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私はチェルシー
エスコート相手
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「エスコートはどなたに決まりましたの?」
社交界デビューの年齢である17歳の私達貴族の令嬢達の話題はこればかりだ。流石に飽きて来た。私はお兄様のどちらかだと思っていたのでそう返していたけれど、それはそれで彼女達から不評を買っていた。
『チェルシーのお兄様方は人気がありますもの。恨まれるのはしょうがないでしょう?』
そういつも親友のレベッカから忍び笑いをされていたので、私は彼女の耳元に周囲に聞こえない様に囁いた。
「…そう言えば私のエスコート役が決定したわ。ちなみにお兄様達ではなかったの。」
レベッカは目を見開いて、周囲を見回すと私の手を引っ張って校舎の端の見晴らしの良い外廊下に私を引き摺っていった。
「レベッカ!何もこんな場所に来なくても…。」
するとレベッカは腰に手を当てて私の周囲をゆっくりと歩き出した。
「いい?何も言っちゃダメよ?私がお相手を当てるんだから!ブライデン伯爵家の秘密と言われるチェルシーのお相手だもの、お兄様方ではないのがそもそも驚きだわ。伯爵がどなたかをチェルシーに近づくのを許したって事でしょう?
ああ、何てビックニュースかしら。お兄様方の御学友かしら。そうなるとどなたでもありそうだから、まるで分からないわ。私なんて従兄弟のロビンなのよ?まぁ良くあるパターンだから可もなく不可もなくってところだけど。」
私は興奮しているレベッカに苦笑すると顔を曇らせた。自分にとっては苦手な相手なのだから、いっそ従兄弟や兄弟の良くあるパターンで十分だったのに。
「…あら、そんな暗い顔をして。不本意なお相手だったのかしら。チェルシーはあまり人を選ぶ様な性格じゃないはずよね?え?まさか…。」
途端にレベッカの興奮は最高潮になった。
「嘘でしょ!?信じられない!ロウレック侯爵家の御曹司じゃないわよね!?」
私は慌ててレベッカの口を塞ぐと周囲を見回した。
「声が大きいってば!いつの間にか決まってたのよ…!ああ、殺されるわ。ゴードン様にエスコートされるなんて、ご令嬢達に八つ裂きにされるだけで、私に何のメリットもないのに!」
レベッカは顔を紅潮させてクスクス笑った。
「そんな事言うのって、チェルシーだけよ?あの漆黒の貴公子と評されるゴードン様は家柄が良いだけじゃなくて、才能も兼ね備えてるんですもの。しかもゴードン様が縁戚でないお相手をエスコートした事なんてあるかしら。
ゴードン様がエスコートを始めたのは5年前の17歳からよね?多分無いはずよ。」
…5年前。私がチェルシーとして目が覚めた年だわ。私は記憶を振り払ってレベッカに言った。
「あら、縁戚をエスコートするのは当たり前ですもの。特段おかしい事ではないでしょう?」
するとレベッカはアーモンド型の薄い茶色の瞳をきらめかして、内緒話をするかの様に周囲を見回して言った。
「侯爵家の場合はそうとも言えないわ。私達伯爵家とは求められるものが違うもの。それこそ色々な思惑でエスコートのお相手が縁戚でない方が普通なのよ。だからゴードン様自身が今まで無難なお相手を選んでいたと言う訳なの。」
私はレベッカが妙にその手の事に詳しいので、可愛らしい割に抜け目のない親友を目を細めて見つめた。
「レベッカ、貴方って随分とその手の事に詳しいのね。流石にゴードン様がご自分でそうしてたなんて情報は流出しないのではなくて?」
すると、慌てた様にレベッカは肩をすくめた。
「噂よ、噂。あーあ、私も誰か特別な相手が良かったけど、それはそれで騒ぎになりそうだから従兄弟で十分だわね?」
私はクスクス笑ってレベッカを睨んだ。
「貴女の従兄弟は、今年騎士団に一番で入った注目のロビン様でしょう?歯軋りしてるご令嬢が多いのではなくて?」
レベッカは悪戯っぽく笑うと、自分の艶やかな濃い金髪を指先に巻き付けてスルリと引っ張った。
「確かに、社交界デビューの令嬢達以外のやっかみも凄そうだわ。まったく、ロビンはああ見えて全然粗雑で嫌になるってのに!」
私達は顔を見合わせてクスクス笑うと、長い廊下を歩き戻った。
17歳の社交界デビューは、貴族令嬢にとっても、その家族にとっても重要な日だ。この日にどの様な相手にエスコートされるかどうかが、その家にとっての時勢の立ち位置を示す事になるのだろうし、令嬢の格を上げることにも下げる事にもなる。
もちろん許婚がエスコートする場合もあるけれど、最近の自由恋愛の風潮として、家同士の決めた相手と言うのは無粋と見られることも多い。だからひと昔よりも許婚同士と言うのはかなり少なくなっていた。
しかしどうして私のエスコート相手がゴードン様なのかしら。お父様に一度その件について尋ねたけれど、お兄様達が先にお相手が決まってしまったから、ゴードン様に頼んだだけだと、何とも首を傾げる様な返事が返ってくるばかりだった。
だって一年前からお兄様達はどちらが私のエスコートをするのかと、常に勝負のネタにしていたくらいだったのだから。
私はレベッカほど浮かれる気にもなれなくて、同級生達のご令嬢の探る様な視線から目を逸らすので忙しかった。はぁ、貴族令嬢がこんなに面倒くさいなんて、想像以上だったわ!
