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王都へ
リール公爵家の夜会へ
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「…リール公爵夫人、僕は元の世界から突然この世界に飛ばされてきました。
ですから僕の家族、父と母にも別れの挨拶も出来ませんでした。
多分元の世界には戻れないのでしょう。ひとつ心残りがあるとすれば、それでしょうか。
ですから、リール公爵夫人が僕に親しく接してくださると、母の様で懐かしく感じます。」
そう言いながら微笑むと、リール公爵夫人は心持ち顔を赤らめて、ブツブツ女中らと扇で口元を隠して話をしていたが目を輝かせると言った。
「もう今夜の夜会でシンの後見はリール公爵家であると皆に知らしめるのよ。わたくしの事はお母様でよろしくてよ。いえ、是非お母様と呼んでちょうだいな。」
「…ありがとうございます。…麗しい僕のお母様。」
僕はリール公爵夫人の優しい心遣いが嬉しくて満面の笑みで恥ずかしがりながら呼ばせてもらった。
リール公爵夫人はそんな僕に優しく微笑んで、僕の手をそっと握った。
が、すぐに女中と僕の肌のキメが細かいとか、異界の話に逸れていって結局髪などのセットまでおもちゃにされて解放されたのは夜会の寸前だった。はぁ疲れた…。
リール公爵家の夜会はこの国では皆がこぞって来たがるものらしい。
その事を知ったのは夜会が終わってからだったので、僕は心の準備が全く出来ていなかった。
夫人の意向で僕は後見の発表の際に登場という事で控えの間に居た。
招待客が続々と到着している様で、広間の騒めきは刻々と大きくなって行った。
ジュリアンにも事前に会いたかったが、後見の発表後に仕えれば良いと夫人に押し切られて僕はひとりお茶を飲んで待っていた。
部屋の外に足音を感じて立ち上がると、目の前にルカ様が現れた。ルカ様は少し驚いた様に目を見開くと僕をまじまじと見つめた。
「これはこれは。母上も良い仕事をしたものだ。なるほど、砦ではここまでシン君の魅力を引き立てられなかったな。
ふふ、ジュリアンの顔が見ものだな。
シン君、夜会の会場が騒ついても決して不安な顔をしてはいけないよ。儚げな顔をしたら、野獣達が襲いかかってくるといけないからね。王の御前の様に表情を出さない様に。分かったかい?」
僕はコクコクと頷くと緊張しながらルカ様に連れられて夜会会場へと向かった。
「…王の覚えめでたき異界の戦士は我がリール公爵家の後見を得た。現在フォーカス侯爵の従騎士であるシン タチバナを皆に紹介しよう。シン、ここへ。」
リール公爵の言葉を合図に、顔に貼り付けた様な微笑みを浮かべたルカ様の後から、僕は豪華絢爛な夜会の広間へと緊張しながら足を踏み入れた。
予想の何倍もの数の貴族達に見つめられて、僕は思わず息を呑んでしまった。
ですから僕の家族、父と母にも別れの挨拶も出来ませんでした。
多分元の世界には戻れないのでしょう。ひとつ心残りがあるとすれば、それでしょうか。
ですから、リール公爵夫人が僕に親しく接してくださると、母の様で懐かしく感じます。」
そう言いながら微笑むと、リール公爵夫人は心持ち顔を赤らめて、ブツブツ女中らと扇で口元を隠して話をしていたが目を輝かせると言った。
「もう今夜の夜会でシンの後見はリール公爵家であると皆に知らしめるのよ。わたくしの事はお母様でよろしくてよ。いえ、是非お母様と呼んでちょうだいな。」
「…ありがとうございます。…麗しい僕のお母様。」
僕はリール公爵夫人の優しい心遣いが嬉しくて満面の笑みで恥ずかしがりながら呼ばせてもらった。
リール公爵夫人はそんな僕に優しく微笑んで、僕の手をそっと握った。
が、すぐに女中と僕の肌のキメが細かいとか、異界の話に逸れていって結局髪などのセットまでおもちゃにされて解放されたのは夜会の寸前だった。はぁ疲れた…。
リール公爵家の夜会はこの国では皆がこぞって来たがるものらしい。
その事を知ったのは夜会が終わってからだったので、僕は心の準備が全く出来ていなかった。
夫人の意向で僕は後見の発表の際に登場という事で控えの間に居た。
招待客が続々と到着している様で、広間の騒めきは刻々と大きくなって行った。
ジュリアンにも事前に会いたかったが、後見の発表後に仕えれば良いと夫人に押し切られて僕はひとりお茶を飲んで待っていた。
部屋の外に足音を感じて立ち上がると、目の前にルカ様が現れた。ルカ様は少し驚いた様に目を見開くと僕をまじまじと見つめた。
「これはこれは。母上も良い仕事をしたものだ。なるほど、砦ではここまでシン君の魅力を引き立てられなかったな。
ふふ、ジュリアンの顔が見ものだな。
シン君、夜会の会場が騒ついても決して不安な顔をしてはいけないよ。儚げな顔をしたら、野獣達が襲いかかってくるといけないからね。王の御前の様に表情を出さない様に。分かったかい?」
僕はコクコクと頷くと緊張しながらルカ様に連れられて夜会会場へと向かった。
「…王の覚えめでたき異界の戦士は我がリール公爵家の後見を得た。現在フォーカス侯爵の従騎士であるシン タチバナを皆に紹介しよう。シン、ここへ。」
リール公爵の言葉を合図に、顔に貼り付けた様な微笑みを浮かべたルカ様の後から、僕は豪華絢爛な夜会の広間へと緊張しながら足を踏み入れた。
予想の何倍もの数の貴族達に見つめられて、僕は思わず息を呑んでしまった。
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