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変わる関係
朝に歌う
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ぐったりと疲れ切った身体がふわりと浮かび上がる気がして、私は夢の中で微睡んでいた。温かな柔らかいものに包まれて、ふと気づけば顔に水滴が跳ねた気がした。
後から考えると、その時私は翔海に抱かれて湯殿に連れて行かれていたのだろう。微かに残る記憶では、重い瞼を微かに開けると、翔海の喉仏が見えたんだ。
その事になぜか安堵して、私は抵抗せずに強い睡魔にまた引き摺られていった。
谷に響く山鳥の声が響いて、私は微睡から浮上した。気づけば寝所に裸で横になっていて、薄い掛け物では涼しいほどだったろう。
でも私の身体はすっぽりと翔海に抱き込まれていた。目の前に緩やかな呼吸音と逞しい胸の筋肉が上下していて、私はそこで何も不安も無くぼんやりとしていた。
そっと手を伸ばして翔海の心の臓に手を置くと、規則正しい強い鼓動が伝わってきて、それは妙な気持ちを呼び覚ました。私はこの男の逞しさ、強さに惹かれているのだろうか。
昨夜翔海は、私を愛していると閨で言った。情夫に愛を囁くのは普通なのだろうか。私にはそんな世なれた事の作法が分からない。あれが本気なら、私は…。
急に私の手の上に翔海の手のひらが伸びてきて、優しく包んだ。それから耳の側で、気怠い翔海の声が響いた。
「…まだ眠っていていいぞ?昨日は気を飛ばすまで無理をさせてしまったからな。」
私はその言葉に急にドキドキと身体が熱くなって、翔海から逃れようと胸を押した。すると、翔海がクスクス笑ってもう一度私をぎゅっと抱き込んで言った。
「ほら、怖くないぞ?全く永明は猫だな。懐いた次の瞬間に逃げようと暴れるのだから。私はもうお前を逃すつもりはないのだよ。昨日お前を愛していると言ったのは本気だ。覚えているだろう?」
そう言って私の顎を指で持ち上げた。さっきまで笑っていた翔海は、今は真剣な顔で私を見つめていた。私の触れている手の下で速まる翔海の鼓動が、私も落ち着かなくさせた。
「私には情夫の作法が分からないのです。情夫に愛を囁くのは普通なのですか?」
私は思い切って尋ねた。そんな私に、翔海は私が何を考えているのか探る様に見つめて答えた。
「私の一世一代の愛の告白も、閨でしたのは不味かったのか…。永明、私は誰にも愛を囁いたことはないし、まして情夫になどあり得ない。私がお前に言ったのは私の心をお前に捧げると言う意味だ。
…出会いをやり直せるならやり直したい。私はお前に愛されたいのだ。永明、私はお前を愛している。」
そう言う翔海に、私は驚きで言葉も無く、じっと見つめることしか出来なかった。
後から考えると、その時私は翔海に抱かれて湯殿に連れて行かれていたのだろう。微かに残る記憶では、重い瞼を微かに開けると、翔海の喉仏が見えたんだ。
その事になぜか安堵して、私は抵抗せずに強い睡魔にまた引き摺られていった。
谷に響く山鳥の声が響いて、私は微睡から浮上した。気づけば寝所に裸で横になっていて、薄い掛け物では涼しいほどだったろう。
でも私の身体はすっぽりと翔海に抱き込まれていた。目の前に緩やかな呼吸音と逞しい胸の筋肉が上下していて、私はそこで何も不安も無くぼんやりとしていた。
そっと手を伸ばして翔海の心の臓に手を置くと、規則正しい強い鼓動が伝わってきて、それは妙な気持ちを呼び覚ました。私はこの男の逞しさ、強さに惹かれているのだろうか。
昨夜翔海は、私を愛していると閨で言った。情夫に愛を囁くのは普通なのだろうか。私にはそんな世なれた事の作法が分からない。あれが本気なら、私は…。
急に私の手の上に翔海の手のひらが伸びてきて、優しく包んだ。それから耳の側で、気怠い翔海の声が響いた。
「…まだ眠っていていいぞ?昨日は気を飛ばすまで無理をさせてしまったからな。」
私はその言葉に急にドキドキと身体が熱くなって、翔海から逃れようと胸を押した。すると、翔海がクスクス笑ってもう一度私をぎゅっと抱き込んで言った。
「ほら、怖くないぞ?全く永明は猫だな。懐いた次の瞬間に逃げようと暴れるのだから。私はもうお前を逃すつもりはないのだよ。昨日お前を愛していると言ったのは本気だ。覚えているだろう?」
そう言って私の顎を指で持ち上げた。さっきまで笑っていた翔海は、今は真剣な顔で私を見つめていた。私の触れている手の下で速まる翔海の鼓動が、私も落ち着かなくさせた。
「私には情夫の作法が分からないのです。情夫に愛を囁くのは普通なのですか?」
私は思い切って尋ねた。そんな私に、翔海は私が何を考えているのか探る様に見つめて答えた。
「私の一世一代の愛の告白も、閨でしたのは不味かったのか…。永明、私は誰にも愛を囁いたことはないし、まして情夫になどあり得ない。私がお前に言ったのは私の心をお前に捧げると言う意味だ。
…出会いをやり直せるならやり直したい。私はお前に愛されたいのだ。永明、私はお前を愛している。」
そう言う翔海に、私は驚きで言葉も無く、じっと見つめることしか出来なかった。
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