社交界デビューの年齢である17歳の私達貴族の令嬢達の話題はこればかりだ。流石に飽きて来た。私はお兄様のどちらかだと思っていたのでそう返していたけれど、それはそれで彼女達から不評を買っていた。
『チェルシーのお兄様方は人気がありますもの。恨まれるのはしょうがないでしょう?』
そういつも親友のレベッカから忍び笑いをされていたので、私は彼女の耳元に周囲に聞こえない様に囁いた。
「…そう言えば私のエスコート役が決定したわ。ちなみにお兄様達ではなかったの。」
レベッカは目を見開いて、周囲を見回すと私の手を引っ張って校舎の端の見晴らしの良い外廊下に私を引き摺っていった。
「レベッカ!何もこんな場所に来なくても…。」
するとレベッカは腰に手を当てて私の周囲をゆっくりと歩き出した。
「いい?何も言っちゃダメよ?私がお相手を当てるんだから!ブライデン伯爵家の秘密と言われるチェルシーのお相手だもの、お兄様方ではないのがそもそも驚きだわ。伯爵がどなたかをチェルシーに近づくのを許したって事でしょう?
ああ、何てビックニュースかしら。お兄様方の御学友かしら。そうなるとどなたでもありそうだから、まるで分からないわ。私なんて従兄弟のロビンなのよ?まぁ良くあるパターンだから可もなく不可もなくってところだけど。」
私は興奮しているレベッカに苦笑すると顔を曇らせた。自分にとっては苦手な相手なのだから、いっそ従兄弟や兄弟の良くあるパターンで十分だったのに。
「…あら、そんな暗い顔をして。不本意なお相手だったのかしら。チェルシーはあまり人を選ぶ様な性格じゃないはずよね?え?まさか…。」
途端にレベッカの興奮は最高潮になった。
「嘘でしょ!?信じられない!ロウレック侯爵家の御曹司じゃないわよね!?」
私は慌ててレベッカの口を塞ぐと周囲を見回した。
「声が大きいってば!いつの間にか決まってたのよ…!ああ、殺されるわ。ゴードン様にエスコートされるなんて、ご令嬢達に八つ裂きにされるだけで、私に何のメリットもないのに!」
レベッカは顔を紅潮させてクスクス笑った。
「そんな事言うのって、チェルシーだけよ?あの漆黒の貴公子と評されるゴードン様は家柄が良いだけじゃなくて、才能も兼ね備えてるんですもの。しかもゴードン様が縁戚でないお相手をエスコートした事なんてあるかしら。
ゴードン様がエスコートを始めたのは5年前の17歳からよね?多分無いはずよ。」
…5年前。私がチェルシーとして目が覚めた年だわ。私は記憶を振り払ってレベッカに言った。
「あら、縁戚をエスコートするのは当たり前ですもの。特段おかしい事ではないでしょう?」
するとレベッカはアーモンド型の薄い茶色の瞳をきらめかして、内緒話をするかの様に周囲を見回して言った。
「侯爵家の場合はそうとも言えないわ。私達伯爵家とは求められるものが違うもの。それこそ色々な思惑でエスコートのお相手が縁戚でない方が普通なのよ。だからゴードン様自身が今まで無難なお相手を選んでいたと言う訳なの。」
私はレベッカが妙にその手の事に詳しいので、可愛らしい割に抜け目のない親友を目を細めて見つめた。
「レベッカ、貴方って随分とその手の事に詳しいのね。流石にゴードン様がご自分でそうしてたなんて情報は流出しないのではなくて?」
すると、慌てた様にレベッカは肩をすくめた。
「噂よ、噂。あーあ、私も誰か特別な相手が良かったけど、それはそれで騒ぎになりそうだから従兄弟で十分だわね?」
私はクスクス笑ってレベッカを睨んだ。
「貴女の従兄弟は、今年騎士団に一番で入った注目のロビン様でしょう?歯軋りしてるご令嬢が多いのではなくて?」
レベッカは悪戯っぽく笑うと、自分の艶やかな濃い金髪を指先に巻き付けてスルリと引っ張った。
「確かに、社交界デビューの令嬢達以外のやっかみも凄そうだわ。まったく、ロビンはああ見えて全然粗雑で嫌になるってのに!」
私達は顔を見合わせてクスクス笑うと、長い廊下を歩き戻った。
17歳の社交界デビューは、貴族令嬢にとっても、その家族にとっても重要な日だ。この日にどの様な相手にエスコートされるかどうかが、その家にとっての時勢の立ち位置を示す事になるのだろうし、令嬢の格を上げることにも下げる事にもなる。
もちろん許婚がエスコートする場合もあるけれど、最近の自由恋愛の風潮として、家同士の決めた相手と言うのは無粋と見られることも多い。だからひと昔よりも許婚同士と言うのはかなり少なくなっていた。
しかしどうして私のエスコート相手がゴードン様なのかしら。お父様に一度その件について尋ねたけれど、お兄様達が先にお相手が決まってしまったから、ゴードン様に頼んだだけだと、何とも首を傾げる様な返事が返ってくるばかりだった。
だって一年前からお兄様達はどちらが私のエスコートをするのかと、常に勝負のネタにしていたくらいだったのだから。
私はレベッカほど浮かれる気にもなれなくて、同級生達のご令嬢の探る様な視線から目を逸らすので忙しかった。はぁ、貴族令嬢がこんなに面倒くさいなんて、想像以上だったわ!
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