんだろうか。せめて唇が赤くなければカッコいいってなっただろうか。
まぁ、成長すればこの庇護欲の湧きそうな見かけも改善されるだろうと、僕はため息をひとつつくと身だしなみをチェックした。
用意されていたのは着心地の良い、胸にタックが数本デザインされたブラウスだった。そこに黒いベルベットのリボンを結べば完全に絵に描いたような貴族の子供だ。
脚に張り付く濃い灰色のパンツは膝下サイズで、ズボンと黒いショートブーツの間から、淡い紫色の靴下を敢えて見せる様な着こなしだった。
僕は上手く着ることが出来たことに満足して、水差しから水を汲んで飲むと部屋の扉を開けた。時間はわからないが、耳を澄ますと下の方で多分厨房だろう、微かに物音がした。
僕はそっと部屋を出て、昨日この家の跡継ぎとばったり会った階段まで迷いなく進んだ。やっぱり昨日は足元が暗くて迷ってしまったんだな。
階段を降りると、正面玄関とは別の通路から、テラスが続いてるのが見えた。僕は躊躇なく、そのテラスから外へ散歩に行けるかも知れないと歩みを進めたんだ。
僕の知識では、貴族の階級には詳しくないけれど、侯爵は男爵や伯爵よりも爵位が上だというのは分かる。痩せ細って何も出来なかった小さな男の子サミュエルの亡き母が、侯爵の妹だったなんてびっくりだ。
あの美丈夫が僕の伯父さんになるのか…。うん、凄い頼もしい。でも、僕が思い描いている、面倒臭そうな貴族社会からのフェードアウトの人生設計が怪しくなってきた気がする。
僕は眉間に皺を寄せて、ベッドから飛び降りた。もしかしてこんな振る舞いも、お行儀が悪いとか言われる様になるのかな。やっぱり貴族社会の一員になるのは気が進まない。
僕は部屋のクローゼットの側のチェストテーブルの上に、洋服が一式置いてあるのを見つけた。きっと昨日のメイドが、今日着る服を用意してくれておいたのかも知れない。
一応念の為にクローゼットを開けると、10着以上のジャケットやブラウスが吊り下がっていて、棚にはズボンらしきものが一本ずつしまってあった。まるでお洒落なブティックの様だなと感心したけれど、とりあえず暇なので身支度をした。
軟禁されていたとは言え、以前着ていた服も質が悪いながら着こなしはそう違わない。まして僕は17歳の記憶持ち。鼻歌混じりに着ると鏡の前に立った。
昨日も驚いたけれど、僕の姿は想像よりずっと儚げだった。離れには錆が滲んだ鏡しか無かったし、街では鏡など見るより動き回って遊んでいたので、実際自分の顔や姿をじっくり見たのは昨日が初めてだったんだ。
周囲の反応から、ちょっとくらいは可愛い顔なんだろうと思ってはいた。男だから可愛いっていうのは違うのかも知れないけどね。でもここまでだとは僕にも予想外というか…。
ふわふわの艶のある銀色の巻き毛は耳元くらいで小さな顔を包んでいて、吸い込まれる様な紫色の瞳を引き立てていた。小さな鼻と長いまつ毛が可愛さを強調するんだろうか。せめて唇が赤くなければカッコいいってなっただろうか。
まぁ、成長すればこの庇護欲の湧きそうな見かけも改善されるだろうと、僕はため息をひとつつくと身だしなみをチェックした。
用意されていたのは着心地の良い、胸にタックが数本デザインされたブラウスだった。そこに黒いベルベットのリボンを結べば完全に絵に描いたような貴族の子供だ。
脚に張り付く濃い灰色のパンツは膝下サイズで、ズボンと黒いショートブーツの間から、淡い紫色の靴下を敢えて見せる様な着こなしだった。
僕は上手く着ることが出来たことに満足して、水差しから水を汲んで飲むと部屋の扉を開けた。時間はわからないが、耳を澄ますと下の方で多分厨房だろう、微かに物音がした。
僕はそっと部屋を出て、昨日この家の跡継ぎとばったり会った階段まで迷いなく進んだ。やっぱり昨日は足元が暗くて迷ってしまったんだな。
階段を降りると、正面玄関とは別の通路から、テラスが続いてるのが見えた。僕は躊躇なく、そのテラスから外へ散歩に行けるかも知れないと歩みを進めたんだ。
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