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サミュとサミュエル

ロッキンside新顔の子供

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俺がサミュと初めて会ったのは春の気持ちの良い風が吹く頃だった。少し大きめのジャケットを羽織って、キャップを目深に被っていたのはどう見ても6~7歳という所だろう。

俺はここベーリン街のガキ大将だったから、新顔の子供のチェックは怠らない。その子供は見た事のない美しい濃い紫色の瞳で俺を見つめた。


悪ガキ達が、その子供が街中でまごついているのを揶揄っているのを見咎めたんだ。サミュと名乗ったその子供は優しげに微笑むと、初めて街に出てきたと言った。

一人歩きは初めてだと思った俺は、一緒に歩き初めて直ぐにこいつは、今まで街自体に来たことがないのかもしれないと思った。何を見ても目を見張って驚く姿が可愛らしくて、俺は思わず手を繋いで歩いていた。


もちろん、迷子になりそうだったこともあるが、触れた手の柔らかさには二度びっくりした。キラキラと緩む深い紫の瞳と、笑うと楽しげに浮かぶ口元のエクボを俺の側に置いておきたくて、結局その日は一日中連れ回した。

帰りの乗り合い馬車に乗って、手を振るサミュはやっぱり8歳には見えなかった。元々骨格が細いのかもしれないが、街の子供にありがちな無骨な感じがしないのも大きかった。


俺はまた来ると、楽しそうに話していたサミュの笑顔を思い出しながら、街中を歩いていた。仲間のケインが俺にニヤニヤしながら近づいてきて、揶揄うように言った。

「ロッキン、新顔を随分気に入ったみたいだな。チラッと見ただけだけど、随分可愛い顔してたみたいだし。おい、そんな怖い顔するなよ。別に何しようとか思ったわけじゃないぞ?

分かった、分かった。新顔はお前のお気に入りだって皆に言っとくから。これでちょっかいかけたり、虐めたりする子供は居ないだろ?ははは、あの子も随分運の良い奴だ。」


そう言って笑うケインには何も言わなかったけれど、俺もどうしてサミュの事が放って置けないのかはよく分からなかった。ただあいつを見ていると、庇護欲が湧いてくるのは間違いなかった。

それから俺はサミュが街に現れると一緒に歩き回ったり、俺の家の商売を手伝わせたりした。俺の家は半分食料品、半分雑貨の何でも屋の小さな店だが、サミュは興味深そうにキョロキョロ見て回った。


いつもは街の子供が来ると邪魔にする俺のお袋まで、サミュの事は一目で気に入ったようで、キラキラした目をさせてするサミュの質問に、ニコニコと答えていた。

しばらくすると、サミュはお袋に色々商売のアイデアを出すようになって、俺の店は以前よりもずっと繁盛するようになった。お陰でお袋はますますサミュを猫可愛がりする様になって、段々大人達の間でもサミュは街で有名な子供になって行ったんだ。

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